自治体の広報誌などで、「認知症予防教室」の案内を見かけたことはありませんか? 「認知症予防は気になるけれど、教室に行くことで何か得られるものがあるのだろうか」とためらっている方も多いでしょう。この記事では、認知症予防教室で実施されているプログラムの内容を解説しますので、行くべきかどうか迷っている方はぜひ参考にしてください。また、認知症予防教室の探し方や、教室以外でできる認知症予防の方法についても紹介します。ぜひご覧になり、認知症に対する不安に備えていきましょう。
認知症予防教室ではどんなプログラムを実施している?
認知症を発症する方は右肩上がりで増えています。厚生労働省老健局が発表した資料によりますと、2012年には65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症患者でしたが、2025年には約5人に1人、2060年には約3人に1人の高齢者が認知症を発症すると推計されています。
認知症を発症する可能性は、高齢になればなるほど高くなることにも注目が必要です。75~79歳では10%ほどですが、80~84歳では約22%、85~89歳では約44%の方が認知症を発症しています。将来的に認知症を発症する可能性は誰にでもあると考えられるので、認知症予防のためのアクションを起こすことは必要なことと言えるでしょう。
認知症予防のための教室に通うことも、将来に備えるためのアクションのひとつです。認知症予防教室では、主に次の5つのプログラムを実施しています。
<認知症予防教室の5つのプログラム>
- 認知症や認知症予防に関する知識の座学
- ゲームやパズルを使った脳トレ
- 身体を動かすトレーニング
- 想像力を刺激するアート
- 参加者とのコミュニケーション
認知症や認知症予防に関する知識の座学
認知症予防教室では、認知症や認知症予防に関する情報提供を実施していることが多いです。「認知症になるなんて自分とは関係ない」と考えている方には、良い意味で刺激を受けることができるでしょう。
認知症に対する不安を感じている方なら、予防活動に関する知識を取り入れることで不安軽減につながるかもしれません。認知症予防に良いとされる食習慣や運動、禁煙、アルコールとの関わり方などを知ることで、身近なことから予防活動を始めていけます。
ゲームやパズルを使った脳トレ
認知症予防教室では、脳を鍛えるゲームやパズルを実施していることがあります。脳は使わないと衰えると言われていますので、ゲームやパズルなどで脳を刺激していきましょう。
認知症予防効果を高めるためには、教室だけでゲームやパズルをするのではなく、毎日の習慣にすることが有用です。また、慣れてきたら徐々に速く解くことにも挑戦してみましょう。家族でゲームを楽しむのも良いですし、脳トレ本を入手して一人のときでもパズルを解き、脳の活性化のための時間を作るのも有用です。
身体を動かすトレーニング
認知症予防教室では、身体を動かすトレーニングを実施していることが多いです。WHOが2019年に発表した認知症予防ガイドラインでも、身体を動かすことは認知機能の低下を予防するための活動として推奨されていますので、ぜひ実践していきましょう。
認知症予防教室では、特別な道具がないとできない運動というよりは、家の中で誰でも手軽に実施できる体操などを紹介しています。運動をすることで、認知症予防のためだけでなく、健康を増進することもできるので、ぜひ習慣化してください。また、スポーツ以外にも日常生活や仕事、家事、歩くことなどはすべて「身体を動かすこと」なので、普段からアクティブに過ごすことも意識していきましょう。
想像力を刺激するアート
認知症予防教室では、絵画や音楽鑑賞などの文化活動を実施していることもあります。特に、創作活動は参加者それぞれが自由な想像力を発揮することができ、周りからの刺激も受けながら楽しんで社交活動を行うことができます。、
そうした中で、生きる意欲を得て、生活に楽しさを感じられる方も少なくありません。認知症を発症すると無表情・無気力などの症状が表れることもありますが、芸術的な活動を通して脳を刺激し、表情や気力が生まれることもあります。高齢になっても続けられる趣味を探すためにも、ぜひ文化活動系の認知症予防教室にも参加してみましょう。
参加者とのコミュニケーション
コミュニケーションを取ることが認知症予防につながることは、国立長寿医療研究センターの「認知症予防についての研調査究事業結果報告書(P.66-68)」で紹介されているように、数多くの研究結果を通して示されています。認知症予防活動は、知的活動と運動、コミュニケーションの3つが柱になると言われています。一人で認知症予防の脳トレや運動に励むのも決して意味のない行為ではありませんが、誰かとコミュニケーションを取りながら脳トレや運動に励めば、さらに効率よく認知症予防の活動ができるでしょう。
認知症予防教室では、講師や参加者とコミュニケーションを取りながら認知症予防のための活動ができます。近くに住んでいる方が大勢参加しているので、友だち作りの場として活用することもできるでしょう。
認知症予防教室はどう探す?
ここまで、認知症予防教室で実施されていることを解説しました。ご理解いただいたところで、ぜひ通ってみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。認知症予防教室を探す際には、次の2つの方法で探してみましょう。
自治体に尋ねる
多くの自治体では認知症予防活動の一環として、地域にお住まいの方なら誰でも参加できる認知症予防教室を開催しています。市区町村の広報誌や回覧板、自治体のホームページなどで探してみましょう。
情報が見つからないときは、市区町村役場に直接問い合わせることもおすすめです。認知症予防教室や、認知症予防に関わるイベントについての情報を入手できるかもしれません。
学研の大人の教室などの民間業者に問い合わせる
学研の「大人の教室」など、民間業者でも認知症予防教室を実施していることがあります。インターネットで「お住まいの地域名 認知症予防 教室」と検索してみてください。
思っていたような認知症予防教室が見つからないときは、認知症予防活動ができる教室を探してみてはいかがでしょうか。紹介してきましたように認知症予防活動には知的活動と身体活動、芸術活動、コミュニケーション活動があるので、興味が持てそうな教室の門を叩いてみましょう。例えば次のような教室に通うこともおすすめです。
<認知症予防効果を期待できる教室>
- 【知的活動】俳句、川柳、パソコン、囲碁、将棋など
- 【身体活動】グラウンドゴルフ、水泳、ヨガ、ダンスなど
- 【芸術活動】絵画、ピアノ、ヴァイオリン、トールペイントなど
- 【コミュニケーション活動】ボランティアサークル、観劇の会、趣味の会など
認知機能の衰えを早期に知ることが予防につながる
脳梗塞や特発性正常圧水頭症などが原因で起こる一部の認知症をのぞき、認知症発症者の大半を占めるアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症は完治が難しいとされています。そのため、一度発症すると一生涯認知症を患い、場合によっては介護が必要になります。
MCI(軽度認知障害)の察知が有用
認知症を発症してからは、薬物療法や生活習慣の改善等によって進行を抑えることが中心となり、健常な状態まで回復することを望むのは難しくなります。しかし、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」の時点で早期に異変に気付き、適切な治療や対応を行うと、健常な状態まで回復するケースも少なくありません。
軽度認知障害とは、健常な状態と認知症の中間状態とも呼ばれ、認知機能の低下は見られるものの、日常生活は問題なく送ることができている状態のことです。つまり、認知機能の変化を定期的に測定し、少しでも低下してきたタイミングでその小さな変化を見逃さず、適切な治療等の対応を実施すれば、認知症の発症を回避したり発症時期を遅らせたりすることが期待できるのです。
認知症予防教室や認知機能測定を有効活用してトータルに備えましょう
誰もがなる可能性がある認知症に備えるために、ぜひ今からアクションを起こしてみましょう。認知症予防教室に通い、認知症の正しい知識を取り入れ、認知症予防につながる身体活動や知的活動、芸術活動、コミュニケーション活動を始めてみてはいかがでしょうか。通いやすい認知症予防教室がないときは、興味の持てる教室やサークルに参加することでも、認知症予防につなげることができます。
また、認知機能の変化を定期的に測定することも、認知症予防のために習慣化したい活動のひとつです。経済的な不安に対しては、認知症保険で備えることが可能です。保険の専門家に相談し、ご自身やご家族に必要な保険をプランニングしてもらいましょう。
※本記事で記載されている認知症に関する内容は、専門家によって見解が異なることがあります。