認知症の予防に効く食べ物はヨーロッパにあり!予防に効果的な食べ物や取り入れ方を徹底解説

認知症は一度発症すると完治させることが難しい病気とされています。

健康なころからいかに予防していくかが問われる中、個人が取り組みやすい対策として挙げられるのが「食事」ではないでしょうか。

 

健康的な食生活を続けることは、認知症予防の代表格と言えるでしょう。

しかし、むやみに体に良いものを食べ続けても、予防に繋がるとは限りません。

 

今回は「食事」という観点から、認知症を予防すると期待される「地中海食」について紹介し、「地中海食」で予防に効果的とされる食材を普段の食事に上手く取り入れる方法についても紹介していきます。

 

 

認知症と食事の関係性

脳は活動に必要なエネルギーを食事で補っているため、人間の脳と食事は密接に関連していると言われています。

 

例えば、脳は食事で摂取したブドウ糖を主なエネルギーとして活動しています。

その他にも青魚などから摂取できるDHAが脳の機構や働きを支えたり、ポリフェノールが脳の酸化を防いだりすることが分かってきています。

 

一方で、塩分の過度な摂取は脳血流量を減少させるなど、日頃の食事の質によって脳の状態は大きく影響されることが分かります。

 

例えば、ジャンクフードの過度な摂取は脳の酸化を助長し、脳を萎縮させるため認知症の発症に直結します。さらに塩分や油分が多く含まれているため、脳血流量が減少します。

 

また、直接的に認知症の発症へ繋がらなくとも、不健康な食生活は脳梗塞や脳出血などの他の健康悪化を引き起こします。

 

脳梗塞や脳出血などの疾患が脳へダメージを与え、脳血管性認知症を引き起こす可能性があり、健康な食事は認知機能の維持には不可欠となります。

 

地中海の食生活はどのようなもの?

地中海食とは、ギリシャやスペイン、イタリアやエジプトなどを代表とした、地中海に面した国々の食事の様式を指し、以下のような特徴が挙げられます。

 

・赤身肉を食べる頻度が少ない

・魚介類を適度にとる

・乳製品(チーズ等)を適度に取る

・オリーブオイルを多く摂取する

・食事と同時にワインを日常的に飲む(適量)

果物、野菜、パンやその他の穀物食品、豆類、種実類といった植物性食品が豊富

 

イギリスのコンサルティング会社GlobalData社が2019年に発表したレポートによると、スペイン・日本・アメリカ3カ国の認知症患者数の比較したところ「60歳以上の高齢者に対する認知症の割合」は、地中海沿岸国のスペインが最も低かったというデータを報告しています。(男性3.74%、女性11.18%に対して、アメリカは男性7.66%、女性:11.64%。日本は男性11.55%、女性23.23%)。

 

また、米国ワシントン大学が2018年に行った研究でも、スペインは2040年までに平均寿命が世界最長となる事が予想され、世界で最も健康な国に位置づけられました。

 

この要因として、スペイン国民が日常的に摂取している「地中海食」が国民の健康促進に起因していると結論づけています。

 

認知症の原因と共に解説!

 

認知症には様々な種類があるとされており、その中で患者数の大半を占めるのが「アルツハイマー型認知症」です。

その原因として最も有力とされているのは「アミロイドβ」という脳内で作られるタンパク質の存在です。

 

脳内で生成されるアミロイドβは、通常であれば不要なものとして短期間で分解されて脳外へ排出されます。

しかし、様々な理由でそのアミロイドβがうまく脳内から排出されず、20〜30年かけて脳内に異常に蓄積され、アルツハイマー型認知症を発症します。

 

アミロイドβが分解されない例の1つが、糖尿病に由来するアルツハイマー型認知症です。

アミロイドβは「インスリン分解酵素」の働きによって分解されることが分かっています。

 

インスリンは、膵臓でつくられるホルモンで、血糖値を下げる働きをしています。

糖尿病の場合、このインスリンの分泌がない、もしくは、分泌されていても効果的に働かないため、血糖値が下がらず、高血糖の状態が続いています。

 

こうして高血糖の状態が続くと、インスリン分解酵素は、インスリンの分解が最優先となり、アミロイドβの分解にまで働けなくなります。その結果、アミロイドβが溜まります。

そうしてアミロイドβが脳内で蓄積されることで、脳神経が、脳内で情報の伝達が正常に行われなければ、脳がだんだん萎縮してしまい、認知症が進行していきます。

 

また、認知症は他の疾患との関連性があるとも考えられています。

例えば脂質異常症の持病がある方は動脈硬化により脳内の血液の流れが悪くなり、認知症の発症率が比較的高くなる傾向にあります。

 

そして、「地中海食」には、こうした認知症の発症に影響を与えるとされるアミロイドβや、認知症に関連する動脈硬化など原因となるコレステロール等の物質に対して、その影響を抑えることが期待出来る成分が多く含まれています。

 

地中海食はなぜ有効?

先ほどの項目では、数ある認知症の原因の内、「アミロイドβ」というタンパク質、そして「脂質異常症」や「動脈硬化」などの疾患との関連性について説明しました。

 

こちらでは、ヨーロッパで特徴的な食べ物が「アミロイドβ」やその他の疾患にどう影響を与えるか説明します。

 

オメガ3脂肪酸

地中海を囲む国々の食事で頻繁に利用される、オリーブオイルやナッツ類には「オメガ3脂肪酸」が多く含まれています。

 

血液中の脂質濃度を下げる働きがあり、脂質異常症に起因する動脈硬化などを防ぐ効果が報告されています。

 

結果的に脳梗塞や脳出血によって起こる脳血管性認知症(​​脳の血管障害でおきる脳梗塞や脳出血によって起こる認知症)の予防も期待できます。

 

DHA・EPA

イワシやサンマ、サバ等の青魚も地中海の国々で消費される代表的なものです。

 

これらに多く含まれる「DHA・EPA」は中性脂肪を下げる効果があると報告されています。動脈硬化の予防、ひいては脳血管性認知症を予防することも期待できます。

 

「DHA・EPA」は人間の体内では生成されない成分で、食品から摂取する必要がある為に必須脂肪酸と呼ばれます。

 

オレイン酸

オリーブオイルやナッツ類に多く含まれる「オレイン酸」は、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβを減らす役割があるとされています。

 

オリーブオイルに限らず、茄子やアボカド、ぶどうなどの野菜や果物にも「オレイン酸」は含まれており、それらの食べ物の摂取もアミロイドβの減少に寄与すると言われています。

 

ポリフェノール

オリーブオイルやナッツ類、赤ワインに特に多く含まれている「ポリフェノール」は抗酸化物質と呼ばれ、脳の酸化を防ぎ老化による記憶力の低下を防ぐことが期待できます。

 

また同時に、「抗酸化物質」の摂取は動脈硬化や脳梗塞、脳出血を防ぐ効果もあります。

これらの障害は、人間が取り込んだ酸素の一部が活性酸素になり、正常な細胞や遺伝子を酸化させて、血管の内側に障害を引き起こすことで発症します。

 

抗酸化物質は活性酸素の働きを抑える効果があるため、動脈硬化や脳梗塞、脳出血を防ぐ効果があり、脳血管性認知症の予防にも効果的であると言われています。

 

日本食ではダメなのか

 

日本食は世界で最も健康的な食事の1つとして有名です。

日本食でも魚介類や野菜類を多く摂取することができるため、認知症予防に対して一定の効果はあると考えられます。

 

しかし、

 

・煮物などで比較的多くの糖分を摂取するため、糖尿病由来の認知症に繋がる可能性がある

・白米の消費が多く、糖質の過剰摂取から糖尿病由来の認知症になる可能性がある

・オリーブオイル、ナッツ類などの消費が少ない

・醤油、だし、うま味調味料などが塩分過多につながる

 

などの注意すべき点が多数あることも事実です。

 

どのようにして地中海食を取り入れるか

文化の違う土地の食生活を取り入れるのは簡単ではありません。しかし、工夫次第で日常生活に少しずつ取り入れる事は可能です。

 

・間食をお菓子からナッツに切り替える

・ワインの代わりにお茶やコーヒーでポリフェノールを摂取する

・料理に使うものをサラダ油からオリーブオイルに変える

 

また、認知機能を生涯維持できるように、食事だけに留まらず運動や睡眠などの習慣を見直して予防することが必要です。

個人の取り組みが認知機能の維持には不可欠です。今できることを考えて、健康的な生活を心掛けましょう。

 

とはいえ、どれだけ工夫をしても完全に認知症を予防することはできません。

認知症は本人でも自覚がない内に少しずつ進行していき、発見された段階では手遅れになってしまう事もあります。定期的に認知症の検査に行き早期発見に努めることも、予防と同様に大切です。

 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせられる病気です。

 

そして、早期発見には定期的に認知機能をチェックすることが重要になります。

MCI段階で発見すれば進行を抑制できる

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

 

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

 

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

 

MCI(軽度認知障害)とは?定義や検査方法について紹介します

 

〈出典〉

矢野大仁. “【医師監修】認知症予防に効果的な食事は?ボケ防止に効く食材・食事方法の徹底解説”  .学研Cocofump. 2021/11/21

https://www.cocofump.co.jp/articles/byoki/25/(2023/2/28)

 

“魚をよく食べる人は認知症の発症が少ない 糖尿病の人は認知症に注意”. 糖尿病ネットワーク. 2020/02/17 

https://dm-net.co.jp/calendar/2020/029922.php(2023/2/28)

 

“動脈硬化と認知症〜ティーペック健康ニュース〜”. T-PEC. 2014/12/10

https://www.t-pec.co.jp/health_news/2014-12/(2023/2/28)

 

大西淳子. “地中海食にオリーブオイルかナッツを加えて認知症予防”. 日経Gooday. 2015/08/31

https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/15/050800004/082600008/(2023/2/28)

 

GlobalData Healthcare. “Alzheimer’s disease prevalence variation between Spain, the US and Japan”. 2019/04/29

https://www.clinicaltrialsarena.com/comment/alzheimers-spain-us-japan/(2023/2/28)

 

“How healthy will we be in 2040?”. IHME Measuring what matters?. 2018/10/16

https://www.healthdata.org/news-release/how-healthy-will-we-be-2040(2023/2/28)

 

“脂質異常症と認知症予防”.健康長寿ネット. 2019/11/08

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/shishitsu-ninchi-yobou.html(2023/2/28)

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