炭水化物や脂っこい食べ物、甘いものに偏った食生活を続けていませんか?
このような偏った食生活は、「栄養不足」を引き起こす可能性が高くなるとされています。
栄養不足に陥ると、さまざまな生活習慣病のリスクが増加し、全体的な健康に悪影響を及ぼすとされ、認知症との繋がりも懸念されています。
世界保健機関(WHO)が提唱する認知症予防ガイドラインでは、適切な食事管理の重要性が示され、認知症のリスクを低減するためには、バランスの取れた食生活が重要とされています。
この記事では、栄養不足が認知症に与える影響と、認知症予防に効果的な栄養素と食事について、詳しく解説していきます。
認知症とは
認知症は、記憶力、思考力、判断力などの認知機能が低下する病態の総称です。
認知機能の低下により、日常生活に支障をきたす状態を指します。具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
・ 日常の物忘れが激しくなる
・ 言葉がうまく出てこない
・ 時間や場所の感覚が狂う
・ 判断力や問題解決能力の低下
・ 言葉や知り合いの顔、名前が思い出せない
・ 簡単な計算ができなくなる
・性格の変化や不安、うつ症状の出現
認知症の治療には、症状を和らげたり、進行を遅らせたりするための薬物療法と、非薬物療法があります。非薬物療法には、認知療法、行動療法、リハビリテーション、家族支援などが含まれます。
認知症の原因としては、以下のようなものがあります。
アルツハイマー型認知症
認知症患者の約6割を占めており、脳内に異常なタンパク質が蓄積することで、記憶力の低下や判断力の喪失を引き起こします。
脳血管性認知症
脳の血管が詰まったり、破裂したりして起こる脳疾患による認知症で、急激な症状の発現や、片麻痺などの身体症状が特徴です。
レビー小体型認知症
幻視や意識の変動、運動障害などが特徴的な認知症で、パーキンソン病と関連が深いとされています。
前頭側頭型認知症
性格や行動の変化が顕著な認知症で、言語障害や運動障害を伴うこともあります。
認知症は、高齢化が進むにつれて増加する傾向にあります。早期発見、早期治療が重要であり、予防には健康的な生活習慣の維持が推奨されています。
認知症と栄養不足の関係
近年の研究では、栄養不足が認知症のリスクを高める可能性が指摘されています。
2023年11月に発表されたJAMA学術誌の研究では、食料不安が高齢者の認知機能の低下や認知症リスクの増加と関連していることが明らかにされました。
この研究は、食料不安が栄養不足を引き起こし、それが認知症リスクの増加につながる可能性があることが考えられます。
また、2024年3月にFrontiers学術誌が公開した研究によると、栄養不足がアルツハイマー型認知症の発症と進行に影響を与える可能性があることが示されています。
この研究では、栄養評価尺度、体組成、栄養関連の検査指標がADの発症と進行に独立して関連していることが示されました。
特に、低栄養はアルツハイマー型認知症の発症、疾患の進行、および死亡率の増加と関連しており、アルツハイマー型認知症の患者における栄養状態は病気の進行とともにさらに悪化することが示されています。
出典:Food Insecurity, Memory, and Dementia Among US Adults Aged 50 Years and Older
出典:An investigation into the potential association between nutrition and Alzheimer’s disease
栄養不足が認知症を引き起こす原因
栄養不足が認知症を引き起こす原因には、複数の仮説が提唱されています。
一つ目の原因は、栄養素が脳の神経細胞を保護し、脳損傷を防ぐ役割を果たすというものです。
例えば、ビタミンEは抗酸化作用により脳細胞を保護し、オメガ3脂肪酸は神経細胞膜の構成成分として認知機能維持に寄与すると考えらています。
ビタミンB群は神経伝達物質の合成やホモシステインの代謝に関与し、その不足は認知機能低下を招く可能性があるとされています。
二つ目の原因は、脂質や糖分、塩分の過剰摂取による栄養不足です。
これらの過剰摂取は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こし、それらが認知症のリスクを高めるとされています。
以上より、栄養バランスの取れた食事を心がけることが、認知症予防において重要であると考えられます。
認知症・栄養不足の予防に効果的な栄養素と食事
認知症予防と栄養不足対策には、バランスの良い食事と適切な栄養摂取が重要とされています。
1日3食を同じ時間に摂ることで体内時計を整え、健康的な食生活を維持することが大切です。
また、バランスの良い食事を心がけることで、必要な栄養素を適切に摂取し、認知症の予防と栄養不足の解消に寄与することが期待されています。
次に、認知症予防と栄養不足対策に効果的な栄養素と食事について具体的に紹介します。
認知症・栄養不足の予防に効果的な栄養素
認知症を予防するためには、栄養バランスの良い食事が重要です。以下の栄養素を意識的に摂取することで、認知症の予防に役立つと考えられています。
オメガ3脂肪酸:魚介類、特に青魚に豊富に含まれ、認知機能の維持や心血管系の健康に寄与するとされています。週に2回以上の魚の摂取が推奨されています。
ビタミンE:アーモンド、ほうれん草、サンフラワーオイルなどに含まれ、神経細胞を保護する効果が期待されます。1日の推奨摂取量は15mgといわれています。
ビタミンB群:全粒穀物、豆類、緑黄色野菜に含まれ、神経系の健康維持に必要です。特にビタミンB12は、1日に2.4μgの摂取が推奨されています。
ポリフェノール:果物、野菜、紅茶、赤ワインなどに含まれ、認知機能の低下を遅らせる効果が期待されます。
食物繊維:野菜、果物、全粒穀物に含まれ、腸内環境を整えることで、全身の健康に繋がると考えられています。1日の推奨摂取量は25g以上とされています。
認知症・栄養不足の予防に効果的な食事
認知症予防において、地中海式ダイエット(MEDダイエット)と、それに基づくMINDダイエットが効果的な食事として注目されています。
MEDダイエットは、植物性食品を中心としたバランスの取れた食事を推奨しており、オリーブオイルなどの健康的な脂肪、適度な魚介類、少量の肉や卵を取り入れ、加工食品の摂取を避けることが特徴です。
一方、MINDダイエットは、MEDダイエットと高血圧予防の食事法であるDASHダイエットを組み合わせ、認知健康をサポートすることに焦点を当てています。
緑黄色野菜、ベリー類、ナッツ、豆類、全粒穀物、魚、鶏肉、オリーブオイルを多く取り入れ、赤肉、バター、マーガリン、チーズ、菓子類、揚げ物やファーストフードの摂取を控えることが推奨されています。
これらの食事習慣は、認知機能の向上や認知症リスクの低減に役立つと考えられていますが、バランス良く実践することが重要です。
栄養士に相談して、個々に適した食事計画を立てることが推奨されています。
WHOによる認知症の予防対策
認知症の予防には、栄養管理だけでなく、生活習慣全体の見直しが必要です。世界保健機関(WHO)は、以下のような予防対策を提唱しています。
運動
定期的な身体活動は、認知機能の低下を遅らせる可能性があります。週に数回の適度な運動が推奨されています。
喫煙
喫煙は認知症のリスクを高める要因の一つです。禁煙は、認知症を予防するための重要なステップとなります。
病気の管理
高血圧や糖尿病などの疾患は認知症のリスクを高める可能性が警告されています。適切な管理と治療により、リスクを減らすことが可能とされているため、定期的な診察や薬物治療などを徹底しましょう。
飲酒を控える
過度のアルコール摂取は、認知機能の低下につながる可能性があります。適度な飲酒を心がけましょう。
これらの対策を実践することで、認知症のリスクを低減することが可能とされています。
健康的な生活習慣は、認知症以外の疾患の予防にも寄与するため、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。
認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要
認知症は、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせられる可能性のある病気とされています。
そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。
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MCI段階で発見すれば進行を抑制できる
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割程度の方は1年以内に認知症へと進行すると言われています。
一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。
つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。