40代という中年期に突入すると、忘れっぽくなったり、周囲の方から物忘れを指摘されることが増えたと感じる方が多いのではないでしょうか。
物忘れは、自然な加齢の一部とされる一方で、若年層でも発症する認知症などの病気の兆候である可能性も考えられます。
今回は、40代における物忘れの原因や対策について詳しく解説していきます。
物忘れとは
物忘れとは、短期的または長期的な記憶の喪失や情報の再生が困難になる状態を指します。特に日常生活において、忘れっぽさや注意散漫が頻繁に見られる場合、これが物忘れとされます。
物忘れは、加齢とともに一般的に見られる現象であり、多くの場合、自然な老化過程の一部として考えられます。しかし、40代から始まる女性の更年期においては、ホルモンバランスの変化が原因で物忘れが顕著になることがあります。
物忘れの症状には以下のようなものがあります。
・他人に言われたことを忘れる
・言葉が出てこない
・物をどこに置いたか忘れる
・予定を忘れる
・電話番号やパスワードを忘れる
・昨日食べたものを思い出せない
・同じ質問を何度も繰り返す
・物語や映画の内容を思い出せない
・道順を忘れる
・知り合いの名前を忘れる
さらに、物忘れはアルツハイマー型認知症やその他の認知症の初期症状である可能性があります。
認知症は、記憶だけでなく、判断力や思考能力にも影響を与える進行性の脳疾患です。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症などの種類があり、それぞれ異なる原因によって脳に継続的な損傷を引き起こすと言われています。認知症は、生活の質を著しく低下させる可能性があるため、早期発見と適切な対応が重要とされています。
一方で、可逆的な原因による物忘れも存在します。例えば、ビタミンB12欠乏症、甲状腺機能低下症、睡眠障害、ストレスやうつ病などが挙げられます。
以上のことから、物忘れが単なる老化の一部なのか、それともより深刻な健康問題の兆候なのかを見極めることが重要です。特に、日常生活に支障をきたすような物忘れが頻発する場合は、早期に専門医の診察を受けることが推奨されます。
出典:Mayo Clinic: Memory loss: When to seek help
出典:National Institute on Aging: Memory Problems, Forgetfulness, and Aging
40代になると物忘れが増える理由
40代に物忘れがひどくなる背景には、生活習慣やストレス、更年期、加齢、さらには他の病気が潜んでいる可能性など、さまざまな要因が関係しています。
ここでは、40代で物忘れが増える理由を5つに分けて詳しく解説します。
① 生活習慣
40代に入ると、過度な飲酒や不健康な食生活、運動不足といった生活習慣が物忘れに影響を及ぼすことがあります。
例えば、過度な飲酒は脳の神経細胞にダメージを与え、記憶力の低下を引き起こす可能性があります。
また、メタボリックシンドローム(メタボ)は脳血流を悪化させ、認知機能の低下を招くことが知られています。
生活習慣を改善することで、物忘れを予防し、脳の健康を保つことができるとされています。
② ストレス
ストレスは物忘れの大きな原因の一つです。
長期的なストレスは、脳の海馬と呼ばれる記憶を司る部分に悪影響を与えると言われています。
ストレスが慢性化すると、コルチゾールというホルモンが過剰に分泌され、これが神経細胞にダメージを与え、記憶力の低下を引き起こす可能性があります。
40代は仕事や家庭の責任が増える時期でもあり、適切なストレス管理が重要です。
ストレスによる物忘れについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
③ 女性の更年期
女性の場合、40代から50代にかけて更年期に突入し、エストロゲンの減少が脳機能に影響を与えることがあります。
エストロゲンは神経細胞の健康を保つ役割を果たしており、その減少は記憶力の低下や集中力の減少につながることが考えられています。
ホルモン療法や生活習慣の改善が効果的であることが示されています。
更年期の物忘れについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
④ 加齢
加齢もよく知られている物忘れの一因とされています。
人間は、年齢を重ねるにつれて、脳の容量が減少し、神経細胞の働きも低下します。
これにより、新しい情報の記憶が難しくなり、過去の情報を引き出す能力も衰えることがあると考えらえています。
ただし、全ての人が同じように記憶力が低下するわけではなく、個人差があるといわれています。
⑤ 他の病気が潜んでいる可能性
物忘れがひどくなる背後には、他の病気が隠れている場合もあります。
例えば、甲状腺機能低下症やビタミンB12の欠乏症、さらにはうつ病などが記憶力に影響を与えることがあります。
これらの病気は診断と治療が可能であり、適切な治療を受けることで物忘れの改善が期待できます。
出典:John Hopkins Medicine: Early-Onset Alzheimer's Disease
このように、40代で物忘れがひどくなる理由は多岐にわたります。
生活習慣の改善やストレス管理、更年期対策、加齢による変化への理解、そして他の潜在的な病気のチェックを行うことで、物忘れを効果的に対処することができます。
40代における物忘れの深刻度を自己チェック
40代の物忘れが気になる方は、以下のチェック項目を通じて、自分自身の物忘れの程度を確認してみてはいかがでしょうか。
自己チェックを通じて、必要に応じて適切な対策を取ることが重要です。これらの項目は、医療機関での相談を検討する際の目安にもなります。
▢ 同じ質問を何度も繰り返すことが増えた。
▢ よく知っている場所で道に迷う。
▢ 重要な予定や日常の指示を忘れてしまうことが増えた。
▢ 日付や季節の認識が曖昧になる。
▢ 鍵や財布など、日常的に使う物の置き場所を頻繁に忘れる。
▢ 特定の言葉や名前が思い出せず、会話が途切れることが増えた。
▢ 会話の内容を繰り返す。
▢ 以前は簡単にできた日常的な作業に時間がかかるようになった。
▢ 集中するのが難しくなり、注意散漫になることが増えた。
▢ 特に理由もなく気分が変わりやすくなったり、行動が変わることがあるか。
▢ 新しく知り合った人の名前を覚えるのが難しいと感じる。
▢ 普段使っている道具の使い方を忘れてしまうことがあるか。
▢ 職場での業務効率が以前に比べて低下していると感じる。
▢ 些細なことでも判断に迷うことが増えた場合。
▢ 友人や家族との集まりを避けるようになったか。
以上のチェック項目に複数該当する場合や物忘れが生活に支障をきたすようであれば、早めに医療機関に相談することをおすすめします。
専門家による診断と適切な治療を受けることで、記憶力の低下を管理し、生活の質を向上させることができます。
40代の物忘れへの対策
40代の物忘れは他の年代の方と同様に、生活習慣の見直しで物忘れを予防し、脳の健康を保つことが可能です。
以下に、具体的な物忘れの対策を紹介します。
運動習慣をつくる
運動は、物忘れの対策だけではなく、脳の健康を維持するために非常に重要とされています。
定期的な運動は、脳への血流を増加させ、認知機能を改善し、ストレスを緩和する効果があるといわれています。
一般的に、毎週150分の中等度の有酸素運動(ウォーキングやサイクリングなど)や、筋力トレーニングを週に数回行うことが、総合的な健康を維持すると考えられています。
食事の改善
バランスの良い食事は、物忘れの対策になります。特に、地中海食が認知機能の低下を防ぐ効果があるとされています。
魚や野菜を多く摂り、塩分、糖分、脂質を過剰摂取しないことが推奨されます。また、加工食品を避け、自然な食材を使った食事を心掛けることも重要です。
飲酒は適度に抑えることが推奨されており、アルコールは脳にダメージを与える可能性があるため、控えめにすることが望ましいです。
脳を鍛える
脳を鍛える活動を日常生活に取り入れることも、物忘れの予防に効果的です。
例えば、パズルやゲームなどの脳トレは、脳の神経ネットワークを強化する効果があります。
また、読書や新聞を読むことで、新しい情報を吸収し、記憶力を高めることができます。
さらに、新しい映画やドラマを観る、新しい場所に訪れるといった活動も、脳に刺激を与えるため効果的です。
旅行に行くこと、新しい趣味などに挑戦することも、脳の健康を維持するために有効です。
人と交流する
社会的な交流は、物忘れや認知機能の低下を防ぐ上で重要な役割を果たします。
友人や家族と過ごす時間を大切にし、外出して人と交流することで、精神的な健康も向上します。
社会的な活動に参加することで、孤独感を減らし、脳の健康を保つことができます。コミュニティイベントやクラブ活動に参加することも、脳へ良い刺激となります。
40代の物忘れが認知症に繋がる可能性について
40代で物忘れが増えることは、多くの人にとって一般的な現象ですが、生活習慣の改善を怠ると、将来的に認知症を発症するリスクが高まる可能性があります。
認知症は一度発症すると、現代の技術では完治が難しいとされている一方、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせる可能性がある病気とされています。
そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。
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MCI段階で発見すれば進行を抑制できることも
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割程度の方は1年以内に認知症へと進行すると言われています。
一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。
つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。