軽度認知障害(MCI)と認知症の違いとは?症状、原因、予防法などを詳しく解説

家族や周囲の人が最近、物忘れが増えたと感じたことはありますか?

 

一般的に言われる物忘れは通常の老化現象の一部とされますが、それが軽度認知障害(MCI)や認知症の初期段階である可能性も考えられます。

 

これら二つの状態は混同されやすいため、両者の違いを理解することが重要です。

 

この記事では、軽度認知障害と認知症の違いや、症状、原因、予防法などについて徹底解説していきます。

 

 

軽度認知障害(MCI)と認知症の違いについて

まず、軽度認知障害(MCI)と認知症は、どちらも高齢者に一般的に見られる認知障害ですが、その症状、原因、そして日常生活への影響の程度において明確な違いがあるとされています。

 

以下に、MCIと認知症の主な違いを表に示しました。

 

MCIの患者は通常、認知機能の低下があっても、請求書の支払いや食事の準備など、いくつかの複雑なタスクを独立して行うことが可能です。

 

これに対し、認知症の初期患者は基本的な自己管理が可能でも、仕事や趣味、社会活動など、より複雑な日常活動に支障が出やすいとされています。

 

さらに、MCIとは異なり、認知症は進行に伴い、記憶、判断力、言語能力、注意力など多岐にわたる認知機能が悪化することが一般的です。

 

軽度認知障害(MCI)の基本と認知症になるリスク

軽度認知障害は、加齢に伴う一般的な認知機能の変化と認知症の初期段階との中間に位置します。この状態の人々は、日常生活をほぼ自立して送りながらも、特に記憶力の低下が見られます。

 

軽度認知障害(MCI)の概念・定義には、さまざまなものがありますが、現在でも特に広く用いられている定義の一つとして、1995年頃にMayo clinicのPetersenらが提唱した定義があります。

 

Petersenらによる定義は以下のようになっています。

 

<Petersenらによる軽度認知障害(MCI)の定義>

・加齢の影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。

・本人または家族による物忘れの訴えがある。

・全般的な認知機能は正常範囲である。

・日常生活動作は自立している。

・認知症は認められない。

 

Petersenらによる軽度認知障害(MCI)の定義では、特に「記憶障害」「もの忘れ」といった認知機能障害が指摘されています。

 

しかし、軽度認知障害(MCI)による認知機能障害は記憶障害に限らないとして、2003年のMCI Key symposiumにて以下のような新たな診断基準が提唱されました。

 

<2003年に提唱された軽度認知障害(MCI)の新たな診断基準>

・本人や家族から認知機能低下の訴えがある。

・認知機能は正常とは言えないものの認知症の診断基準も満たさない。

・複雑な日常生活動作に最低限の障害はあっても、基本的な日常生活機能は正常である。

 

軽度認知障害は主に二つの種類、「健忘型MCI」と「非健忘型MCI」に分けられます。軽度認知障害(MCI)の症状の中でも、記憶力の低下が主たる症状としてある場合は『健忘型MCI』、判断力・注意力といった記憶力以外の認知機能に障害がみられる場合は、『非健忘型MCI』に分類されています。

 

さらに、アメリカのある研究によると、軽度認知障害の患者の中で、年間約7.1%が認知症に進行するリスクがあると示されています。このデータは、認知機能が正常な人々における認知症の進行率、0.2%より高い数値とされています。また、MCIの患者が認知症を発症するリスクは、特に複数の認知領域に障害が見られる場合に高まることが示されています。

 

出典:Mild Cognitive Impairment and Mild Dementia: A Clinical Perspective

 

軽度認知障害(MCI)の症状

軽度認知障害(MCI)の症状は、日常生活に大きな支障を来さないものの、記憶力や思考能力に軽度の問題が生じるとされています。

 

他にも、軽度認知障害(MCI)の症状は、通常の加齢に伴う認知機能の低下、うつ病や統合失調症などの症状と類似しているため、軽度認知障害(MCI)の初期症状にいち早く気づいて、しっかりと区別する必要があります。

 

軽度認知障害(MCI)の症状には、以下のようなものがあります。

 

短期記憶の喪失

→ 新しい情報をすぐに忘れる。

→ 朝食べたものを思い出せない。

→ 重要な日程(例:医者の予約や家族行事)を忘れる。

失語

→ 会話中によく言葉が出てこない。

→ 複雑な文を構築するのが難しくなる。

→ 他人の話を理解するのに時間がかかるようになる。

判断力の低下

→ 普段は簡単な選択(例:着る服や食べるメニュー)が決められない。

→ 金銭管理が難しくなる(例:出費が適切かどうかの判断がつかない)。

→ 日常的な問題解決が遅く、非効率になる。

計画の困難

→ 日々の家事スケジュール(洗濯や掃除の計画)の立案が難しくなる。

→ 買い物リストを作ることが一苦労になる。

→ 長期的な計画(例:旅行やイベントの準備)を立てることが困難になる。

 

一般的に歳を重ねるにつれて認知機能の低下がみられますが、生理的な老化現象と認知症による認知機能の低下との違いを知らなければ、認知症によるもの忘れを老化が原因だと見過ごしてしまい、適切な対応が行えないまま認知症が進行していく可能性があるとされています。

 

いち早く気づいて適切な対応をするためにも、両者の違いを把握しておくことは大切です。

 

そこで、軽度認知障害と認知症における症状の違いも以下で確認しておきましょう。

 

 

軽度認知障害(MCI)の原因

軽度認知障害(MCI)の発症原因は多岐にわたりますが、主に高齢者に見られる認知症は、アルツハイマー型認知症脳血管疾患、およびレビー小体型認知症が、主な種別とされています。

 

特に65歳以上の高齢者において、アルツハイマー型認知症は最も一般的であり、記憶障害が初期段階で顕著に現れます。この状態は、脳内のアミロイドプラークと神経原線維の変化によって進行し、認知機能の低下を引き起こすと考えられています。

 

一方、脳血管疾患による影響は、脳の血管が損傷されることで発生し、無症候性脳梗塞や広範囲の白質変性が認知機能に影響を与えることがあると言われています。

 

さらに、レビー小体型認知症は認知障害とパーキンソン症状、睡眠障害、性格変化を特徴とし、非健忘型MCIの典型例として知られています。

 

これらの疾患は進行性であり、発症後は認知機能の悪化が予測されています。

 

さらに、生活習慣や遺伝的要因もMCIの発症に大きな影響を与えることが認められています。

 

例えば、高血圧、高コレステロール、糖尿病などの循環器疾患は脳の健康に悪影響を及ぼし、MCIのリスクを増加させる可能性があります。遺伝的には、アポリポプロテインE(APOE)ε4アレルの存在がアルツハイマー病のリスクを高めると広く認められています。

 

出典:Alzheimer's Disease: Unraveling the Mystery

出典:Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies

 

軽度認知障害(MCI)リスクが高い人の10の特徴

特定のリスク項目に当てはまる人々が軽度認知障害(MCI)を発症しやすいこと言われています。

 

以下は、MCIになりやすい人の特徴を示す10のリスク項目です。

 

1. 高齢者: 特に70歳以上

2. 遺伝的要因:親族の認知症発症歴

3. 心血管疾患: 高血圧や心臓病等

4. 糖尿病: 特に管理が不十分な場合

5. 不健康な生活習慣: 喫煙や過度のアルコール摂取、不健康な食生活など

6. 低い教育水準

7. 社会的孤立: 繋がりが少ない、強い孤立感

8. うつ病や長期的なストレス

9. 睡眠障害: 睡眠時無呼吸症候群など

10. 頭部外傷

 

これらのリスクを警戒することで、軽度認知障害(MCI)の予防になります。

 

特にリスクが高い場合、必要に応じて専門医との相談が推奨されています。

 

軽度認知障害(MCI)のチェック項目

次に、MCIの可能性があるかどうかを見分けるための主要なチェック項目について解説します。

 

出来るだけ早い段階で軽度認知障害(MCI)に気付いて改善につなげるためにも、自分自身の認知機能の状態を把握しておくことが大切とされています。

 

下記のチェック項目で、自分自身の認知機能の状態を確かめてみましょう。

 

 ☑ 最近の出来事や会話を思い出すのが難しい

 ☑ 同じ質問を繰り返すことが多い

 ☑ 約束や予定を忘れることが増えた

 ☑ 会話中に適切な言葉が思い浮かばない

 ☑ 名前や簡単な単語を思い出すのに時間がかかる

 ☑ 複数の物事を同時に進めることが難しい

 ☑ 話を聞いている最中に集中力を保てない

 ☑ 日常の判断を下すのが以前よりも難しくなった

 ☑ 簡単な決断を下すのにも長い時間がかかる

 ☑ 物の位置や距離が正確につかめない

 ☑ よく道に迷うようになった

 ☑ 以前よりイライラしやすくなった

 ☑ 外出や人付き合いが億劫になってきた

 

このチェック項目は軽度認知障害(MCI)や認知症の診断を行うものではなく、あくまでご自身の認知機能の状態を確認するためのリストです。

 

チェック項目にいくつか当てはまった方で、認知機能の低下が気になる場合は、専門の医療機関の受診を推奨します。

 

軽度認知障害(MCI)の診断方法と治療法

軽度認知障害の診断過程は、患者自身や家族からの詳細な報告に基づいて行われます。

 

患者の記憶や思考に関する具体的な情報を収集した後、モントリオール認知評価(MoCA)短時間精神状態評価(STMS)などの神経心理学的テストを用いて認知機能を評価する場合が多いとされています。

 

これらの専門的な検査は、通常の問診より正確に認知障害を特定し、その程度を測定するために役立つと言われています。

 

現在、MCIのための特定の薬物治療は承認されていませんが、軽度認知症の場合、コリンエステラーゼ阻害剤が使用される場合があります。

 

ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンといった薬剤は、アルツハイマー病に伴う軽度認知症の症状進行を遅らせる効果が報告されています。また、2023年にはレケンビというアルツハイマー型の軽度認知障害及び軽度認知症を対象とした治療薬が承認され、発売が始まっています。

 

しかし、MCIに対する治療は、生活習慣の改善や身体活動、社会参加、精神的活動を促進する支援に主眼を置かれており、これらの介入方法により、MCIの早期発見と適切な介入が患者の生活の質を維持し、認知機能のさらなる低下を遅らせることが期待されています。

 

出典:Mild Cognitive Impairment and Mild Dementia: A Clinical Perspective

 

軽度認知障害(MCI)と認知症の予防法

軽度認知障害(MCI)を予防することは、認知症への進行を遅らせるためにも重要です。

 

日常生活に取り入れることができる予防策は、MCIのリスクを低減させるだけでなく、全般的な健康維持にも繋がります。

 

以下に、効果的であるとされる軽度認知障害の予防法をいくつか紹介します。

 

① 適度な運動

週に150分の中強度の有酸素運動(速歩、水泳など)

筋力トレーニングを週に2回行う(例:軽いウェイトリフティング)

② 健康的な食事習慣

地中海式ダイエット(果物、野菜、全粒穀物、オリーブオイル、魚介類)

加工食品や糖質の多い食品の摂取を控える

③ 脳のトレーニング

パズルや作文、読書などの頭を使う趣味

新しいスキル(言語学習、楽器演奏など)の習得に挑戦

④ 社会的交流

家族や友人との定期的な交流を維持

クラブや地域活動への参加

⑤ 定期的な健康チェック

年に1度の健康診断で血圧、コレステロール、糖尿病のチェックを行う。

必要に応じて認知症の専門医による認知症の診断・検査を受ける。

 

🔰 認知機能検査を実施しているお近くの医療機関は、「認知機能セルフチェッカー」を導入している医療機関リストからお探しください。

 

これらの予防策を実施することで、軽度認知障害と認知症のリスクを低減し、健康な脳を維持する効果が期待されます。

 

軽度認知障害(MCI)の早期発見には定期検査が重要

認知症の発症を防ぐもしくは遅らせるには、認知症の前段階とされている軽度認知障害(MCI)の早期発見及び、生活習慣病因子の改善といったような対策をとることが重要であるとされています。

 

そして、軽度認知障害(MCI)による認知機能の低下を早期発見するためには定期的な認知機能検査を受けることが重要です。

 

軽度認知障害(MCI)は健常な状態と認知症の間にあるグレーな状態のため、症状の度合いも様々です。

 

認知症に進行する場合もあれば健常な状態に回復する可能性もあるため、定期的な認知機能検査を通して、日常的に自分自身の認知機能の状態を把握しておくことが重要です。

 

認知機能検査はどこで受けられるのか

認知機能検査を受けたことがない方の中には、「どこの病院に行けばいいのか分からない」「何科を受診すればいいのか分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。

 

日常生活の中で、最近もの忘れが増えてきたと自覚している方や、そのご家族が困っている場合、まずはお近くのかかりつけ医を受診されることをおすすめします。

 

認知機能検査を受ける際、自分が認知症であることを認めたくない、もしくは周囲から頻繁にもの忘れを指摘されることで自尊心が傷つくなどの心理的な理由で、受診を拒否することも多いようです。

 

その場合、かかりつけ医であれば、普段からの信頼関係があり、認知症専門医に比べて受診のハードルも低く、安心して病院を受診できるのではないでしょうか。

 

最近では、認知症サポート医として研修を受けた、認知症専門ではない医師が認知症の診療にあたっているケースもあるようです。

 

かかりつけ医での診療・検査が難しい、かかりつけ医がいない等の理由で、お近くの専門医療機関をお探しの場合は、以下の日本認知症学会や日本老年精神医学会のホームページから、お住まいの地域にある認知症の専門医療機関を探してみてはいかがでしょうか。

 

【日本認知症学会】

全国の認知症専門医リスト

 

【日本老年精神医学会】

こころと認知症を診断できる病院&施設検索

 

【公益社団法人 認知症の人と家族の会】

全国もの忘れ外来一覧

 

ただし、大学病院や認知症疾患医療センターなどの規模の大きい病院では、紹介状が必要となったり、特別料金がかかる場合があるため、あらかじめ「かかりつけ医」を見つけておくことをお勧め致します。

 

また、どの専門医療機関を受診するか迷う場合は、お住まいの地域にある地域包括支援センター等に相談してみることを検討してみてはいかがでしょうか。

 

地域包括支援センターとは、地域の高齢者の健康や福祉に関する相談を受けたり、各々に応じた適切な支援を行う総合相談窓口です。

 

認知症疾患医療センターや認知症初期支援チームなどの関係機関とも連携しているため、相談者に応じた医療機関を紹介してもらうことができます。

 

 

認知機能検査をするなら『認知機能セルフチェッカー』

認知症は一度発症すると健常な状態に戻ることが難しいとされています。

 

ただし、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の段階で適切な介入・治療を行うことで、健常な状態へと回復する可能性があるとされています。そのためには定期的な認知機能検査を通じて、定期的にご自身の認知機能の状態を把握しておくことが重要です。

 

認知機能検査の多くは、検査に時間がかかったり、費用が高額であったりするため、定期的に検査するのが困難な場合がありますが『認知機能セルフチェッカー』なら、口頭や筆記による回答を必要とせず、『視線』のみを用いて、約5分で認知機能低下のリスク評価を行うことができます。

検査時間は約5分・「視線」のみで回答

現在広く用いられている認知機能検査の多くは、15〜20分程度の検査時間がかかり、患者と検査者が一対一で口頭や筆記を用いたやりとりを行うため、両者にとって身体的・心理的負担があるとされています。

 

しかし、『認知機能セルフチェッカー』を利用すれば、口頭や筆記によるやりとりが不要で検査時間約5分で検査を受けることが可能であり、患者様と医療機関双方の負担を軽減して認知機能検査を行うことができます。

 

検査結果はその場ですぐに確認

検査結果は、直ぐに算出され、認知機能低下のリスク評価を行います。

 

記憶力・判断力・言語力・計算力・空間認識力といった認知カテゴリー別に点数を確認することも可能できます。

 

まとめ

この記事では、軽度認知障害(MCI)と認知症の違いについて詳しく解説し、それぞれの症状、原因、そして予防方法についても掘り下げました。

 

MCIと認知症はどちらも高齢者に多く見られる問題ですが、その早期発見と適切な対策を講じることが、症状の進行を遅らせる上で非常に重要です。

 

ご自身やご家族にこれらの症状が見られた場合は、早期に医療機関を受診し、専門の診断を受けることをお勧めします。

 

特にMCIの場合、日常生活における小さな改善が大きな差になるとされており、予防策を行うことは非常に有効であると言われています。

 

小さな生活改善が長期的な健康につながることを意識し、積極的に取り組みましょう。

『認知機能セルフチェッカー』は「自分ひとりで、早く、簡単に」をコンセプトに認知機能低下のリスク評価ができるヘルスケアサービスです。40代以上の健康な方たちを対象に、これまでにない新しい認知機能検査サービスを提供しています。お近くの医療機関でぜひご体験ください。

-認知症の基礎知識, 軽度認知障害(MCI)

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