うつ病による物忘れの特徴とは?治るの?チェック方法や対処法を解説

 

うつ病は、誰しもが罹患する可能性がある心の病気とされています。

 

主な症状は気分の落ち込みとされていますが、うつ病は奥が深く、人間の様々な機能に影響を及ぼすと考えられています。

 

特に、うつ病が物忘れを増加させる可能性については、あまり知られていないかもしれません。

 

今回の記事では、うつ病による物忘れの特徴やチェック方法などについて詳しく解説します。

 

うつ病や物忘れの症状が気になる方に役立つ情報を提供できれば幸いです。

 

 

物忘れとは

物忘れとは、日常生活に支障をきたさないレベルの記憶障害を指します。

 

具体的には、最近の出来事を一時的に忘れること、仕事でうっかりミスをすること、最近初めて会った人の名前を思い出せないことなどが例として挙げられます。

 

物忘れは誰にでも経験することですが、年齢と共にその頻度が増加すると言われています。

 

しかし、中には認知症などの病気が潜んでいる可能性があると考えられています。

 

ハーバード大学医学大学院のまとめによると、物忘れの4大原因は、ストレスうつ病睡眠不足不安と示されています。

 

出典:The four horsemen of forgetfulness

 

うつ病とは

うつ病とは、長期的な心身のエネルギー低下を引き起こす気分障害を指します。

 

厚生労働省によると、日本におけるうつ病の生涯有病率は約6.6%と推測されています。

 

症状には、強いうつ気分食欲障害睡眠障害疲れやすさ興味の喪失などがあるとされています。

 

うつ病の原因は、職場や家庭でのストレス、喪失体験、慢性的な病気、精神疾患など、患者によって原因が異なると考えられています。

 

さらに、うつ病が深刻化すると、自ら命を断つような事態に至る可能性もあるため、迅速な治療が推奨されています。

 

うつ病を治療するには、薬物療法と十分な休養が主に重要とされ、これらによって長期的な回復が期待できると考えられています。

 

出典:厚生労働省「うつ対策推進方策マニュアル-都道府県・市町村職員のために-」

 

うつ病と物忘れの関係

では、うつ病と物忘れの間にはどのような関係があるのでしょうか?

 

物忘れは、うつ病によって引き起こされる可能性があると研究で示唆されています。

 

アメリカ国立医学図書館が公開した2014年と2018年の研究では、うつ病と物忘れの間に強い関連性があることが報告されています。

 

うつ病による集中力の低下が記憶力の減退を招き、物忘れの頻度が高まる可能性が考えられていますが、その明確な原因はまだ明らかにされていません。

 

さらに、うつ病の治療薬が物忘れを引き起こす可能性も指摘されています。

 

2016年の研究では、うつ病の治療薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)が物忘れを悪化させる可能性が示唆されています。

 

出典:Symptoms of depression in a large healthy population cohort are related to subjective memory complaints and memory performance in negative contexts

 

出典:Cognitive impairment in depression: a systematic review and meta-analysis

 

出典:Cognitive Function before and during Treatment with Selective Serotonin Reuptake Inhibitors in Patients with Depression or Obsessive-Compulsive Disorder

 

うつ病による物忘れの特徴とは

うつ病による物忘れの具体的な特徴として、新しい情報を覚えることが困難になることがあるとされています。

 

具体的には、読書や新聞で得た知識、最近の出来事や頼まれごと、約束事などを忘れがちになることなどが増えるようです。

 

また、うつ病による物忘れは、注意力や判断力の低下も特徴とされています。

 

本や会話の内容が頭に入らなかったり、優柔不断になりやすくなると言われています。

 

うつ病のチェック方法

厚生労働省が設定したうつ病のチェック項目を以下にまとめました。

 

うつ病の自己チェックは自分自身が気付く変化周囲のチェックは周囲にいる人々が気付く変化を意味します。

 

これらの症状が2週間以上、ほぼ毎日続く場合は、うつ病が疑われると考えられています。

 

自己チェックと周囲チェックを参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

自己チェック

☑ 憂鬱、沈んだ気分

☑ 好きなことが楽しめなくなった

☑ だるい、疲れやすい

☑ 意欲、集中力の低下を自覚している

☑ 食欲がなくなる

☑ 寝つきが悪いのに、早く目が覚める

☑ 自分は価値のない人間だと思う

☑ 人に会いたくなくなる

 

周囲のチェック

☑ 以前と比べ、表情が暗く元気がない

☑ 体調不良の訴えが多くなる

☑ タスクの効率が低下、ミスが増える

☑ 周囲の人との交流を避けるようになった

☑ 遅刻、早退、欠勤が多くなる

☑ 趣味や外出をしなくなる

☑ 飲酒量が増える

 

これらの項目がご自身、もしくは周囲の方々にいくつか当てはまる場合は、早急に専門医に相談することが推奨されています。

 

出典:厚生労働省「うつ対策推進方策マニュアル-都道府県・市町村職員のために-」

 

うつ病による物忘れの対処法

 

うつ病による物忘れは、病気の治療を徹底するとともに、物忘れへの具体的な対処法を取り入れることで改善することが可能とされています。

 

ここでは、うつ病による物忘れに悩む方々へ向けて、効果的な対処法をいくつか提案します。

 

適切な治療を受ける

うつ病の治療は、物忘れを含む多くの症状を改善する鍵となります。

 

全体として、うつ病の治療は定期的な診察薬物療法カウンセリング、適切な睡眠休息を心掛けることが重要です

 

医師による薬物療法やカウンセリングなどは、うつ病の原因となる体内の化学的なバランスを正し、症状を軽減させると言われています。

 

また、十分な休養は脳の回復と気分の切り替えに効果的なため、長期的な休養を取ることや、仕事や学業を一時中断することが必要な場合があるとされています。

 

メモをとる習慣を身につける

物忘れの対処法として、日常生活での物忘れや忘れ物を防ぐためには、メモを取る習慣を身につけることが有効とされています。

 

例えば、スマホのメモアプリ手帳を活用して、日々の予定や重要な情報を常に目に付く場所に記録することが効果的です。

 

大切な情報をメモすることで、情報が視覚的に記録され、思い出す際の助けとなります。また、このメモを取る行為自体が記憶力のトレーニングにもなるとされています。

 

健康的な生活習慣を維持する

良い睡眠バランスの取れた食事、適度な運動は、うつ病の症状全般に良い影響を及ぼします。

 

特に運動は、脳の健康を促進し、記憶力を向上させる効果があると考えられています。

 

また、パズルやクイズ、読書などの脳を刺激する活動は、認知機能を維持し、改善するのに役立ちます。

 

さらに、没入できる趣味や、ボランティアなどの社会活動は、気分を高め、社会的なつながりを保ちながら脳を活性化させます。

 

定期的な運動習慣の確立、趣味や社会活動への参加を通じて、健康的な生活を送ることがうつ病の改善において推奨されています。

 

これらは一般的な対処法ですが、個々の状況に合わせた最適な治療法や対処法については、医療専門家の意見も参考にすることが重要です。

 

20代、30代、40代のうつ病による物忘れについて

うつ病は、20代、30代、40代の若者から中年層にかけて罹患しやすいとされています。

 

これらの年代においては、キャリア形成、家庭生活、人間関係、社会的責任などによるストレスが原因と考えられています。

 

そのため、うつ病による気力の低下とともに、物忘れの症状も引き起こされやすいとされています。

 

さらに、うつ病の病歴がある場合、物忘れの症状が持続する可能性が考えられています。

 

2019年に発表された長期研究では、20代にうつ病の症状があったグループは、50代になると物忘れが顕著になると示唆されています。

 

出典:Longitudinal associations of affective symptoms with mid-life cognitive function: evidence from a British birth cohort

 

高齢者のうつ病による物忘れは認知症のサイン?

 

若年層や中年層の方と異なり、高齢者のうつ病による物忘れは、認知症のサインである可能性があります。

 

これは、認知症の患者がうつ状態になりやすいこと、そして高齢のうつ病患者が記憶障害の症状を重く発症しやすいことに起因するとされています。

 

認知症は現在において、根本的な治療法が存在せず、一度発症すると症状は生涯にわたって進行し続けます。

 

そのため、自分自身や身近な高齢者が認知症やうつ病を発症している可能性がある場合は、早急に医療機関での複合的な診断を受けることが重要です。

 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせられる可能性のある病気とされています。

 

そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。

 

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MCI段階で発見すれば進行を抑制できる

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

 

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。

 

一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

 

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

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