レビー小体型認知症になる可能性が分かるチェックリスト、診断、予防法について解説

 

レビー小体型認知症は、認知機能の低下や運動障害、幻覚など多様な症状を引き起こす進行性の疾患です。

 

本記事では、レビー小体型認知症の基本的な情報から、自己診断のためのチェックリスト、医療機関での診断方法、そして予防法について詳しく解説していきます。

 

 

レビー小体型認知症とは

レビー小体型認知症は、脳内にα-シヌクレインという異常なタンパク質が沈着することによって引き起こされる認知症の一種です。この沈着物をレビー小体と呼び、これが神経伝達物質のバランスを乱し、思考、運動、行動、および気分に問題を引き起こすとされています。

 

レビー小体型認知症はアルツハイマー病に次いで2番目に多い認知症です。日本での明確な統計はありませんが、米国では100万人以上がこの病気に罹患しているようです。

 

この疾患は進行性で、症状はゆっくりと始まり、時間とともに悪化していくと考えられています。主な症状としては、記憶力の低下、混乱、幻覚、筋肉の硬直、歩行障害などが挙げられます。原因は完全には解明されていませんが、レビー小体の蓄積と神経細胞の喪失が関与していると考えられています。

 

治療法としては、現在のところ根治療法は存在せず、症状を緩和するための薬物療法や非薬物療法が用いられます。薬物療法の中では、アルツハイマー病治療薬であるコリンエステラーゼ阻害剤が、レビー小体型認知症患者の認知機能の改善に役立つと言われています。また、運動症状に対してはパーキンソン病の治療薬が使用されることもありますが、副作用に注意が必要とされています。

 

レビー小体型認知症について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

 

出典:National Institute on Aging: What Is Lewy Body Dementia? Causes, Symptoms, and Treatments

出典:Alzheimer’s Research UK: Dementia with Lewy Bodies Risk Factors

 

レビー小体型認知症のチェックリスト

レビー小体型認知症の初期症状は他の認知症や精神疾患と似ているため、正確な診断が難しいとされています。しかし、早期発見は適切な治療や計画を立てるために非常に重要です。以下のチェックリストを使用して、自分や家族の症状を評価し、必要に応じて医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。

 

【レビー小体型認知症のチェックリスト】

次の質問に対して、「はい」または「いいえ」で答えてください。

 

認知機能の変化

◻ 日常生活に支障をきたすほどの思考力の低下や混乱が見られますか?

◻ 時間や場所の認識が曖昧になることがありますか?

◻ 短期間で注意力や集中力が大きく変動しますか?

◻ 理解力や判断力が低下していると感じますか?

 

視覚的幻覚

◻ 実際には存在しないものが見えることがありますか?(例:人影、動物など)

 

運動機能の変化

◻ 筋肉の硬直や動作の遅れを感じますか?

◻ 歩行時に足を引きずったり、転倒することが増えていますか?

◻ 字を書く際に文字が小さくなったり、乱れることがありますか?

◻ 顔の表情が乏しくなったと感じますか?

 

睡眠障害

◻ 夢を見ているときに身体を動かす、あるいは暴れることがありますか?

◻ 日中の過度な眠気に悩まされることがありますか?

 

行動や気分の変化

◻ 抑うつや無気力、社会的な活動への関心の低下が見られますか?

◻ 幻覚や妄想が現れることがありますか?(例:誰かが自分を監視しているという感覚)

 

自律神経の異常

◻ 立ち上がったときにめまいやふらつきを感じることがありますか?

◻ 体温調節が難しくなることがありますか?

◻ 排尿の問題(頻尿、失禁など)がありますか?

 

出典:Lewy Body Dementia Association: Comprehensive LBD Symptoms Checklist

 

このチェックリストの質問に対して「はい」が多い場合、レビー小体型認知症の可能性があると考えられます。

 

しかし、このチェックリストはあくまで自己診断のためのものであり、正確な診断には医療機関での専門的な評価が必要です。

 

気になる症状がある場合は、早急に医師に相談してください。

 

医療機関でのレビー小体型認知症の診断

レビー小体型認知症の診断は困難であり、特に初期段階では他の認知症や精神疾患と症状が重なることが多いため、誤診されることがあります。しかし、早期診断は適切な医療を受けるために重要です。

 

以下に、医療機関でのレビー小体型認知症の治療までの診断過程について詳述します。

 

初期診断と専門医の役割

レビー小体型認知症の疑いがある場合、まずはかかりつけの医師に相談することが一般的です。かかりつけ医がレビー小体型認知症に詳しくない場合は、専門医(神経内科医、老年精神科医、神経心理学者など)への紹介が推奨されます。専門医の診断は、より正確な評価を提供し、適切な治療計画を立てるために重要です。

 

診断基準と評価方法

レビー小体型認知症の診断は、患者の症状、身体検査、神経学的検査、および各種のイメージング検査に基づいて行われます。診断の際には、以下の症状と特徴が考慮されます。

 

・認知機能の低下(特に注意力や実行機能の変動)

・視覚的な幻覚

・パーキンソン症状(筋肉のこわばり、動作の遅れ、震えなど)

・REM睡眠行動障害(夢を実際に行動に移す)

 

また、家族や介護者からの情報も診断において非常に重要です。患者自身が気づかない症状や変化についての情報を提供することで、診断の精度が向上します。

 

具体的な検査方法

レビー小体型認知症の診断をサポートするために、以下の検査が行われることがあります。

 

ポジトロン断層法(PET)や単一光子放射断層撮影(SPECT):これらの画像技術は、脳内のドーパミン神経の働きが低下している部分を映し出すことができます。

123I-MIBG心筋シンチグラフィ:心臓神経の異常な活動を示します。

睡眠検査:REM睡眠行動障害の確認に役立ちます。

 

これらの精密検査を組み合わせることで、レビー小体型認知症の診断が行われます。

 

レビー小体型認知症の早期診断は、患者とその家族にとって非常に重要です。適切な医療を受けることで、症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させられる可能性があります。

 

また、診断が早期に行われることで、患者自身や家族が将来の医療や法的・財政的な手続きを計画する時間を確保することができます。

 

レビー小体型認知症の予防法

レビー小体型認知症は、現時点で完全に予防する方法は確立されていません。しかし、いくつかの研究によって、リスクを低減させる可能性のある生活習慣や健康管理法が示唆されています。

 

以下に、レビー小体型認知症の予防に役立つと考えられる方法を説明していきます。

 

1. 身体活動と運動

定期的な身体活動や運動は、脳の健康を維持し、レビー小体型認知症のリスクを低減させる可能性があります。ウォーキングやジョギング、水泳、ヨガなどの運動が推奨されます。特に、週に少なくとも150分の中等度の有酸素運動が効果的とされています。

 

2. バランスの取れた食事

健康的な食事もレビー小体型認知症のリスクを減らす要因となります。地中海式食事法やDASHダイエット(高血圧防止食事法)は、心臓血管の健康を保ち、脳の機能をサポートするために推奨される食事法です。これらの食事法には以下のポイントがあるとされています。

 

・多量の果物と野菜

・全粒穀物

・健康な脂肪(オリーブオイルやナッツなど)

・魚や家禽

・赤身肉や加工食品の摂取を控える

 

3. 脳を刺激する活動

脳を活性化させるための活動も、レビー小体型認知症の予防に役立つと考えられています。読書、パズル、クロスワード、ボードゲーム、楽器演奏、新しいスキルの習得など、認知機能を刺激する活動を日常生活に取り入れることが推奨されます。

 

4. 社会的なつながり

社会的な活動や交流も、レビー小体型認知症のリスクを低減させる重要な要素です。友人や家族との交流、コミュニティ活動への参加、ボランティア活動など、社会的なつながりを維持することが脳の健康に寄与します。

 

5. 慢性疾患の管理

高血圧、糖尿病、高コレステロールなどの慢性疾患は、レビー小体型認知症のリスクを増大させる要因となります。これらの疾患を適切に管理することで、認知症のリスクを低減させることが可能です。定期的な健康チェックと医師の指導に従った治療が重要です。

 

6. 禁煙と節酒

喫煙は脳の健康に悪影響を及ぼし、レビー小体型認知症のリスクを高める可能性があります。禁煙することで、脳の健康を守ることができます。また、アルコールの摂取は適量に抑えることが推奨されます。過度の飲酒は認知症リスクを増大させる可能性がありますが、適度な飲酒は脳の健康をサポートする場合もあります。

 

7. 睡眠の質の向上

質の良い睡眠もレビー小体型認知症の予防に役立つと考えられています。睡眠障害がある場合は、医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。また、定期的な睡眠スケジュールを維持し、寝室環境を整えることも効果的です。

 

これらの予防法を実践することで、レビー小体型認知症のリスクを低減させ、脳の健康を維持する可能性があります。しかし、これらはあくまでリスク低減のための方法であり、完全な予防法ではないことを理解することが重要です。

 

出典:National Institute on Aging: What Is Lewy Body Dementia? Causes, Symptoms, and Treatments

出典:Alzheimer’s Research UL: Dementia with Lewy Bodies Risk Factors

出典:National Library of Medicine: Risk factors for dementia with Lewy bodies

 

レビー小体型認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

レビー小体型認知症等の認知症は、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせる可能性がある病気とされています。

 

そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。

 

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MCI段階で発見すれば進行を抑制できることも

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

 

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割程度の方は1年以内に認知症へと進行すると言われています。

 

一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

 

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

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-レビー小体型認知症

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