長谷川式認知症スケール(hds-r)とは?MMSEとの違いは?特徴ややり方、評価点数について解説

認知症テストで代表的な「長谷川式認知症スケール/長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」について、特徴や具体的なテストの方法に加えて、判定基準まで詳しく解説します。

 

また、長谷川式認知症スケール以外で、簡易的に認知症テストをする方法や注意点まで解説します。

併せて、認知症を早期発見し適切に対処するために、より利用者の負担を減らして診断する方法や普段から行うべきことついても紹介しますので、認知症の早期発見および定期的なセルフチェックのために参考にしてください。

 

 

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認知症テストは早期発見に効果的

認知症は、早期に発見して適切に治療をすればその進行を遅らせるあるいは健常な認知機能まで回復させることができる病気です。

 

認知症テストは、認知機能を誰でも簡単に測定・評価し、認知症の早期発見につなげるスクリーニング検査としての役割があります。

 

認知症テストの「長谷川式簡易知能評価スケール」とは

日本で広く用いられている認知症テストに「長谷川式簡易知能評価スケール(hds-r)」があります。

1974年に神経精神科教授の長谷川和夫氏によって作られた認知症の診断指標で、記憶を中心とした認知機能障害の有無を判断するものです。

 

同じ神経心理学的検査の有名なテストとして、「ミニメンタルステート検査(MMSE検査)」があります。

いずれも認知症のスクリーニング検査として使用されています。

 

 

長谷川式スケール誕生の背景

長谷川式スケールは、当時は認知症の明確な診断基準がなく、また症状は日により異なる上、医師によって診断内容が変わるという状況を改善すべく誕生しました。

 

開発者の長谷川氏は、都内の老人ホームでヒアリングを行い、全国約900の施設に対してアンケートを実施するなど調査を重ねることで、目に見えない「認知症」という内面的疾患の指標を作り上げたとされています。

 

 

長谷川式スケールの特徴

長谷川式簡易知能評価スケールの特徴は、その簡便性にあります。問いは全9問であり、 5 分~10 分程度で完了します。(評価が出るまでにさらに10〜20分程度を要する事もあり)

 

高齢者の集中力を考慮して短時間で回答できる設問のみが用意されていることに加え、視力の衰えにより回答できない可能性も考え、視覚的な要素は設問にありません。

 

長谷川式スケールで事前に準備すべきもの

長谷川式簡易知能評価スケールを行う際には、以下の3つの検査道具が必要になります。

 

  • 長谷川式簡易知能評価スケールの評価用紙
  • 筆記用具(鉛筆・消しゴム)
  • 5つの道具(定規・ブラシ・時計・歯磨き粉・皿など)

 

最後の5つの道具がない場合は、互いに関連のない身近なもので代用しても問題ありません。

 

長谷川式スケールの問題と判定基準

長谷川式簡易知能評価スケールの実際の質問内容は、以下の9つです。

  • お歳はいくつですか?
  • 今日は何年の何月何日の何曜日ですか?
  • 私たちが今いるところはどこですか?
  • これから言う3つの言葉を言ってみてください。「桜 、猫 、電車」。あとでまた聞きますのでよく覚 えておいてください。
  • 100 から7を順番に引いてください。
  • この数字を逆から言ってください。「6-8-2」、「 3-5-2-9 」。
  • 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。
  • これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。 (時計,鍵,タバコ,ペン,硬貨など必ず相互に無関係なもの)
  • 知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。

上記質問に対して回答してもらいながら、以下を参考に点数をつけていきます。

参考:改訂 長谷川式簡易知能評価スケール

 

長谷川式スケールの評価点数とカットオフ値について

長谷川式簡易知能評価スケールは30点満点として、カットオフ値は20/21とされています。

カットオフ値とは


カットオフ値は,病態を識別するための検査・測定に用いられ,基準範囲を基本として正常とみなす範囲を決めるとき,その範囲を区切る値のことを意味します。すなわち,特定の疾患に罹患した,または罹患するリスクがあるということを分ける値です。

(引用:カットオフ値 cutoff value - 一般社団法人 日本理学療法学会連合

 

長谷川式におけるカットオフ値とは、認知機能障害の程度が加齢によるものかもしくは病気によるものかを判断する基準となる値のことです。

つまり、長谷川式簡易知能評価スケールでは20点以下の場合、認知症の疑いがあるということになります。

 

長谷川式とその他の認知症テストの違い

認知症テスト

認知症テストは、長谷川式以外にもあります。代表的なテストとしては、以下の2つが挙げられます。

  • MMSE(ミニメンタルステート検査)
  • 認知症予防協会の認知症自己診断テスト

 

MMSE(ミニメンタルステート検査)

MMSE(ミニメンタルステート検査)とは、1975年にアメリカで開発された認知症テストです。長谷川式簡易知能評価スケールと並んで日本で広く用いられ、特にアルツハイマー型認知症の疑いが強い場合によく活用されています。

 

MMSEでは、認知症になると低下すると考えられる記憶力、計算力、言語力、見当識に関する11の質問に答えてもらいます。この能力を点数化することで、認知機能を評価します。

 

一般にMMSEのカットオフ値は 23/24とされています。つまり、23点以下の場合には認知症の疑いがあるということです。(参考:日本老年医学会

 

認知症予防協会の認知症自己診断テスト

一般社団法人 認知症予防協会のホームページでは、認知症の自己診断テストを受けられます。

これは、10の質問に答えることで、認知症の可能性を自己診断できるテストです。

 

問題の内容を理解するのに時間を要したり、問題が難しく感じたりした場合、もしくは80点未満で不安を感じた場合において、専門医への受診が推奨されています。

 

認知症テストを実施する際の注意点

認知症テストを受ける際には、その結果だけを見て「認知症である」あるいは「認知症ではない」と判断してはいけないことに注意が必要です。

 

また、これらはもともと、認知症の疑いがある人を対象にそこから選別する「スクリーニング診断用」に作られたものなので、MCI(軽度認知障害)かどうかを調べるには必ずしも十分ではないと言われている点も注意が必要だと言えます。

 

「テストの結果が悪い=認知症」ではない

認知症テストを受けてみて、「認知症の疑いあり」という結果が出たからと言って、必ずしも認知症というわけではありません。

 

高齢で認知機能の低下があると認知症が疑われることがありますが、例えばうつ病を患っている人にも認知機能の低下が見られる場合があります。

そのため、認知症かどうかの正確な診断には、専門医を受診することが必要です。

 

少しでも認知症の疑いがあれば専門家に診てもらう

認知症によっては、テストの点数には問題がなくとも、日常生活を送る上で問題が生じていることもあります。

認知症テストというのはあくまで認知症の人をスクリーニングする検査だということを念頭に、生活で困っていることがある場合には医療機関を受診することが望ましいとされています。

 

病院では、専門医のもと、MRIやCTなどの脳検査、本人からの生活状況の聞き取りなどから正確に診断してもらえます。

 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、早期に発見し、適切な適切な措置を講じることができれば進行を遅らせることができる病気です。早期発見には、定期的に認知機能をチェックすることが大切になります。

 

早期発見によって認知症の進行を抑制できる

認知症を発症する前段階に、MCI(軽度認知障害)と呼ばれる状態があります。物忘れなどの症状があってもまだ軽度であり、日常生活において周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

 

MCIの状態をそのまま放置してしまうと、その中の1割が1年以内に認知症を発症する可能性が高いと言われています。一方で、この段階で適切な治療を行った場合には、健常な認知機能まで回復する可能性が14%〜44%あるとされています。やはり、認知症を深刻化させないためには早期発見が重要ということです。

 

認知症の早期発見のために定期的なセルフチェックをしましょう

ここまで、長谷川式認知症スケールをはじめとした認知症テストについて紹介してきました。

 

認知症テストは、いくつかの質問に答えるだけで、誰でも簡単に認知症のスクリーニングをすることができるものです。長谷川式認知症スケールやMMSE、認知症予防協会の認知症自己診断テストなどは、オンラインで簡単に受けられることが魅力です。

 

一方で、上記テストは時間制限もなく体験者自身がある程度自由に行う事が出来る検査という特性上、精度の高い計測ができるというわけではありません。認知症は、初期段階(特にMCI段階)で正しく診断し治療を行うことで進行を遅らせられる、あるいは健常な認知機能まで回復させる事が出来る病気です。より客観的に診断してその後の適切な対応をとるためにも、定期的に認知機能チェックを行って頂くことをおすすめします。

 

※本記事で記載されている認知症に関する内容は、専門家によって見解が異なることがあります。

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-長谷川式

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