レビー小体型認知症は、アルツハイマー病に次いで2番目に多いとされている進行性の認知症です。
レビー小体型認知症は、主に65歳以上の高齢者に発症することが多く、男性にやや多い傾向があります。
世界中で約100万人以上がこの病気に罹患していると推定されています。
病気の進行は個人差がありますが、一般的には発症から5〜8年ほどで寿命が縮まることが多いとされています。
今回の、「レビー小体型認知症は治るのか?」について、結論から申し上げると、レビー小体型認知症を根本的に治すことはできません。
現在、レビー小体型認知症に対して行われている治療は、病気そのものを治すのではなく、症状の進行を遅らせることを目的としています。
そのため、レビー小体型認知症の特徴や症状をしっかりと把握し、早い段階から適切な処置をすることが重要になります。
レビー小体型認知症の主な症状
レビー小体型認知症の主な症状には認知機能の低下、幻視・幻覚、運動機能障害、睡眠障害等があります。
また、レビー小体型認知症は、記憶障害より幻視・幻覚、意識障害の症状が強く、記憶障害は初期には現れないこともあります。
認知機能の低下
レビー小体型認知症患者は、記憶、注意力、判断力などの認知機能が低下します。
認知機能の低下は徐々に進行し、患者の自立性が失われることもあります。
しかし、レビー小体型認知症は他の認知症に比べて、記憶障害が軽度で、意識障害も日にちや時間帯によって差があるため、見落とされやすいことが多いです。
幻視・幻覚
幻視・幻覚は、レビー小体型認知症の典型的な症状のひとつで、患者は存在しない人や動物、物体を見ることがあります。
これらの幻覚は非常にリアルで、患者に不安や恐怖を与えることがあります。
運動機能障害
レビー小体型認知症患者は、パーキンソン病と類似した運動機能の障害を呈することがあります。
これには、手足の震え、筋肉の硬直、歩行障害、バランスの喪失などが含まれます。
これらの運動障害は、患者の日常生活や自立性に大きな影響を与えることがあります。
睡眠障害
レビー小体型認知症患者は、睡眠障害を抱えることが一般的です。
特に、レム睡眠時行動障害(RBD)と呼ばれる状態が多く見られます。
RBDは、患者が夢を見ている最中に身体を動かしてしまう現象で、患者自身や周囲の人に危害を与えることがあります。
また、昼夜逆転や不規則な睡眠パターンも、レビー小体型認知症の症状として報告されています。
レビー小体型認知症の原因
レビー小体型認知症は70代・80代と高齢で発症する場合が多く、発症原因にはいくつかの要因が関係していると考えられています。
以下では、それらの原因について解説していきます。
脳内のレビー小体の蓄積
レビー小体型認知症の主な原因は、脳内にレビー小体と呼ばれるタンパク質の異常な蓄積です。
レビー小体は、α-シヌクレインというタンパク質が異常に折りたたまれた状態で神経細胞内に形成されます。
これらのレビー小体が神経細胞に蓄積することで、神経細胞の働きが損なわれ、次第に細胞が死んでいきます。
この神経細胞の損失が、レビー小体型認知症の症状を引き起こす主な原因とされています。
遺伝
遺伝も、レビー小体型認知症の発症に関与していると考えられています。
一部の家族性レビー小体型認知症の症例では、GBAという特定の遺伝子が関与していることも明らかになっています。
ただし、レビー小体型認知症は家族性が5%未満とされており、ほとんどが遺伝と関係なく発生する孤発性です。
その他の原因
レビー小体型認知症の発症には、他にもさまざまなリスクファクターが存在します。
加齢は最も重要なリスクファクターであり、65歳以上の高齢者に発症することが多いです。
その他のリスクファクターとしては、男性であること、喫煙、過度のアルコール摂取、肥満、高血圧、糖尿病、心血管疾患などがあげられます。
これらのリスクファクターを管理することで、レビー小体型の発症リスクを低減することができる可能性があります。
レビー小体型認知症の治療法
現在、レビー小体型認知症の根本的な治療法は存在しません。
しかし、症状を緩和したり、進行を遅らせたりすることは可能であり、以下でその治療法について詳しく解説します。
薬物療法
コリンエステラーゼ阻害剤
認知機能を改善するために、ドネペジルやリバスチグミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤が処方されることがあります。
抗パーキンソン病薬
運動機能の障害を緩和するために、レボドパなどの抗パーキンソン病薬が用いられることがあります。
ただし、これらの薬物は幻覚や精神症状を悪化させることがあるため、注意が必要です。
抗精神病薬
幻覚や妄想などの精神症状を緩和するために、クエチアピンやクロマゼパムなどの抗精神病薬が処方されることがあります。
ただし、高齢者には副作用のリスクが高いため、使用には慎重さが求められます。
抗うつ薬
抑うつ症状を緩和するために、セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)などの抗うつ薬が用いられることがあります。
非薬物療法
回想法
回想法(Reminiscence Therapy)とは、認知症患者や高齢者に対する心理社会的介入の一つで、過去の思い出や経験を話し合うことを通じて、心理的・社会的な機能を向上させることを目的とした療法です。
回想法は、特に認知症患者において長期記憶が維持されていることを利用し、自己尊重感や自己評価、対人関係、認知機能の改善を促すことが期待されています。
認知機能訓練
認知機能訓練とは、記憶力、注意力、問題解決能力などの認知スキルを維持・向上させるために行われるトレーニングのことです。
特に高齢者や認知症患者に対して有益であり、様々なゲームや練習を通じて、脳の活性化や神経回路の強化を促します。
運動療法
運動療法は、身体活動やエクササイズを通じて、患者の身体機能や健康状態を向上させる治療法です。
レビー小体型認知症患者に対しては、適度な運動が認知機能の低下を緩和し、運動機能の障害や筋力の喪失を防ぐことが期待されます。
また、運動療法は精神的な健康や睡眠の質の改善にも寄与し、全体的な生活の質の向上に役立ちます。
音楽療法
音楽療法は、楽器の演奏や歌唱、リズム運動、音楽を聴くことなど、音楽に関する多様な活動に参加することで、患者の心身の健康を向上させる治療法です。
レビー小体型認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要
レビー小体型認知症は、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせることが可能である病気であるとされています。
そして、早期発見には定期的に認知機能をチェックすることが重要になります。
MCI段階で発見すれば進行を抑制できる
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。
つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。