認知症の中核症状とは?周辺症状との違いや治療法について解説

 

 

中核症状とは

中核症状とは、疾患や障害において最も特徴的で重要な症状のことを指します。

認知症における中核症状は、主に記憶障害、言語障害、認知機能低下などの脳機能の低下が挙げられます。

 

これらの症状は、認知症の進行に伴って次第に悪化し、患者の日常生活やコミュニケーションに大きな影響を与えることが一般的です。

 

 

認知症の中核症状は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、さまざまな認知症のタイプに共通して見られる症状です。

 

それぞれの認知症のタイプには、特有の症状や進行速度がありますが、中核症状はどのタイプにも共通して現れるため、認知症の診断や治療において重要なポイントとなります。

 

7つの中核症状

記憶障害

記憶障害は認知症の主要な症状で、短期記憶や長期記憶の喪失があります。

認知症患者が新しい情報を学習・記憶したり、以前の思い出を思い出すことが困難になるといわれています。

 

「日常生活での出来事や約束を忘れる」

「同じ質問を繰り返す」

「家族や友人の名前が思い出せない」

 

見当識障害

見当識障害は時間や場所に関する認識が低下する症状です。

患者は日付や時刻を把握できなくなったり、自分がどこにいるのか分からなくなることがあります。

 

「自分がいる場所や現在の日時を認識できない」

「過去の出来事を現在のものと混同する」

 

理解力・判断力の低下

認知症患者は物事の理解力や判断力が低下し、日常生活や社会生活で問題が生じることがあります。

日常生活において、状況に適した判断ができなくなることがあります。

 

「お金の管理ができなくなる」

「危険な状況を認識できない」

「指示を理解できない」

 

実行機能障害

実行機能障害は計画立案、組織化、タスクの開始や完了が困難になる症状です。

日常生活のタスクを遂行する能力が損なわれます。

 

「料理や掃除などの日常タスクの遂行が困難になる」

「複数のタスクを同時にこなせなくなる」

 

失行

失行は身体的な動作や行為の制御が失われる症状です。

患者は、どのように動かすべきか理解できていても、正しい動作ができなくなります。

 

「ドアの開け方や服の着方を忘れる」

「食事の方法がわからなくなる」

 

失認

失認は物や人の認識が困難になる症状です。

親しい人や身の回りのものを見ても、それが何であるかわからなくなることがあります。

 

「家族や友人を見ても認識できない」

「普段使っている道具や家具の機能を理解できない」

 

失語

失語は言葉の理解や表現が困難になる症状です。

患者は単語を思い出せなかったり、言葉を正しく組み立てることができなくなったりします。

 

「言葉を理解できない」

「言いたいことがうまく伝えられない」

「会話が支離滅裂になる」

 

周辺症状との違い

認知症には中核症状とは別に周辺症状というものが存在します。

この2つの症状の違いについて解説します。

 

まず、中核症状は認知症の主要な特徴であり、病気が進行するにつれて現れるものです。

主な中核症状は、記憶障害、理解力・判断力の低下、見当識障害などです。

これらの症状は、日常生活の自立性を奪い、患者の生活に大きな影響を与えます。

 

一方、周辺症状は認知症の進行に伴って現れることがある、より広範な症状群です。

これらは個人差があり、すべての患者に同じように現れるわけではありません。

周辺症状には、情緒不安定、徘徊、不眠、食欲不振、幻覚、妄想などが含まれます。

これらの症状は患者のストレスを増大させ、家族や介護者にも負担をかけることがあります。

 

中核症状と周辺症状の違いは、中核症状が認知症そのものの本質的な特徴を示し、病気の進行に直結するのに対し、周辺症状は個々の患者の状況や環境によって変動し、病気の進行とは必ずしも連動しない点です。

治療やケアの際には、これら両方の症状に注意を払い、患者一人ひとりのニーズに応じた対応が求められます。

 

認知症の治療

認知症の中核症状に対する治療は、主に以下の3つのアプローチがあります。

ただし、現時点では認知症を完全に治癒する方法は存在しないため、症状の進行を遅らせるか、症状を緩和することが目的となります。

薬物療法

アルツハイマー病などの原因による認知症の場合、薬物療法が一般的です。

主にコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬が処方されます。

 

これらの薬は、脳内の神経伝達物質の働きを改善し、認知機能の低下を緩和することが期待されます。

 

非薬物療法

認知症の症状を緩和するために、薬物以外のアプローチも取り入れられます。

 

具体的には、認知機能訓練や生活リズムの維持、適度な運動、栄養バランスの良い食事、安定した睡眠などが含まれます。

これらの対策は、患者のQOL(生活の質)を向上させることが期待されます。

 

サポートと介護

認知症患者の中核症状に対処するために、家族やケアスタッフが適切なサポートと介護を提供することが重要です。

 

患者の状態に応じて、コミュニケーション方法を工夫したり、安全な環境を整えたりすることが求められます。

また、患者の自立をサポートするために、日常生活の中での認知機能を活かす機会を提供することも大切です。

 

認知症の治療は、患者一人ひとりの状況に応じて、医師や専門家と協力して適切な治療法やケア方法を見つけることが重要です。

早期発見や対策が進行を遅らせる上で有益であるため、定期的な認知機能検査が求められます。

 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせることが可能な病気であるとされています。

 

そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。

MCI段階で発見すれば進行を抑制できる

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

 

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

 

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

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