「認知症の診断は病院でどのようにしてもらうの?」「検査にはどれぐらいの費用がかかるのか」など、認知症にまつわる病院での診断について疑問や悩みを持っている方は多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、認知症で医療機関を受診すべきタイミング、病院の選び方、検査の費用まで解説します。
認知症は早期に治療を始めることで進行を抑えられる可能性があります。病院での検査・受診を迷われている方は、是非参考にしてください。
認知症とは何か?症状や原因について
認知症とは
認知症とは、主に高齢者に見られる、記憶力や判断力、言語能力などの認知機能が徐々に低下していく病気の総称です。
認知症には、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など多くの種類があります。
認知症の主な症状
認知症の初期症状は、物忘れや日常生活のミス、言葉のつっかえ、計算能力の低下などです。
中期になると、時間や場所の感覚が混乱し、家族や友人の名前を忘れたり、日用品の使い方がわからなくなったりします。
重症になると、自己中心的な言動、幻覚や妄想、寝たきりなどの症状が現れることもあります。
認知症の原因
認知症のリスク因子としては、高齢、脳外傷、生活習慣病、遺伝などが挙げられます。
認知症の予防には、バランスのとれた食生活、運動、知的な活動、ストレスの軽減などが推奨されています。
また、認知症になっても治療法はないものの、薬物療法や理学療法、認知療法などの方法で症状の進行を遅らせることができます。
認知症を疑ったら病院の何科に行くべきか
認知症の疑いがある場合、何科で診断してもらうべきか迷われる方が多くいらっしゃいます。
その場合は、まずはかかりつけ医に相談することをおすすめします。
普段のあなたの状態を把握している医師であれば、認知症の疑いがあるかどうかや何科を受診すべきかをアドバイスしてくれるでしょう。
そもそもかかりつけ医がいない場合は、お近くの物忘れ外来や認知症疾患医療センターを受診してみてはいかがでしょうか。
これらの外来では、問診と心理検査、画像検査などが行われ、必要に応じて治療を行います。
全国の認知症専門医
認知症を検査してもらう医療機関を探す際には、日本認知症学会や日本老年精神医学会が紹介する医療機関を参考にすることができます。
この2つの学会は、認知症に関する研究を行い、集会を開催しています。
また、これらの学会は、専門医が在籍する医療機関も紹介しています。
先ほどの物忘れ外来や認知症疾患医療センターの多くも、認知症を診療する専門医が担当します。
認知症の代表的な診断方法
認知症の診断に用いられる代表的な検査として、認知機能検査、脳画像検査、血液検査があります。
以下でそれぞれの検査について説明します。
認知機能検査
患者に記憶力や判断力、言語能力、空間認知能力などを問う検査を行います。
MMSE(ミニメンタルステート検査)や長谷川式認知機能評価スケールなどが代表的な検査です。
脳画像検査
MRIやCTなどの脳画像を取得し、脳の損傷や異常を調べます。
脳血管性認知症や脳腫瘍による認知症の場合には、異常が見つかる場合があります。
血液検査
認知症の原因となる病気を調べるために、血液検査が行われることがあります。
例えば、ビタミンB12欠乏症や甲状腺機能低下症などが原因である場合があります。
認知症の診断を受けるタイミング
認知症は、症状が進行すると日常生活に支障をきたし、家族や周囲の人々にも大きな負担をかける疾患です。そのため、早期発見が重要とされています。
認知症の初期症状は自覚しにくく、周囲の人々が気づくことが多いため、本人自身が認知症の可能性を感じた時点で、早期に受診することが重要です。
一方で、認知症の症状が現れた場合でも、すべてが認知症によるものではありません。
認知症と診断される前に、脳梗塞や脳腫瘍など、他の病気が原因である可能性もあるため、自分で症状を診断することは困難です。
そのため、認知症の症状が現れた場合は、早期に医師に相談し、診断を受けることが大切です。
20のチェックポイント
認知症の受診のタイミングを迷われている方は、以下の公益社団法人の認知症の人と家族の会が公開している20のチェックポイントを確認してみるのもよいでしょう。
- 今切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる
- 同じことを何度も言う・問う・する
- しまい忘れ置き忘れが増え、いつも探し物をしている
- 財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う
- 料理・片付け・計算・運転などのミスが多くなった
- 新しいことが覚えられない
- 話のつじつまが合わない
- テレビ番組の内容が理解できなくなった
- 約束の日時や場所を間違えるようになった
- 慣れた道でも迷うことがある
- 些細なことで怒りっぽくなった
- 周りへの気づかいがなくなり頑固になった
- 自分の失敗を人のせいにする
- 「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた
- ひとりになると怖がったり寂しがったりする
- 外出時、持ち物を何度も確かめる
- 「頭が変になった」と本人が訴える
- 下着を替えず、身だしなみを構わなくなった
- 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
- ふさぎ込んで何をするのも億劫がっていやがる
少しでも認知症の疑いがある場合はすぐにかかりつけ医に相談してみることが大事です。
なお、もの忘れと認知症の記憶障害を混同してしまう方もいらっしゃいますが、もの忘れは一部分を忘れ、認知症は全体を忘れるという違いがあります。
たとえば、夕食を例にあげると、夕食の内容を思い出せないのが老化によるもの忘れです。
一方、夕食を食べたこと自体を忘れているのが認知症です。
また物忘れは1年前とそれほど程度に違いはありませんが、認知症の記憶障害は1年前とくらべると明らかに進行していることがわかります。
認知症の診断にかかる費用
認知症の診断にかかる費用は、診断方法や施設によって異なります。
一般的には、認知症の初期段階で行う検査であれば比較的低い費用で済む場合が多いですが、より詳細な検査や専門的な診断を行う場合は、高額な費用がかかることがあります。
例えば、認知症の初期段階で行われるMMSE(ミニメンタルステート検査)という認知機能評価検査は、約200〜800円程度から受けることができます。
一方、より専門的な検査である脳神経学的検査や脳画像検査を行う場合は、数万円から数十万円以上の費用がかかることがあります。
*いずれも保険適用の有無等により変動
診断費用の詳細と比較
以下に代表的な検査とその費用の一例を挙げます。
検査 | 費用 |
MMSE | 約200〜800円程度 |
CT | 約10,000円程度 |
MRI | 約20,000円程度 |
PET | 約50,000円程度 |
脳波検査 | 数千円から数万円程度 |
※これらの費用は施設や地域、保険適用の有無等によって異なるため、実際の費用は異なる可能性があります。
※より詳細な検査を行う場合は、それに応じて費用が高くなることがあります。
診断費用に関する保険適用や補助制度
認知症の診断に必要な検査は医療保険の適用対象となる場合があります。
具体的には、国民健康保険や社会保険、後期高齢者医療保険などの保険に加入している場合、一部の費用が保険適用になることがあります。
ただし、保険適用の範囲や条件は保険種別や施設によって異なるため、詳細は医療機関に確認することをおすすめします。
また、自治体によっては、高齢者を対象とした認知症検診を行っており、無料もしくは低額で受けることができる場合もあります。詳細については、自治体のホームページや健康福祉センターにお問い合わせいただくことをおすすめします。
認知症の診断結果が出たらどうすればいいか?
診断結果についての理解と受け止め方
認知症の診断結果が出た場合、多くの人が不安や恐怖を感じるかもしれません。
しかし、診断を受けることで早期に治療やケアを始めることができ、症状を遅らせることができるため、診断結果に対して落ち込むことはありません。
まずは、診断結果について医師から説明を受け、自身の状況を正確に理解することが重要です。
認知症は進行性の疾患であり、症状の進行に応じて治療やケアが変わってくるため、正確な情報を得ることが必要です。
次に、自分自身や家族と話し合い、今後の生活について考える必要があります。
認知症には個人差があり、症状や進行のスピードも異なるため、自分自身や家族がどのような支援が必要かを考えることが必要です。
また、症状が進行していくにつれて、日常生活において様々な困難が生じることがあるため、事前に準備をすることが重要です。
医師との相談やフォローアップ
医師や看護師とのフォローアップを受けることもおすすめです。
定期的な検査や治療、ケアを行うことで、症状の進行を遅らせることができます。
また、医療従事者に相談することで、自分自身や家族が抱える問題についてアドバイスを受けることもできます。
最後に、認知症について正しい情報を得ることも大切です。
認知症に対する偏見や誤解があるため、正しい情報を得ることで、自分自身や家族が落ち着いて対処できるようになるでしょう。
認知症の診断を受けた後のケアや治療
認知症の診断を受けた後は、適切なケアと治療が必要になります。
現在、認知症には治癒する方法はありませんが、症状の進行を遅らせたり、改善するための治療やケアがあります。
認知症の治療方法
まず、認知症の治療方法についてです。
認知症には薬物療法があり、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンなどの薬剤が用いられます。
これらの薬剤は、神経伝達物質のバランスを調整することで、症状の進行を遅らせたり改善することができます。
また、抗精神病薬などの精神科系の薬剤が用いられる場合もあります。
ケアの必要性とその方法
認知症患者は日常生活の中で、認知症によって引き起こされる様々な問題に直面します。
例えば、記憶力の低下や判断力の欠如による生活上の問題、行動の異常、コミュニケーションの問題などがあります。
こうした問題を解決するために、認知症患者には、日常生活のサポートや、認知症専門のケアが必要になります。
認知症患者のケアの方法としては、介護者やケアマネージャーの支援、介護施設の利用、在宅での支援などがあります。
また、認知症専門の医療機関での治療や、認知症専門のリハビリテーションが行われる場合もあります。
認知症と診断されなくても定期的な認知機能測定が重要
認知症と診断されなかった場合でも、定期的に検診する、認知機能テストを受けるなどの対策が重要です。
認知症は、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせられる病気です。
MCI段階で発見すれば進行を抑制できる
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。
つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。
定期的な認知機能測定で早期発見
認知症を疑った際の受診のタイミング、検査の流れ、費用などを解説しました。
認知症の疑いがある場合は、まずはかかりつけ医に相談し、かかりつけ医がいない場合は日本認知症学会や日本老年精神医学会が紹介する医療機関を確認することが有用と考えられます。
検査の結果認知症と診断されなくても、将来発症する可能性はあります。
普段から認知機能を測定・評価し、認知機能の低下を早期に察知できる環境を整えておいたり、保険見直し本舗で認知症保険について相談し、認知症発症で経済的なリスクに備えておくなど、いつか発症するかもしれない認知症について早めの準備をしてみてはいかがでしょうか。
※本記事で記載されている認知症に関する内容は、専門家によって見解が異なることがあります。