認知症は、高齢者に多く見られる疾患の一つであり、脳の機能が徐々に低下するために、記憶力や思考力が低下し、身体機能にも影響を与えます。
認知症患者の中には、同じ話を何度も繰り返すことがあるため、家族や介護者にとってはストレスとなる場合もあります。
しかし、同じ話を繰り返す認知症患者に対して、適切なコミュニケーションをとることが大切です。
本記事では、認知症患者が同じ話を繰り返す理由や、それに対する適切な対処法について解説します。
認知症とは何か?
認知症とは、脳の機能が徐々に低下することによって、記憶や思考、判断力などの認知能力に障害が起こる状態を指します。
主に高齢者に見られますが、若年性認知症も存在します。
認知症には、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、血管性認知症など、種類があります。
認知症は徐々に進行していくため、本人や家族にとって生活に大きな影響を与える病気です。
認知症になると同じ話を繰り返す理由
認知症になると同じ話を繰り返す理由には、いくつかの要因が考えられます。
まず一つ目は、脳の障害によって長期記憶から情報を取り出せなくなることが挙げられます。
認知症の患者は、過去に経験した出来事や話を忘れてしまうため、同じ話を何度も繰り返すことで、自分自身にとって重要な情報を思い出し、自己安心を得ることがあります。
二つ目は、情報の整理や処理が困難になることです。
認知症の患者は、情報を整理する能力が低下しているため、話の内容を整理して新しい話題に移ることが難しくなります。
そのため、同じ話を何度も繰り返すことで、自分の思考や情報処理能力を確認し、自己安心を得ることがあります。
これらの理由から、認知症の患者が同じ話を繰り返すことは、自己安心を得るための行動であることが多いとされています。
介護者や家族は、相手の気持ちや状況を理解し、受け流す姿勢や、適切なアドバイスやコメントを交えながら話をすることで、相手をサポートすることが重要です。
同じ話を繰り返す場合の対処法
同じ話を繰り返す認知症患者への対処法として、まずは相手の気持ちや状況を理解することが大切です。
その上で、以下のような対処法があります。
繰り返しを受け流す
同じ話を繰り返してしまう認知症患者に対して、適切なアドバイスやコメントを繰り返すことは、相手のストレスを増すことになります。
そのため、同じ話を受け流してあげるような姿勢が大切です。
相手にとって話をすることが自己安心の手段である場合もあるため、そうした繰り返しに適度な対処が必要です。
理解を示す
また、繰り返しの話を受け流すだけではなく、相手の話をしっかりと聞いて、理解を示してあげることも重要です。
話をすることが安心感や安定感を得る手段である場合があるため、相手の気持ちを受け止めることが大切です。
話を聞くことで、相手との信頼関係を築くことができます。
写真や動画を見せる
同じ話を繰り返す場合に、写真や動画を使って思い出を共有することが有効です。
繰り返し話すことで、思い出が深く刻まれていることが多く、それを見ることで安心感を得ることができます。
写真や動画を見せることで、相手の自尊心や自己評価を高めることにも繋がります。
以上のように、同じ話を繰り返す認知症患者に対しては、相手の気持ちや状況を理解し、適切なコミュニケーションをとることが大切です。
繰り返しに対して、受け流す姿勢や理解を示す姿勢を持ち、さらに写真や動画を活用することで、ストレスを軽減し、コミュニケーションを円滑にすることができます。
ただし、認知症によって繰り返しが生じる理由は複数ありますので、個人に合わせた対処法を選択することが大切です。
介護者や医療関係者との協力が必要となる場合もありますので、適切な支援体制を整えることが大切です。
認知症になる前にできる予防策
認知症は、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせられる病気です。
そして、早期発見には定期的に認知機能をチェックすることが重要になります。
MCI段階で発見すれば進行を抑制できる
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。
つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。
認知症患者のケアに必要なこと
認知症患者のケアには、個別の状況に合わせた配慮が必要です。
以下に、認知症患者のケアに必要なことをいくつか紹介します。
コミュニケーションの配慮
認知症患者のコミュニケーションには、言葉の理解力や記憶力が低下している場合があるため、相手に適切な言葉を選んだり、簡潔な表現を心がけることが大切です。
また、相手の気持ちや状況を理解し、受け止めることも必要です。
繰り返しを受け流す姿勢や、理解を示す姿勢が大切です。
安心感を与える環境の整備
認知症患者は、環境が変化したり、家具の配置が変わったりすることで、混乱や不安を感じる場合があります。
そのため、生活リズムや環境を変えすぎないようにすることが重要です。
また、家具の配置を固定する、明るい照明を使う、安定した温度や湿度を保つ、などが挙げられます。
適切なレクリエーションや活動の提供
認知症患者には、適切なレクリエーションや活動を提供することが大切です。
例えば、音楽療法やアートセラピー、手芸や園芸など、認知機能を刺激する活動が有効であるとされています。
また、認知症患者には、定期的な運動が必要とされています。
散歩やストレッチ、軽い体操など、身体に負担がかかりすぎない運動を行うようにしましょう。
安全対策の徹底
認知症患者には、危険な行動をとる場合があります。
例えば、外出を繰り返す、ガスや水道の蛇口を開けっ放しにする、火を使うことが危険であることがあります。
そのため、安全対策を徹底することが必要です。
ドアや窓に鍵をかける、調理器具を使用する場合は介助をする、などが挙げられます。
また、認知症患者が迷子になった場合に備えて、身元の確認ができるようにすることも重要です。
身分証明書のコピーを持ち歩かせる、名前や住所が書かれたタグをつける、スマートフォンのGPS機能を利用する、などが有効な対策です。
定期的な健康管理
認知症患者には、定期的な健康管理が必要です。
認知症は、高齢者に多く見られる疾患であり、糖尿病や高血圧、脳卒中などの合併症を引き起こすこともあると言われています。
そのため、定期的な健康診断や、薬の管理、健康な食生活の管理などを行うことが大切です。
また、認知症患者が口内ケアを怠ることがあるため、定期的な口腔ケアの必要性も指摘されています。
以上のように、認知症患者のケアには、個別の状況に合わせた配慮が必要です。
相手の気持ちや状況を理解し、適切な対応を行うことが大切です。介護者や医療関係者と協力して、適切なケアプランを立て、安心して暮らせる環境を整えることが大切です。