2025年には、65歳以上の高齢者のうち約5人に1人が認知症患者になると予想されている中、認知症発症後に病状の進行を予防できるのかという点が気になる方も多いのではないでしょうか。
認知症の進行は予防が可能なのか、また、予防するためにできることや発症前にできることについて解説します。
今すぐ始められる認知症予防活動についても解説しますので、ぜひご覧ください。
認知症の進行は予防できる?
認知症は進行性であることが多く、発症した後に認知機能の低下が徐々に深刻化することがあります。
一日でも長く介護を必要としない生活を続けるためにも、認知症の進行を止めたいと考える方は多いでしょう。
実際のところ、認知症の中には手術等によって進行を止め、介護を必要としない状態に治療できるものもあります。
例えば認知症の原因が脳腫瘍や正常圧水頭症等の場合には、治療で治癒できることもあります。
例外を除いて完全に治療・予防することは難しい
外科的治療により一部回復が可能なの認知症や、薬物によって認知障害が生じている場合を除き、完全に治療・予防することは難しいと言われています。
例えば、認知症の中でも特に患者数が多いとされるアルツハイマー型認知症は、薬物療法で進行を遅らせることはできますが、完治することはできず、一度発症すると一生涯の病気として認識されています。
また、アルツハイマー型認知症に次いで患者数が多いとされるレビー小体型認知症も、完全に治療することや進行を止める手段は現時点においてないと言われています。
アルツハイマー型認知症の治療薬によって認知機能の低下を遅らせる可能性はありますが、あくまでも進行を遅らせるだけで、進行を止めたり予防したりといった効果は期待できないと言われているのが現状です。
認知症の初期症状と進行の仕方
初期段階における軽度の認知症は、原因によっては治療や回復が可能と言われています。
しかし、完治可能な認知症に罹患している場合でも、発見が遅れて症状が進行しすぎていると、回復できない可能性もあります。
認知症の初期症状を知り、できる限り早い段階で気付くことが有用だと考えられます。
認知症の初期に見られる症状
ついうっかりと物事を忘れてしまうことは誰にでもあるものです。
昨日の夕飯のメニューを忘れたり、出先で会った人の名前を忘れたりすることは、若い時でも珍しいことではありません。
しかし、夕食を食べたこと、出掛けたことそのものを忘れてしまうような場合は、認知症の可能性が考えられます。
また、今日の日付や今いる場所が分からなかったり、2つ以上のことを段取り良く進めることができなかったり、新しいルールを覚えられなかったりすることも、認知症に見られる症状です。
いつもできていたことができなくなった、あるいは、いつもと同じことをするにも時間や手間がかかるようになったときは、一度、病院で相談するほうが良いかもしれません。
適切な治療を受けることで、原因によっては完治したり、症状の進行を遅らせたりすることができます。
軽度認知障害(MCI)の段階に気付けば認知症を予防できることがある
認知症を発症する前段階を「軽度認知障害(MCI)」と呼びますが、この軽度認知障害の 段階で適切な対応を行うと、認知症の発症を回避できることがあります。
また、発症を回避できないときでも、認知症の発症を遅らせることが可能なケースもあります。
軽度認知障害の状態を放置しておくと、1年に約10%の割合で認知症に移行すると言われています。
しかも、一度認知症を発症してから進行を予防することは難しいため、できる限り早期の段階で気付き、運動や食事、認知トレーニングなどの適切な介入を行うようにしましょう。
認知症は徐々に進行する
原因にもよりますが、一般的に認知症は徐々に進行すると言われています。
そのため、本人はもちろんのこと一緒に暮らしている家族も変化に気付きにくく、発見が遅れてしまうことにもなりかねません。
久々に会った友人や知人の意見にも耳を傾け、何かおかしいと感じるときは早めに病院に行くことを心がけてください。
一方で、認知症は環境の変化などで一時的に進行が一気に早まったように感じることがあります。
また、反対に少し改善されたように感じることもあります。
とはいえ、これは一気に症状が進行したり、改善したりしているのではなく、らせん状に進行しているだけなので、総合的に見れば症状は少しずつ悪化しているケースが多いようです。
日々の変化に一喜一憂するのではなく、病院に行き、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
認知症が進むとどうなる?
認知症が進行すると理解力や判断力が衰え、自分で自分のことができず、社会生活だけでなく日常生活にも大きな支障が生じます。
場合によっては要介護状態になることもあるでしょう。
国民生活基礎調査(2019)によりますと、要介護状態になった原因でもっとも多いものは「認知症」で、実に17.6%の要介護者が認知症によって介護が必要な状態になっています。
要介護状態を防ぐためにも、認知症の進行を遅らせることが大切と言えるでしょう。
認知症の進行を遅らせるにはどうする?
認知症は完治は難しいですが、進行を遅らせることができることがあります。
また、認知症の前段階である軽度認知障害の時点で気付き、適切な介入を行えば、認知症の発症を遅らせたり、発症自体を回避できたりすることがあります。
ここでは、適切な介入について解説します。
適切な生活習慣
栄養バランスに配慮した食事を取ることで、健康を増進し、脳梗塞や糖尿病などの認知症と密接に関係すると言われている生活習慣病を罹患するリスクを抑えることができます。
品目と栄養バランスを考慮した食事を普段から心掛けることが大切です。
また、薬物を処方通りに服用することも大切です。
例えばアルツハイマー型認知症の場合、処方された薬物を適切に服用することで、進行を遅らせることが可能になります。
服薬を忘れると効果を得られないこともあるため、ご家族も協力して服薬管理する必要があるでしょう。
早めに認知機能の定期的な測定を始めましょう
認知機能の低下は徐々に進行するため、自覚することが難しく、また、同居している家族であっても気付きにくいことがあります。
認知症に早期に気付くためにも、また、できれば軽度認知障害の時点で気付くためにも、定期的に認知機能を測定してみてはいかがでしょうか。
早めに衰えに気付くことが大切
認知機能の衰えに早期に気付くことができれば、認知症の進行を遅らせることができるかもしれません。
また、軽度認知障害の状態で気付いて適切な措置を講じることができれば、認知症発症そのものを回避できるケースもあります。
認知症を一度発症すると、特定の原因による認知症をのぞいて進行を予防することが難しくなるので、早期発見・早期介入を心がけるようにしましょう。
認知症について知ることと備えることが大切
一部の認知症を除いて進行を予防することはできませんが、適切な介入で進行を遅らせることが可能です。
また、認知症の前段階である軽度認知障害の時点で気付くことができれば、認知症の発症を回避することや遅らせることも可能になります。
認知機能セルフチェッカーを用いて定期的に認知機能を測定し、ご自身の今の状態を把握しておきましょう。
※本記事で記載されている認知症に関する内容は、専門家によって見解が異なることがあります。