「認知症を発症した家族が事故を起こしてしまったらどうしよう」「賠償責任保険に入っておいた方が良いのだろうか」ご家族に高齢者や認知症の方がいらっしゃると、高齢者による事故のニュースを耳にするたびに心配になった経験があるのではないでしょうか。この記事では、認知症の賠償責任保険とはどのような保険なのかを解説します。加えて、賠償責任保険とあわせて検討したい認知症保険について、その詳細と選ぶ際のポイントを解説します。
認知症の賠償責任保険とは
何か他者に対して損害を与えてしまった際に請求される損害賠償を保証してくれるものが、賠償責任保険です。認知症を発症した本人に対する保険が重要であることはもちろんですが、他者への危害を加えてしまった場合のための補償を行う保険も重要です。ここでは、一般的な認知症の賠償責任保険の補償内容となぜ賠償責任保険が注目されているのかを解説します。
補償内容
賠償責任保険は、「他人に誤って怪我をさせてしまった」、「他人のものを壊してしまった」、「アクシデントにより他者や企業に大きな損失を与えてしまった」といった場合に適用されます。その際に発生してしまった賠償金や弁護士費用について、契約内容に基づいて補償してもらえます。
認知症の賠償責任保険が注目される背景
厚生労働省の調査では、現在65歳以上で認知症を発症している患者の割合はおよそ15%、患者数は462万人いると言われています。また、2030年の認知症有病数の予測では、高齢化の進む日本において830万人もの方が発症すると予想されています。
このように、認知症患者は増加の一途を辿っているため、認知症の賠償責任保険は注目されています。加えて、高齢化がすすむ日本ではより注目されることが予想されます。
また、この個人賠償責任保険が強く意識されるようになった出来事があります。2007年に認知症患者で要介護認定を受けていた91歳の男性が、同居する家族が目を離した隙に電車の線路内に立ち入ってしまい電車に跳ねられた事故です。
その際に「責任無能力者」である本人への賠償請求はなく、妻と別居の長男に多額の損害賠償を求める裁判にまでなりました。最終的に最高裁判決では「監督義務者不在」となり賠償請求は却下されましたが、親の認知症からくる徘徊で発生してしまった事故責任が子に及ぶこともあると大きく印象づけ、認知症保険の賠償責任が注目されるきっかけとなりました。
認知症の親が事故を起こしてしまった場合の補償
認知症を患う高齢者がご家族にいらっしゃる場合は、日頃から動向に気をつけていると思います。しかし、細心の注意を払った上でもトラブルに巻き込まれてしまう可能性はゼロではありません。そこで認知症の親が事故を起こしてしまった場合、どのようなタイプの保険が適用できるのか解説していきます。
認知症の本人が加入している個人賠償責任保険を使用する
認知症高齢者等個人賠償責任保険とは、個人賠償責任保険に認知症の本人が加入している場合、1つの契約で同居している親族全員が補償の対象とされる保険です。認知症の本人が加入されている場合でも、賠償事故については法定の監督義務者等も保険の補償対象となっています。
この保険は単独で契約するのではなく、自動車保険・火災保険・傷害保険の特約として入るのが一般的です。保険の補償内容によっては、事故の相手方との示談交渉サービスがついている場合もあります。
認知症の人の監督責任がある人が加入している個人賠償責任保険を使用する
認知症患者の監督責任がある人が加入している個人賠償責任保険を適用する方法があります。
この場合も、認知症の人の個人賠償責任保険を適用する場合と同じように、同居している親族全員が補償の対象となり、補償の条件や事象は保険商品によって異なります。
加入しているだけではなく補償内容まで確認しておくことが重要
保険商品はそれぞれの商品によって補償の範囲が異なります。個人賠償責任保険の補償が適用されない主たる例として、故意による損害や、地震・噴火・津波に起因する損害賠償責任があります。
他にも保険の補償内容によっては、補償を希望する項目が含まれていないケースもあります。そのため、適用されて保険に加入しているだけでなく、保証内容に過不足ないかまで確認しておくことが重要です。
地方自治体による賠償責任保険
認知症高齢者の事故やトラブルで家族が賠償責任を問われる、あるいは、法定監督義務者がいない状態で認知症患者が事故を起こした場合に、被害者が救済されない可能性もあります。
そのなかで、認知症の方でも安心して過ごせるまちづくりのための活動が各自治体に広がってきていて、住民が無料で賠償責任保険に加入できる自治体が存在します。無料で加入できる認知症保険が存在するのではなく、自治体が保険料を「公費」から算出し、被保険者が起こしてしまった何かしらの事故に対して、保険会社から被保険者に保険金が支払われる仕組みとなっています。
こうした自治体独自の認知症保険助成制度を導入している例は、全国に約40程度あります。
お住まいの地域の自治体によって、取り組みが異なりますので、一度自治体のホームページから確認することをおすすめします。
認知症保険は自治体で加入できる?個人賠償責任保険制度について徹底解説
認知症保険での備えも重要
高齢化とともに認知症患者が増加するなかで、2016年から認知症保険の販売が始まりました。各社さまざまなプランの保険商品を展開しています。ここでは、認知症にどのような備えが必要なのか、また保険商品で備えを行う場合のポイントについて解説します。
高額な医療費と介護費への備え
認知症を発症すると、訪問介護やリハビリテーション、通院費、老人ホームの入居費用などさまざまな費用が発生します。在宅介護を利用すると、比較的費用を安く抑えられる一方で、介護をする親族の介護負担が大きくなります。さらに、介護を理由に離職した場合、収入がなく介護費用が発生するため金銭的負担もかかってきます。
一方、施設介護を利用すると、介護負担は軽減されるものの、月々10〜20万円の介護費用が発生してしまいます。認知症を発症するとさまざまな費用が発生し、経済的に大きな負担となります。そんな経済負担を少しでも軽減するために、認知症保険でもしもの時に備えることが重要です。
賠償責任保険ではカバーできない補償
賠償責任保険は、認知症患者が何かしらの事故やトラブルを起こし、周囲に危害を与えてしまった場合に保障してくれる保険です。事故やトラブルには備えられる一方で、認知症発症後に日常生活の中で必要になる治療費や介護費に備えてくれる保険ではありません。
よって、損害賠償責任保険ではカバーしきれない部分を、認知症保険で備えておくことが重要です。
認知症保険を選ぶ際のポイント
認知症保険を選ぶ際には、認知症の人とサポートするご家族の状況にあったプラン内容かどうかを検討した上で、加入する保険を選ぶ必要があります。
その際に確認しておきたい選ぶポイントが5つあります。
- 「治療保障」か「損害補償」で状況に補償内容を選ぶ
- 「一時金」か「年金」で状況にあった受取り方法を選ぶ
- 「認知症+α」の保障内容が必要かどうかを考慮し選ぶ
- 加入条件・加入年齢で選ぶ
- 予防給付の有無や付帯サービスで選ぶ
上記のポイントを踏まえ、単一ではなく複数の保険商品を比較して加入する保険を吟味することで、現状の不安を解消する最適な保険を選ぶことができます。
保険代理店でプロに相談するのがおすすめ
「認知症の備えとしてどのようなポイントで保険を選ぶかわかったものの、保険会社も商品も多すぎてどれを選べばいいかわからない。」と感じている方が多いのではないでしょうか。
数ある保険商品の中から、素人が適切な保険を選ぶことは困難です。家族の人数や年齢、認知症の度合いによっても加入すべき保険は変わってきます。自分の環境に最適な保険がよくわからないという場合には、プロの判断を仰ぐのも一つの手です。
保険代理店では、様々な保険プランから状況に応じて最適な商品を提案してくれます。認知症保険を考える第一歩として、一度相談してみることをおすすめします。
認知症患者の賠償責任保険は重要
ここまで、認知症保険のなかで「賠償責任保険」について紹介してきました。認知症の賠償責任保険は、保険の補償内容を確認した上で、認知症の人とサポートするご家族の状況にあったプラン内容かどうかを検討することが重要です。
また、認知症保険は様々な保険会社・商品から状況に応じて最適な商品を選ぶ必要性があります。ご自身に最適な保険を選ぶためにも、保険見代理店のプロに相談し、保障内容や注意点などを総合的に比較して、契約を判断することが大切です。
※本記事で記載されている認知症に関する内容は、専門家によって見解が異なることがあります。