「認知症予防に指体操が効果的と聞いたものの、どんなことをすれば良いのだろうか」このような悩みを抱えてはいないでしょうか。
この記事では、認知症予防に有用であると期待されている指体操について解説します。
また、認知機能の低下を早期に察知するためにするべきことも併せて紹介しますので、定期的に認知機能をセルフチェックし、認知機能の変化に気付くための参考にしてください。
指先を動かすことで脳の活性化が期待できる
様々な研究によると、物を掴んだり鍵盤を叩いたりなど、私たちの生活になくてはならない指の動きは、脳の活性化に繋がるといわれています。
カナダの脳神経外科医ワイルダー・ペンフィールド医師(1891~1976)の研究によると、100億以上の神経細胞の集団である大脳皮質と身体の各部位は大きな関係があるということがわかっています。
特に指先は、触覚や痛覚といった感覚を脳にインプットする「感覚野」と、運動を行い外にアウトプットする「運動野」の両方において非常に大きな割合を占めているのです。
そのため、指先をたくさん使うことで脳がより活性化する効果があると期待されています。
認知症予防におすすめの指体操の例
指を動かすといっても、日常生活の範囲内だけで認知症予防まで行うのはなかなか難しいものがあります。
そこで認知症予防に効果的だと考えられるのが、指や手を使う手遊びの指体操です。
今回は、難易度を3段階に分けて8つの指体操を紹介します。
難易度1の指体操
初めて指体操に挑戦する方や身体を動かすのに慣れていない高齢者の方には、簡単でシンプルな指体操が良いでしょう。
初心者向きの簡単な指体操には、主に以下の3つがあります。
- 指折り体操
- 指回し体操
- いちにのさん体操(123体操)
指折り体操
指折り体操とは、親指から小指までを順番に曲げて開く体操です。
【手順】
- 右手の親指を曲げて伸ばします。このとき、声に出して数を数えてください。
- 親指と同じように人差し指から小指まで同じ動きを繰り返しましょう。
- 右手が終わったら左手も同様に曲げ伸ばしを行います。
- 以上の動きを3回繰り返します。
※1つの指を動かす際に、他の指が一緒に曲がってしまわないよう注意してください
指回し体操
指回し体操とは、両手を使って同時に運動する体操です。
【手順】
- 両手の指を指先以外は触れないようにして合わせます。両手がドーム型になっているのが理想です。
- 親指から順番に、指が触れないように回しましょう。手前~奥、奥~手前の回転を各20回ずつ、もしくは30秒間回してください。
※手のドーム型が崩れないように注意してください
いちにのさん体操
いちにのさん体操とは、紙などに書き出した数字と同じ数の指を出す体操です。
【手順】
- 紙などに1~5の数字を書き出します。
- 紙に書いた数字の通りに両手の指を出しましょう。出した指はその都度グーにするようにしてください。
- 数字を並べ替えて同じように体操をしてみましょう。
難易度2の指体操
簡単な指の体操に慣れてきたら、少し難易度を上げて中難易度の指体操を始めてみましょう。
中難易度の指体操には、主に以下の2つがあります。
- 親指グーパー体操
- 足し算体操
親指グーパー体操
親指グーパー体操は、親指を内側に入れたグーと外側に出したグーの組み合わせを利用した体操です。
【手順】
- 両手同時に、親指を入れたグーと親指を外に出したグーを交互に作ります。
- 右手と左手で別々のグーの形を作り、握り直すごとにグーの形を入れ替えてください。
足し算体操
足し算体操とは、手の平を叩いてから両手を使って任意の数字を出す指体操です。
【手順】
- 片手でグーを、もう片手ではパーを作り、”ガッテン”のポーズの要領で手のひらを叩きます。
- 左右を替えて2度手のひらを叩きましょう。
- 両手でグーを作ったあと、両手を使って1~10までの任意の数を出します。
難易度3の指体操
少し難しい中難易度の指体操もスラスラとできるようになったら、難易度の高い難しい指体操にチャレンジしてみましょう。
高難易度の指体操には、主に以下の3つがあります。
- 輪ゴムを使った指体操
- ペアでじゃんけん指体操
- 歌と合わせた指体操
複数人数で楽しむ手遊びもあるため、ご家族やご友人同士で楽しみながら脳を活性化することができます。
輪ゴムを使った指体操
輪ゴムを使って指や手の筋力を鍛える指体操もあります。
3本の指を使った指体操では、主に親指の母指外転筋や指の伸筋群の筋力向上に効果が期待できます。
【手順】
- 手でキツネのポーズを作って、親指・中指・薬指に輪ゴムをかけます。
- 指同士が離れるように指を広げましょう。
ペアでじゃんけん指体操
ペアでじゃんけん指体操は、2人組で行うことでコミュニケーション力も養うことができる指体操です。
【手順】
- 相手がグー、チョキ、パーのいずれかを出します。
- 後だしじゃんけんをして、相手の出した手にわざと負けるように手を出しましょう。
両手で後だしじゃんけんを行い、左はあいこ・右は負けるなどバリエーションに工夫をすることで、より複雑な手遊びを楽しむことができます。
歌と合わせた指体操
歌と合わせた指体操は、歌と合わせて振り付けのように指体操を行うことで、記憶力を高める効果も期待されています。
歌と合わせた有名な指体操には「もしもしかめよ」など誰でも知っている童謡が多く、高齢者の方もスムーズに振り付けを覚えやすいでしょう。
指体操をする際の注意点
脳を活性化し、認知症の予防にも効果が期待されている指体操。
しかし、指体操を楽しむ際には安全のためにもいくつかの点に注意しなければいけません。
指体操を楽しむ上で注意すべきことは、主に以下の3つです。
- 体調に合わせて無理をしない
- 難易度は徐々に上げていく
- 指体操が終わったら整理体操を行う
体調に合わせて無理せずに行う
指体操は、体調に合わせて無理のない範囲で楽しみましょう。
あくまで指体操は手遊びの一種で楽しむことが重要ですので、ご自分の体力や体調の範囲内で、疲れないように実施してください。
徐々に難易度を上げる
指体操には、指を順番に動かすシンプルで簡単な物から、歌に合わせて振り付けを行う複雑で難しい物まで様々な難易度があります。
特に高齢者の方の場合は最初から難しい指体操を行うと混乱して疲れてしまう事もありますので、指体操の難易度は必ず少しずつ確実に上げていくようにしてください。
終わったら整理体操をする
指体操は普段あまり使わない指先を多く使う運動のため、指体操を行った後は腕や手が疲れてしまう高齢者の方も少なくありません。
身体をクールダウンさせるためにも、指体操を楽しんだ後は整理体操を必ず行うようにしてください。
【手順】
- 親指をもう片方の手で引っ張り、およそ直角の位置まで伸ばします。
- 痛気持ちいい程度の強さで20秒×5セット、両手親指で行ってください。
認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要
認知症は、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせられる病気です。
そして、早期発見には定期的に認知機能をチェックすることが重要になります。
MCI段階で発見すれば進行を抑制できる
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。
つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。
認知症対策のための認知機能測定は定期的に
ここまで、認知症予防のために効果が期待されている指体操のやり方を解説しました。
指体操には高齢者の方もすぐ出来る簡単でシンプルな手遊びから、歌に合わせて振り付けを覚える難しい指体操まで様々な難易度の指体操があります。
自分の体調や体力に合わせて少しずつ楽しみながら指先を動かしましょう。
認知症は、発症前に認知機能の低下を早期発見できれば進行を遅らせることができる病気です。
早期発見のためには、定期的かつ恒常的に認知機能を測定し、小さな変化に気づける環境をつくっておくことが有用だと考えられています。
ぜひ定期的な認知機能測定の習慣をつくっていただくことをおすすめします。
※本記事で記載されている認知症に関する内容は、専門家によって見解が異なることがあります。