高血圧が認知症の発症リスクを高める?薬や予防につながる対策とは

認知症は、2025年には患者数が約675万人に達すると予測されています。

また、生活習慣病の一つである高血圧患者は現在約4300万人いると推定されています。

認知症と高血圧の患者数は、どちらも高齢化を迎える日本において今後も増加すると考えられていますが、実は、高血圧は認知症を引き起こす要因の一つであることをご存じでしたか?

本記事では、高血圧と認知症の関係性、高血圧を予防・改善するポイントについて詳しく解説します。

現在、既に高血圧の方やこれから備えたいという方はぜひお役に立ててください。

高血圧と認知症の関係

高血圧は、血液が血管壁に与える圧力が正常値を上回り、持続している状態を指します。この状態は、心臓病や脳卒中のリスクを増加させる主要な要因として知られています。

認知症は、記憶力や思考力などの認知機能が慢性的に低下する状態と定義づけられています。現在、根本的な治療法が存在しないため、死に至るまで進行し続ける病態といわれています。

一見、これら二つの状態は無関係のように思えますが、高血圧は認知症の原因になる可能性があると指摘されています。

高血圧は、脳血管性認知症を引き起こす要因の一つであることがよく知られていますが、アルツハイマー型認知症との関連性も明らかになってきています。

高血圧と、脳血管性認知症・アルツハイマー型認知症との関係について以下で分かりやすく説明します。

脳血管性認知症

高血圧は、脳血管性認知症を引き起こす要因として以前から指摘されており、密接に関係しています。

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害(脳卒中)によって脳の血管が詰まったり破れたりすることで発症することが多いとされています。

そして、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害(脳卒中)を引き起こす要因の一つが高血圧です。

高血圧が長く続くと、動脈硬化が起こり、脳の血管が詰まることで脳梗塞になります。

そこからさらに血圧が高くなると、脳の血管が破れて脳出血が起こります。

(参照)厚生労働省『脳血管障害・脳卒中

アルツハイマー型認知症

最近では、高血圧がアルツハイマー型認知症の一因であることも明らかになってきています。

アルツハイマー病とは、脳にアミロイドβという特殊なタンパク質が蓄積することで発症するとされています。

このアミロイドβが脳に蓄積する要因として、糖尿病や頭部外傷が知られていましたが、高血圧もその一つであることが明らかになってきました。

認知症を引き起こすとされている様々な要因の中でも、高血圧は予防可能な因子であるとされており、ご自身の生活習慣を見直すことで改善することが期待されます。

高血圧の原因

高血圧は遺伝や生活習慣などの様々な要因が組み合わさって起こるとされています。

血圧を下げるには、高血圧の原因を理解し、それぞれの原因に適した対策を講じることが大切です。

高血圧の原因となる代表的な生活習慣を以下に示します。

食塩のとりすぎ

日本人の高血圧の要因として一番多いのが、食塩のとりすぎであるといわれています。

食塩をとりすぎると、体内の塩分濃度が高くなり、その塩分濃度を下げるために体内に水分が溜め込まれます。

これにより、体内の血液量が増加し、高血圧になるのです。

肥満

肥満には「皮下脂肪型肥満」と「内臓脂肪型肥満」の二種類があり、高血圧と関係があるのは「内臓脂肪型肥満」の方です。

内臓脂肪型肥満では、全身の末梢血管の圧迫や過剰分泌されたインスリン、そして脂質を含んだドロドロな血液の増加により、血圧が上昇するとされています。

ストレス

ストレスを感じると、交感神経のはたらきが強くなり、心拍数を増やしたり血管を収縮させたりします。

そして、心拍数の増加によって血液量が増える一方で、血管が収縮して圧迫されるため、血圧が上がります。

喫煙

タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があります。

これにより、血液の流れが悪くなり、心臓はより強く血液を全身に送り出さなければならないため、血圧が上昇します。

また、タバコに含まれる有害な物質は、血管を傷つけて動脈硬化を促進し、長期的には高血圧の原因となります。

運動不足

運動は、体の余分な塩分を排せつする働きを活性化させますが、運動不足になると体内に塩分が溜まり、血液量が増加してしまいます。

また、運動不足は肥満の原因にもなり、間接的に高血圧を引き起こす要因にもなります。

高血圧は、症状がない場合が多く、自覚症状が現れる前に悪化していくことがあります。
このような生活習慣をお持ちの方は、控える・やめることで見直すようにしましょう。

高血圧を予防・改善するためのポイント

高血圧は放置すると、認知症のリスクも高めるため、早期発見と適切な治療が重要です。

高血圧の原因を対策することに加えて、健康的な食事と適度な運動を組み合わせることでより効果が高まります。

以下では、高血圧の予防・改善に効果的な食事や運動方法をご紹介します。

食事

食事では、塩分と炭水化物を控えて、ミネラルや食物繊維、タンパク質を多く含む食事をとることがよいです。

ミネラルは、体内の余分な塩分を排せつする効果があります。

これにより、体内の塩分濃度を下げるために水分量が増加し、血液量が増えることを防ぐことができます。

また、飲み物としては「緑茶」が効果的です。

緑茶に含まれるGABAやカテキンは血管を緩め、血圧を下げる働きがあります。

運動

高血圧を改善する運動としては、1日30分程度の有酸素運動(ウォーキング・ジョギング)が適しています。

できれば、毎日有酸素運動を行うことが望ましいです。

一方で、ダンベルやマシンを使う筋トレは、高重量を扱うことで心臓に負荷がかかり血圧を高めるので控えましょう。

これらの生活習慣の改善は、認知症のリスクを低下させることにもつながるとされています。

降圧剤は認知症リスクを高めるのか

降圧剤とは高血圧の方に対して、血圧を下げるために処方される薬です。

「降圧剤を服用すると認知症になる」「降圧剤は認知症リスクを低下させる」などといわれており、高血圧治療のために降圧剤を飲むことを不安に思われている方もいるかもしれません。

現在、降圧剤が認知症リスクを高めるというデータはありません。

しかし、高齢の方が降圧剤を服用することで、認知機能の低下が進行するとの報告もあるため、降圧剤の適切な処方と服用には、医師の指導が必要です。

低血圧も認知症リスクを高めることがある

低血圧(特に起立性低血圧)が認知症のリスクを高める可能性があるという研究結果がいくつかあります。

これは、低血圧が脳への血流を低下させ、酸素や栄養素の供給を減らし、それによって神経細胞が損傷を受ける可能性があるためです。

特に高齢者においては、立ち上がった際などに血圧が急激に下がる起立性低血圧は、脳への血流が一時的に減少し、意識が朦朧としたり、めまいを感じたりする場合があります。

これが続くと、脳の機能が徐々に低下し、認知症を引き起こす可能性があると考えられています。

しかし、すべての低血圧が認知症のリスクを高めるわけではありませんし、それが必ずしも起こるわけでもありません。

高血圧を改善するには、急激に血圧が下がらないように適切にコントロールしていくことが重要です。

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

高血圧は、一度発症すると基本的に完治しないとされているため、定期的に健康診断を受けながら予防に努めることが大切です。

認知症も、一度発症すると完治しないとされていますが、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせることが可能である病気とされています。

そして、早期発見には定期的に認知機能をチェックすることが重要になります。

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MCI段階で発見すれば進行を抑制できる

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

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