物覚えが悪くなったり言葉が出にくくなったりしたとき、認知症を疑う方は多いのではないでしょうか。認知症と言えば、70代以降に発症しやすい病気ですが、40~60代でも発症するケースが少なくありません。
比較的若い年齢で起こる認知症である「若年性認知症」が気になる方は、定期的に認知機能測定・評価をすることが大切です。
ここでは、認知機能測定を受けるメリットとテストの種類、その注意点について詳しく解説します。認知機能低下の疑いを感じている方は、参考にしてみてください。
若年性認知症とは
若年性認知症とは、18~39歳に発症する「若年期認知症」と、40~64歳で発症する「初老期認知症」を含む認知症の総称です。
高齢者における認知症とは異なり、認知機能の低下を引き起こすさまざまな病気にかかっているケースが少なくありません。
初期症状は「性格の変化」、「言葉が出にくい」等であるため、精神的なストレスや更年期障害、うつ病と間違えられる場合があります。
進行すると同じことを何度も言ったり、計算の間違いが多くなったりと、認知機能の低下が明確に現れます。
認知症スクリーニングテストは早期発見に効果的
認知機能測定は、認知機能の状態を確認するためのスクリーニングテストです。
認知機能測定をしてみて少しでも認知機能の低下が心配になった場合は、医師の診断を受けるようにしましょう。
若年性認知症は早期に対処すれば進行を遅らせることができますので、定期的に認知機能の測定・評価を行って、認知機能の些細な変化にも気づけるようにしておくことが大切です。
自宅にいながら簡単にできる若年性認知症スクリーニングテスト
ここからは、自分や家族の認知機能の状態を確認したい場合に、手軽に受けられるスクリーニングテストをご紹介します。
認知症予防協会の認知症自己診断テスト
一般社団法人認知症予防協会の認知機能測定では、絵柄から情報を読み取ったり数字に変換したりする問題が主に出題されます。
ゲーム感覚で受けられるため、認知機能測定に抵抗のある方にも受け入れられやすいでしょう。
また、スマホやタブレットがあれば場所を問わずにオンラインで認知機能測定を受けられます。
改訂長谷川式簡易知能評価スケール
訂長谷川式簡易知能評価スケールは、精神科医の長谷川和夫氏が1974年に作成したスクリーニングテストで、現代でも医療機関における認知症の診断に広く用いられています。
スクリーニングテストにかかる時間は約10~15分のため、忙しい方でも手軽に受けられるでしょう。
30点満点式で、1問ごとに点数が割り振られています。認知症の疑いが強いと判定されるのは、20点以下の場合です。
質問内容と点数配分について詳しくみていきましょう。
- 現在は何歳ですか?(1点)
- 今日の年月日と曜日は?(年・月・日・曜日で各1点)
- 現在いる場所は?(即時に回答2点、5秒後にヒントを与えて回答1点)
- 3つの言葉を伝えて、後から尋ねる(各1点)
- 100から7を連続で引く(1回引けたら1点)
- 口頭で伝えた2パターンの数字を反対から言う(2パターン出題、各1点)
- 5つの物を見せてから隠し、何を隠したか聞く(各1点)
- 知っている範囲で野菜の名前をどれだけ言えるか(6個1点、7個2点、8個3点、9個4点、10個5点)
なお、点数はあくまでも目安であるため、20点以上でも認知機能に不安を感じる場合は、ためらわずに医師に相談することが大切です。
MMSE(ミニメンタルステート検査)
MMSE(Mini Mental State Examination)は、米国のフォルスタイン夫妻らが1975年に作成した認知機能の状態を確認するスクリーニングテストで、日本で受けられるMMSEは、MMSE-J(Jは日本語を表す)です。
問題数は11問で、「現在の年月日の質問」、「現在いる場所の質問」、「3つの言葉を繰り返させる」、「伝えた内容を実行させる」といった1問ごとに点数が割り振られています。
東京都福祉保健局のチェックリスト
東京都福祉保健局のWEBサイトでは、「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」が公開されています。
スクリーニングテストの内容は、「物を置いた場所がわからなくなることはあるか」、「もの忘れの症状があると周りの人に言われるか」など、認知症の症状をそのまま質問する形式です。
質問数は10問で、それぞれ下記の選択肢が設けられています。
- まったくない(1点)
- ときどきある(2点)
- 頻繁にある(3点)
- いつもそうだ(4点)
20点以上の場合は、認知機能が低下している可能性があるとされています。
東京都福祉保健局『自分でできる認知症の気づきチェックリスト』
若年性認知症スクリーニングテストを実施する際の注意点
認知機能測定を実施する際には、次のポイントや注意点を押さえて実施することが重要です。正しい対応につなげるためにも、きちんと理解しておきましょう。
「スクリーニングテストの結果が悪い=認知症」とは言えない
スクリーニングテストの結果が悪いからといって、必ずしも認知症だとは限りません。
認知症であると診断するためには、専門医による認知機能テストのほかにも、血液検査や尿検査、レントゲン検査など、さまざまな検査が必要です。
スクリーニングテストの点数が悪くても早期に専門医に相談できれば、結果的に認知症を早期発見できる可能性が高まります。
少しでも認知症の疑いがあれば専門家の診察を受ける
認知機能測定の点数に問題がなくても、少しでも認知機能低下の疑いがある場合は、早めに医師の診察を受けましょう。医療機関で認知症の診断を受ける流れは次のとおりです。
- (1)問診:認知能力や心の状態を調べるために、いくつか質問する
- (2)神経心理検査:認知機能の状態を調べる認知症テスト
- (3)身体検査:必要に応じて、尿検査や血液検査、ホルモンを調べる内分泌検査などを受ける
- (4)画像検査:認知機能の低下を引き起こす脳の萎縮や脳梗塞、脳腫瘍などの検査
- (5)脳の働きを調べる検査:SPECT検査、PET検査
検査結果に基づき、その医療機関が採用している診断基準を用いて診断します。診断基準の種類は、DSM-5やICD-10などです。
若年性認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要
若年性認知症の予防には、早期発見と早期対策が重要です。
進行してしまってからでは、認知機能を大きく回復させることは難しいと考えられています。認知機能測定で良い結果が出ても、定期的に測定と評価を受けることが大切です。
それでは、認知機能低下の早期発見と定期的な認知機能測定・評価の重要性について詳しくみていきましょう。
MCI段階で発見すれば進行を抑制できる
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。
つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。
※本記事で記載されている認知症に関する内容は、専門家によって見解が異なることがあります。