認知症の予防にウォーキング?一日の歩数や効果、やり方、注意点などについて解説

 

健康長寿に一定の効果があるとされるウォーキング。

 

ウォーキングは心身の健康維持に有効であることが広く認識されています。

 

血圧を下げ、肥満を防ぎ、心疾患のリスクを減らすなど、多くのメリットが報告されています。

 

その中、ウォーキングが認知症の予防にも効果的であるとされていることをご存知でしょうか?

 

この記事では、認知症予防におけるウォーキングの効果について詳しく解説します。

 

 

認知症とは

認知症は、記憶、思考、判断力、言語能力などの認知機能が低下し、日常生活に支障を来たす病態を指します。

 

脳の様々な部位が損傷し、その原因は多岐にわたります。以下に認知症の種類ごとの原因をまとめました。

 

アルツハイマー型認知症:たんぱく質(アミロイドβ)の蓄積による脳の海馬の萎縮

レビー小体型認知症:たんぱく質(レビー小体)の蓄積

脳血管性認知症:脳卒中による脳の血管のつまりと出血

アルコール性認知症:アルコールの大量摂取

混合型認知症:2種類以上の認知症の合併

前頭側頭型認知症:たんぱく質の蓄積による脳の前頭葉・側頭葉の萎縮

 

認知症は高齢者に多いとされますが、脳疾患、心疾患、アルコール依存症などの原因により、若年層でも発症することがあるとされています。

 

初期段階では、記憶障害や見当識障害といった一貫した症状が見られますが、病状が進行するにつれて、幻覚や睡眠障害など個々の患者によって異なる症状が現れると考えられています。

 

現在、認知症の根本的な治療法は確立されておらず、主に症状を和らげる治療が行われているとされています。

 

ウォーキングがもたらす脳への影響

 

ある研究によれば、定期的なウォーキングは脳の血流を改善し、脳細胞への栄養と酸素の供給を促進することが示されています。

 

そのため、ウォーキングは認知機能の維持と向上に直接的に寄与し、脳の老化を遅らせる可能性があると考えられています。

 

さらに、ウォーキングによる脳への良い影響は、脳の血流の改善だけに留まらないとされています。

 

ウォーキングはストレスホルモンのレベルを下げることで、精神的なリラックス効果をもたらし、ストレス解消にも役立つとされています。

 

自然の中で行うウォーキングは、このリラックス効果をさらに高め、心身の健康を促進することができると考えられています。

 

ウォーキングは認知症の予防に効果的?

近年、認知症予防策としてウォーキングの効果に注目が集まっています。

 

2022年に学術誌JAMAで公開された研究は、約8万人のデータを用いて認知症とウォーキングの歩数の関連性を調査しました。

 

この研究によれば、一日に約9,800歩を歩く習慣のあるグループは、歩く頻度が少ないグループと比較して、認知症になるリスクが51%も低いことが報告されています。

 

これは、ウォーキングが認知症予防に効果的である可能性が高いことを示唆しています。

 

一方で、運動をまったくしない人や、長時間座り続ける人は、血圧、心疾患、糖尿病など、認知症リスクを上げる病気を発症しやすい考えられています。

 

出典:Association of Daily Step Count and Intensity With Incident Dementia in 78 430 Adults Living in the UK

 

認知症の予防に効果的なウォーキングのやり方

認知症予防に有効なウォーキングを行うためには、いくつかのポイントがあります。

 

研究によれば、1日約1万歩を歩くことは認知症リスクを減少させるのに有効であるとされています。以下に歩数とその距離や時間をまとめました。

 

歩数1日1万歩

距離:10000歩 x 70㎝(成人の歩幅) = 700000㎝ =約7㎞

想定時間1~2時間

 

しかし、最適な歩数は個人の健康状態や日常生活によって変わることがあります。

 

以下のポイントを踏まえ、歩数計アプリや時計を確認し、自分に合ったウォーキングを実践してみましょう。

 

自分のペースで継続的に

ウォーキングを始める際には、無理なく自分のペースで進めることが重要です。

 

忙しい日々を過ごす中でも、エスカレーターではなく階段を利用する、週末の外出時に散歩を楽しむなど、日常生活にウォーキングを取り入れることが可能です。

 

ウォーキングの習慣がない方も、一日の歩数目標を少しずつ増やしていくことで、無理なく習慣化できます。

 

ウォーキングの姿勢と歩き方

また、歩く際の姿勢や歩き方にも注意が必要です。

 

背筋を伸ばし、顔を前に向け、腕は自然に振ることが理想的です。

 

このように正しい姿勢で歩くことで、体を効率的に動かし、ウォーキング時の負担を軽減できるとされています。

 

ウォーキングは食後が最適

食後のウォーキングも、その効果を高めるための工夫とされています。

 

食後に歩くことで、血糖値の急激な上昇を抑え、消化を助ける効果があると言われています。

 

糖尿病や便秘が認知症のリスクを高めると考えられているため、この習慣は認知症の予防になると考えられているようです。

 

認知症予防におけるウォーキングは、自分のペースで続けること、正しい姿勢で歩くこと、食後に歩くことなど、小さな工夫から始めることができます。

 

認知症の予防におけるウォーキングの注意点

 

認知症の予防にウォーキングを取り入れる際、特に高齢者が留意すべき注意点があります。

 

安全にウォーキングを楽しむことは、怪我のリスクを減らし、長期的にこの活動を継続するために重要とされています。

 

ウォーキングの注意点① 安全な環境

まず、歩く環境には十分注意しましょう。凹凸がある道や滑りやすい表面は転倒のリスクを増加させます。

 

安全な道を選び、必要であれば歩行補助具の使用も考慮してください。

 

転倒を避けるためには、適切な靴選びが大切とされています。

 

滑りにくいソールの靴や、足にぴったり合う靴を選ぶことが、安全なウォーキングには不可欠です。

 

冬場は、雪が積もっていたり、路面が凍結している場合は、外出はなるべく控えるようにしましょう。

 

ウォーキングの注意点② 時間帯

時間帯の選択も重要です。夜間は視界が悪くなり転倒しやすくなるため、日中のウォーキングが推奨されます。

 

夏場は、早朝や夕方など、日中の暑さを避けられる時間帯を選んで、熱中症のリスクを低減させましょう。

 

ウォーキングの注意点③ 天気

悪天候の日はウォーキングを避け、気温が高い日は適切な水分補給に努めましょう。

 

水分補給は体温調節を助け、熱中症を防ぐために必須です。

 

特に夏場は、休憩時間を取り、水分補給ができるカフェなどで休憩するなど、計画的にウォーキングを行いましょう。

 

ウォーキング以外に認知症予防に効果的な運動とは?

 

ここから、ウォーキング以外に認知症予防に効果的な運動を紹介します。

 

まず、ランニング水泳などの有酸素運動が挙げられます。

 

これらの運動はウォーキングより強度が高く、よりストイックな運動習慣を求める人々に推奨されています。

 

ジムでの筋トレテニスバドミントンなどのスポーツも、全身の協調運動を促し、脳のさまざまな領域を活性化すると考えられています。

 

しかし、運動を選ぶ際には、認知症リスクを増加させる可能性のある活動に対する注意が必要とされています。

 

特に、サッカーやアメリカンフットボールのように、脳震盪を引き起こしやすいスポーツは、認知症の発症リスクを長期的に高める恐れがあると考えられています。

 

これらのスポーツは、適切な保護具の着用や安全性への配慮が重要です。

 

WHOが提唱する認知症の予防方法

運動以外にも、認知症の予防方法は多数存在します。

 

以下は、WHO(世界保健機関)が提唱する認知症予防に関するガイドラインから、特に推奨度が高い予防策をまとめたものです。

 

認知症予防に関する参考情報としてご利用ください。

 

 

出典:Risk Reduction of Cognitive Decline and Dementia 

 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせられる可能性のある病気とされています。

 

そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。

 

🔰 認知機能検査を実施しているお近くの医療機関は、「認知機能セルフチェッカー」を導入している医療機関リストからお探しください。

MCI段階で発見すれば進行を抑制できる

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

 

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。

 

一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

 

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

『認知機能セルフチェッカー』は「自分ひとりで、早く、簡単に」をコンセプトに認知機能低下のリスク評価ができるヘルスケアサービスです。40代以上の健康な方たちを対象に、これまでにない新しい認知機能検査サービスを提供しています。お近くの医療機関でぜひご体験ください。

-認知症を予防する, 運動

関連記事

認知症になると甘いものばかり食べる?予防に効果的なお菓子・フルーツ4選

  アイスクリームやチョコレート、クッキーなどの甘いものは依存性が高いため、過剰摂取しやすいと考えられています。   甘いものは、幸せホルモンとされるセロトニンやドーパミンなどの生 ...

体操
認知症予防の簡単な体操とは? コグニサイズやグーパー体操などをご紹介

認知症予防に何か運動を始めたいと考えている方も多いのではないでしょうか。 日頃から簡単に始められるものとして今回は様々な「体操」を紹介します。   認知症予防にどんな体操をすると効果を期待で ...

運動

2024.02.11  

認知症とコレステロールの関係とは?2023年に公開された研究より解説

年齢を重ねるごとに気になり始める「コレステロール値」。 コレステロールは人間に必要不可欠な成分であり、正常な値であれば体に害はないと言われています。 しかし、コレステロールが過剰になると心筋梗塞や脳の ...

手
認知症予防の指体操とは?認知症予防の指体操を難易度別に紹介

「認知症予防に指体操が効果的と聞いたものの、どんなことをすれば良いのだろうか」このような悩みを抱えてはいないでしょうか。   この記事では、認知症予防に有用であると期待されている指体操につい ...

運動

2024.02.11  

レクリエーション
認知症予防におすすめのレクリエーションは?運動・脳トレ・交流の分野別に紹介

楽しみながら認知症予防をしたい方におすすめのレクリエーションを紹介します。   認知症予防には「運動」「脳トレ」「コミュニケーション」の3つの分野が不可欠とされていますが、それぞれの要素をレ ...

運動

2023.04.25