現代では、コーヒーの健康効果についての認識が高まっており、健康飲料として日常的に飲む人が増えています。
ジョンズ・ホプキンズ大学の研究によると、コーヒーは人間の寿命を延ばす効果があり、心疾患、パーキンソン病、肝臓病、2型糖尿病などの発症リスクを低減する効果があるとされています。
その中、認知症の予防においても、コーヒーの日常的な摂取が有効であると言われています。
この記事では、認知症の予防にコーヒーが本当に効果的なのかどうか、最新研究の説明を交えて解説します。
出典:9 Reasons Why (the Right Amount of) Coffee Is Good for You
コーヒーの効果について
コーヒーには、健康効果をもたらす成分が豊富に含まれています。
最も知られているのはカフェインです。カフェインは集中力と注意力を高めることや、一時的な認知機能の向上も期待できるとされています。
また、ポリフェノールもコーヒーに豊富に含まれており、その成分の抗酸化作用によって、老化や細胞の損傷を防ぐ効果があるとされています。
その他にクロロゲン酸やトリゴネリン、ビタミンB、マグネシウム、カリウムなどの健康成分がたくさん含まれ、健康寿命を延ばす万能な飲み物と称されています。
そして、コーヒーにはリラックス効果が高く、ストレスの解消やうつ病などの精神病の予防にも効果的だと考えられています。
認知症とコーヒーの関係
認知症とコーヒーの関係性を示す研究は多数存在します。
最近では、2023年7月にヴェローナ大学の研究チームが、高濃度のカフェインを含むエスプレッソと認知症発症リスクの関連についての研究を発表しました。
この研究では、市販のコーヒー豆から抽出したエスプレッソを使用しました。そして、カフェイン分子と抽出したエスプレッソをタウタンパク質(認知症の発症要因とされる)とともに少なくとも40時間培養しました。
タウタンパク質は、脳内で異常に蓄積することで認知症を引き起こす主要な要因とされています。
研究結果によると、カフェイン濃度の増加に伴い、タウタンパク質の増加率が低下することが示唆されました。
特に、カフェイン濃度が最も高かったオリジナルのエスプレッソ抽出物で、タウタンパク質の減少が最も顕著だったようです。
コーヒーの抽出液をタウタンパク質に加えることで、記憶喪失を引き起こす認知症の症状を軽減する可能性があることを示唆しています。
出典:Espresso Coffee Mitigates the Aggregation and Condensation of Alzheimer′s Associated Tau Protein
コーヒーを摂取する際の注意点
コーヒーは健康に良いとされている一方、摂取する際には注意することが主に3つあります。
それは、コーヒーの摂取量、摂取時間、薬物との同時摂取です。これらの注意点については、以下に詳しく説明します。
飲みすぎに注意|自分自身に合う摂取量を把握する
一般的には、一日のカフェイン摂取量は400mgまでと指定されています。
以下に、コーヒーの種類ごとの一日の摂取量をまとめました。
コーヒーの種類 | 一杯の量 | 一杯のカフェイン量 | 一日の摂取量 |
ドリップコーヒー | 150mL | 約90mg | 4~5杯まで |
エスプレッソ | 60mL | 約80mg | 5杯まで |
インスタントコーヒー | 150mL | 約80mg | 5杯まで |
コールドブリュー(水出しコーヒー) | 150mL | 約70mg | 5~6杯まで |
しかし、コーヒーやカフェインへの反応は人によって大きく異なるため、最適な摂取量は個人で調整する必要があります。
低〜中程度のカフェイン摂取量は眠気の抑制や集中力の向上に役立ちますが、高い摂取量では不安、落ち着きのなさ、不眠、心拍数の増加などのネガティブな効果が生じる可能性があります。
コーヒーの飲み過ぎにより次のような症状が現れることがあります。
・頭痛
・不眠症
・神経過敏
・焦燥感
・頻尿または尿失禁
・心拍数の増加
・筋肉の震え
これらの症状が現れた場合は、自己チェックを行い、体質に合わせてコーヒーの摂取量を調整しましょう。
薬物との同時摂取に注意
コーヒーを薬と同時に摂取すると、薬の効果に影響を与える可能性があると言われています。
特にカフェインは、薬の吸収や代謝に影響を及ぼすことがあります。
また、コーヒーと特定の薬剤を同時に摂取することによって、相互作用が起こり、副作用が強化されることがあります。
このような相互作用により、薬の効果が強くなったり、予期せぬ副作用が発生する可能性があります。
コーヒーと相互作用する可能性がある薬剤の例には、特定の抗不安薬、睡眠薬、高血圧治療薬、抗精神病薬などが挙げられます。
相互作用を避けるために、薬を飲む一時間前後にはコーヒーの摂取をしないことを心がけてください。
コーヒーを飲む時間に注意
コーヒーを摂取する際には、飲む時間に注意が必要です。
一日の遅い時間にコーヒーを飲むと、寝付きにくくなったり、睡眠の質が低下する可能性があります。
通常、就寝の6~8時間前にはコーヒーの摂取を控えることが推奨されます。
例えば、普段11時に就寝する場合は、15~17時以降はコーヒーの摂取を避けるのが良いでしょう。
コーヒー以外に認知症の予防に効果的な飲み物とは
認知症の予防には、コーヒーだけでなく他の飲み物も効果的なものがあるとされています。それは、水、緑茶、ワインです。
① 水
まず、最も基本的な「水」の摂取は、脳の健康を維持する上で重要です。十分な水分摂取は、脳の機能を正常に保ち、便秘や活動低下の予防になるため、認知機能の低下を防ぐのに役立ちます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
② 緑茶
次に、「緑茶」です。緑茶に含まれるカテキンは強力な抗酸化作用を持ち、脳の老化を遅らせる効果があるとされています。
また、緑茶に含まれるアミノ酸であるテアニンは、リラックス効果をもたらし、ストレスによる認知機能の低下を防ぐのに役立つとされています。
③ ワイン
最後に、「ワイン」も認知症予防に一役買う可能性があります。特に赤ワインに含まれるレスベラトロールという成分は、脳の健康をサポートすると言われています。
しかし、アルコールの過剰摂取は健康に悪影響を及ぼし、認知症の発症リスクも増加する可能性があるため、ワインは適量を心掛ける必要があります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
まとめ
- コーヒーの日常摂取は認知症の予防にも効果があるとされる。
- コーヒーはカフェイン、ポリフェノール、クロロゲン酸などの健康成分が含まれている。
- コーヒーにはリラックス効果もあり、ストレス解消や精神疾患の予防にも効果があるとされている。
- 最新研究では、高濃度のカフェインがタウタンパク質の増加率を低下させ、認知症の症状を軽減する可能性が示唆されている。
- コーヒー摂取時には摂取量、摂取時間、薬物との同時摂取に注意する必要がある。
- コーヒーの飲みすぎは頭痛、不眠症、神経過敏、焦燥感、頻尿、心拍数の増加、筋肉の震えなどの症状を引き起こす可能性がある。
- コーヒーと薬剤の同時摂取は副作用を強める可能性がある。
- 認知症予防には、コーヒー以外に、水、緑茶、ワインも効果的である可能性が示唆されている。
認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要
認知症は、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせられる可能性のある病気とされています。
そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。
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MCI段階で発見すれば進行を抑制できる
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。
つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。