認知機能って具体的にどんなもの?
認知ってなに?
もの忘れが多くなってくると、認知症かもしれないと心配になる方がいるかもしれません。しかし、認知症診断のなかで対象とする「認知」とはもの忘れに見られるような記憶力だけではありません。では「認知」とは具体的に一体何を指すのでしょう。
例えば、心理学では認知は人間などが外界にある対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程と定義した上で、判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解といったさまざまな要素を包括して認知と呼んでいます。一方で、私たちが一般的に思い描く認知は認知症の障害の程度を表す場合に用いられ、この場合においては記憶力の他に、判断力・計算力・言語理解力・空間認知力などを含めた脳の高次機能を指して「認知機能」と表現しています。
認知機能って具体的には?
それでは、認知機能を測定する目的で医療機関等で利用される、いわゆる神経心理検査(口頭や筆記で行うのが通常)では実際にどのような項目を測っているのか具体的に見てみましょう。
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- 見当識
自分が今置かれた状況を判断する機能を見当識(けんとうしき)といい、例えば「いま自分は何県何市のなんという病院にいるのか」「いまどんな季節か」「今は何時ころか」「今、目の前で対面している人は誰なのか」などを判断できる力は見当識にあたります。
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- 言語理解
言葉を話す、話を理解する、文字を書く、文字を理解するといった機能を測ります。例えば、紙に書かれた「目を閉じなさい」という文章を読んでもらい、その内容を実際に実行してもらう課題や、好きな文章を一文書いてもらう課題を通じてこの能力を計測します。
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- 計算
小学生で習うような簡単な四則演算を行うことで機能を測ります。例えば、100から7を順番に引き算していく課題や、小銭の合計金額を数えてもらう課題などがあります。
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- 語想起
特定のカテゴリーに属する単語を一定時間内にできるだけ多く列挙する課題で言語機能を測ります。例えば、果物の名前や「あ」から始まるモノの名前などを1分間で出来るだけ多く答える課題等があります。
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- 復唱
今聞いた文章や数字をすぐに復唱してもらうことで記憶や言語の機能を測ります。例えば、30文字程度の日本語の文章を聞いてすぐに口頭で復唱する課題や5桁程度の数字を復唱する課題などがあります。
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- 視空間
目で見た情報を処理して空間の状態を把握する機能を測ります。例えば、紙に書かれた立体図形を見ながら同じように書き写してもらう課題や、少し前に見た図形と同じ図形を選ぶ課題、積まれたブロックの数を数える問題などがあります。
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- 抽象概念
様々なものや出来事の中にある共通した部分に注目して抜き出す機能を測ります。例えば、「トマトとレタスに共通するのは?」や「電車とトラックに共通するのは?」という課題に対して「野菜」や「乗り物」といった形で回答します。
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- 遅延再生
覚えた事柄を一定時間経過後に思い出す機能を測ります。昨日食べたものが思い出すといったことは分かりやすい例です。例えば、いくつかの無作為な単語を聞いて覚えてもらい、数分後に同じ単語を復唱してもらう課題などがあります。
上記で紹介したものは検査項目の一部ですので、認知機能を検査すると一言でいっても、様々な方法や尺度があることがお分かり頂けたかと思います。実際に病院やクリニックなどでは認知症のスクリーニング検査として医師や臨床心理士がこれらの機能を測る為に「長谷川式認知症スケール」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」といった神経心理学的検査を行います。これらの検査の質問内容はインターネットで検索すると入手することが出来ますので、あくまで目安にはなりますがご自宅でも簡易的に計測してみたいという方は利用してみるのも良いかもしれません。