認知症の4つの種類とそれぞれの特徴と、主な症状一覧

認知症は、高齢者を中心に増加する大きな社会問題とされている疾患です。

認知症は、記憶や判断力、言語能力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。

 

その原因や症状は様々で、認知症には複数の種類が存在します。

それぞれの種類には特徴的な症状や進行があり、対処法や治療法も異なります。

 

本記事では、認知症の代表的な種類について詳しく解説し、それぞれの特徴を理解することで、正しい対応や予防策を講じることができるようになることを目指します。

認知症の患者さんやご家族、ケアギバーの方々が、より適切な情報に基づいてサポートできるよう、知っておくべき基本情報をお伝えします。

 

 

 

4種類の代表的な認知症

認知症にはさまざまな種類が存在します。

その中でも、代表的な4種類の認知症について、以下でそれぞれの特徴と症状について解説します。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、最も一般的な認知症であり、全体の約60-80%を占めています。

この認知症は、主に神経細胞の死滅や脳内のタンパク質の異常な蓄積が原因で発症するとされています。

 

アルツハイマー型認知症は通常、65歳以上の高齢者に多く見られますが、若年性アルツハイマー病として40歳代や50歳代に発症するケースもあります。

 


 

アルツハイマー型認知症の主な症状は以下の通りです。

 

  • 記憶障害:特に短期記憶に影響があり、新しい情報を覚えることが難しくなります。
  • 言語障害:言葉を見つけるのが難しくなり、会話が途切れがちになることがあります。
  • 認知機能の低下:判断力や問題解決能力が低下し、日常生活のタスクが困難になります。
  • 時間や場所の認識の喪失:日付や時間を把握できなくなり、自分がいる場所や目的地を見失うことがあります。
  • 失行(apraxia):日常的な動作やタスクを実行する能力が低下します。
  • 失認(agnosia):顔や物の認識が困難になります。
  • 精神的・情緒的な変化:抑うつ、不安、怒り、混乱などの情緒の変化が起こります。

 

レビー小体型認知症

認知症全体の約10-25%程度を占め、2番目に多い認知症です。

主な症状はアルツハイマー型認知症と似ていますが、幻覚やパーキンソン病に似た運動障害が特徴的です。

 

このタイプの認知症は、脳内に異常なたんぱく質であるレビー小体が蓄積されることによって発症します。

アルツハイマー型認知症と同様に、高齢者に多く見られます。

 


 

レビー小体型認知症の主な症状は以下の通りです。

 

  • 記憶障害:短期記憶に影響がありますが、アルツハイマー型認知症ほど顕著ではない場合があります。
  • 注意力や判断力の低下:集中力が維持できなくなり、判断力が低下します。
  • 視覚的な幻覚:特に動物や人間の姿を見ることが多く、時にはこれらの幻覚と会話をすることがあります。
  • パーキンソン病に似た運動障害:筋肉がこわばり、手足の震えやバランスの悪さが現れます。
  • 睡眠障害:夜間の不安や過活動、悪夢などが起こります。
  • 精神的・情緒的な変化:不安、抑うつ、怒り、混乱などの情緒の変化が起こります。
  • 注意力や意識の変動:日によって、またはその日の中でも意識がはっきりしたり、ぼんやりしたりすることがあります。

 

脳血管性認知症

認知症全体の約20%程度を占める3番目に多い認知症で、脳の血管が詰まるか破れることで、脳への酸素や栄養素の供給が不足し、神経細胞が損傷を受けることによって発症します。

リスク要因には高血圧糖尿病喫煙高脂血症などがあります。

 


 

脳血管性認知症の主な症状は以下の通りです。

 

  • 記憶障害:短期記憶や長期記憶に影響がありますが、症状の程度は個人差が大きいです。
  • 集中力の低下:注意力が散漫になり、集中して物事を行うことが難しくなります。
  • 判断力の低下:日常生活に関する判断や計画が困難になります。
  • 歩行障害:歩行が不安定になり、バランスを失って転倒することがあります。
  • 言語障害:話すことや理解することが難しくなることがあります。
  • 情緒の変化:怒りやすくなったり、泣きやすくなることがあります。
  • 尿失禁:尿意を制御できずに失禁することがあります。

 

前頭側頭型認知症

認知症全体の約10%程度を占める4番目に多い認知症で、脳の前頭葉と側頭葉が徐々に萎縮し、神経細胞が損傷を受けることによって発症します。

一般的には60歳前後で発症することが多いとされていますが、若年性の場合もあります。

 


 

前頭側頭型認知症の主な症状は以下の通りです。

 

  • 性格や行動の変化:無関心、無気力、無神経な行動、判断力の低下、社会的ルールの無視などが見られます。
  • 言語障害:言葉を理解したり、話したりする能力が低下します。会話が単調になったり、言葉が減ったりします。
  • 社会的適応力の低下:適切な人間関係の維持が困難になり、他人とのコミュニケーションが難しくなります。
  • 運動機能の障害:筋肉のこわばりや手足の不自由さが徐々に現れますが、他の認知症タイプと比較すると軽度です。
  • 精神的・情緒的な変化:抑うつ、不安、怒り、混乱などの情緒の変化が起こります。

 

これらの他にも、クロイツフェルト・ヤコブ病パーキンソン病認知症アルコール性認知症など、さまざまな種類の認知症が存在します。

 

認知症の診断と治療

認知症の診断と治療は、その種類や症状の程度によって異なります。

適切な診断と治療法を選択するために、以下のステップが一般的に踏まれます。

診断

1.症状の確認と初期評価

患者や家族からの情報収集や、医師による簡単な認知機能テストで、認知症の可能性を評価します。

 

2.詳細な認知機能テスト

神経心理学テストを用いて、記憶、注意、言語能力、視空間認識などの認知機能を詳しく評価します。

 

3.画像診断

MRIやCTスキャンを行い、脳の構造や血流の異常を調べます。

 

4.血液検査

認知症の原因となる栄養素不足や甲状腺機能異常などを確認します。

 

5.神経学的検査

神経学的検査を行い、認知症の原因となる可能性のある神経疾患を評価します。

 

これらの検査を経て、医師は患者の症状や状態を総合的に評価し、適切な認知症のタイプとその原因を特定します。

 

治療

認知症の治療は、症状の緩和進行の遅延を目的として行われます。

現在、認知症を完全に治す治療法は存在しませんが、薬物療法や非薬物療法を組み合わせることで、患者の生活の質(QOL)を向上させることが可能です。

 

薬物療法

薬物療法では、アルツハイマー型認知症の患者に対して、コリンエステラーゼ阻害薬NMDA受容体拮抗薬が処方されることが一般的です。

これらの薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを改善し、認知機能の低下を緩和する効果があります。

ただし、薬物療法の効果は個人差があり、症状によっては効果が限定的な場合もあります。

 

非薬物療法

非薬物療法には、認知症患者の心身の健康を維持するためのさまざまなアプローチが含まれます。

例えば、適度な運動バランスの良い食事良好な睡眠習慣を維持することが大切であるとされています。

また、認知訓練や生活習慣の見直し、リハビリテーションも効果的であるといわれています。

 


 

治療効果を最大限に引き出すためには、医療専門家と密接に連携し、適切なサポートを受けることが重要です。

家族やケアギバーも、患者の状態を理解し、適切な対応やサポートを行うことが求められます。

認知症患者とその家族が、情報や支援を得ることで、より良い生活を送ることが可能になります。

 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、症状の確認と初期評価の段階で、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせることができる病気です。

 

そして、早期発見には定期的に認知機能をチェックすることが重要になります。

MCI段階で発見すれば進行を抑制できる

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

 

 

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

 

つまり、認知症を深刻化させないためには、恒常的に少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

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