レビー小体型認知症(DLB)は、アルツハイマー病に次いで二番目に多いとされている進行性認知症です。
この疾患は、認知能力の低下だけでなく、パーキンソン病に似た身体的な症状や視覚幻覚など、多岐にわたる複雑な症状を引き起こすことから、レビー小体型認知症患者の介護は他の認知症に比べて大変になりやすい傾向があります。
本記事では、レビー小体型認知症(DLB)の介護に際して起こりうる困難やその対処法について解説します。
家族や介護者がどのようにしてご自身の心とからだの健康を維持しながら最高のケアを提供できるかについて一緒に考えていきましょう。
レビー小体型認知症とは?
レビー小体型認知症は、脳の神経細胞に特殊なタンパク質の塊(レビー小体)が蓄積することにより引き起こされると考えられています。
主な症状は認知機能の低下ですが、その他にもパーキンソン病に似た運動障害(手足の震え、筋肉の硬直)、視覚幻覚、睡眠障害などが挙げられます。
また、症状は日により変動し、一時的に改善することもあるとされています。
これらの特性から、レビー小体型認知症の診断と管理は困難といわれ、適切なケアを提供するためには深い理解と緻密な計画が必要とされています。
レビー小体型認知症の症状
レビー小体型認知症の症状は多岐にわたり、患者ごとにその現れ方や進行速度が異なります。
以下で主な症状を詳しく解説します。
認知機能の低下
これはレビー小体型認知症の主な症状で、集中力、注意力、記憶力、思考力の低下が見られます。
認知能力の低下は段階的に進行し、日常生活を自立して過ごすことが難しくなる場合もあります。
運動機能の障害
レビー小体型認知症の患者はパーキンソン病に似た身体的な症状を示すことがあります。
これには手足の震え、筋肉の硬直、運動の緩慢(あらゆる動作が遅くなり、時間がかかる)、バランスの問題などが含まれます。
視覚幻覚
この症状はレビー小体型認知症の特徴的な症状で、患者は存在しない人や動物、物体を見ると感じることがあります。
これらの幻覚は非常にリアルで、患者に混乱や不安を引き起こすことがあります。
認知機能の変動
レビー小体型認知症の症状は日々変動しやすいといわれています。
一部の患者は一日のうちに複数回の「良い時間」(認知症状が出にくい時間)と「悪い時間」(認知症状が出やすい時間)を経験することがあります。
睡眠障害
レビー小体型認知症はしばしばレム睡眠行動障害(RBD)という睡眠障害が起こるとされています。
RBDでは、患者は夢を見ている間に物理的に動き、叫んだり、もがいたりすることもああるようです。
行動と気分の変化
不安、うつ、無気力、怒りなどの気分の変動や行動の変化も見られることがあります。
また、人格の変化や社会的なルールを理解しないといった症状も出ることがあります。
レビー小体型認知症の診断
レビー小体型認知症(DLB)の診断は、患者の病歴の詳細な調査(問診)、神経学的検査、血液検査、そして画像検査を行うことが多いです。
以下にこれらのステップについて詳しく説明します。
問診
診断プロセスの初期段階では、医師は患者の病歴を詳しく聞きます。
これには、現在の症状、それらがいつ始まったか、どのように進行したか、既存の健康問題、過去の医療状況、家族の医療状況、生活習慣、使用中の薬などが含まれます。
問診は患者様の状況を理解し、可能な原因を特定するために重要です。
神経学的検査
この検査は、認知機能と物理的な神経症状を評価するために行われます。
医師は言語能力、注意力、記憶力、思考能力、問題解決能力などを評価します。
また、手足の力強さ、バランス、感覚、反射などの物理的な神経症状も確認します。
血液検査
血液検査は、レビー小体型認知症以外の病状、例えば甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏症など、認知症状を引き起こす可能性がある他の病気を排除するために行われます。
画像検査
脳の画像検査(MRIやCT)は、脳の構造を視覚化し、アルツハイマー病を示す可能性のある脳の萎縮や、脳卒中などの他の問題を検出するために行われます。
また、PETスキャンは脳の代謝を評価し、特定の領域の活動低下を確認します。DaTSCANという特殊なSPECTスキャンはドーパミン輸送体の活動を計測し、パーキンソン病やレビー小体型認知症の診断に役立ちます。
レビー小体型認知症の介護のむずかしさ
なぜ「レビー小体型認知症の介護は難しい・大変」といわれるのでしょうか?
その理由を以下で一つずつ確認していきましょう。
症状の複雑さと変動性
レビー小体型認知症は、認知能力の低下、運動障害、視覚幻覚など、さまざまな症状を引き起こすとされています。
また、これらの症状は日によって変わり、ある日は落ち着いているのに次の日には活動的になることもあります。
これにより、介護者は常に患者の状態を見極め、対応を変更しなければならないという負担が増します。
精神的なストレス
レビー小体型認知症患者は、幻覚をみたり、誤認識をすることがあり、それによって混乱や怒りを感じることがあります。
その結果、介護者は患者を落ち着かせ、理解しようとする中で精神的なストレスを感じることがあります。
体力が必要
パーキンソン病様の症状により、レビー小体型認知症患者は日常生活の活動に困難を感じることがあります。
介護者は食事の手続きから身の回りの世話まで、患者の身体的ケアを行わなければならないため、かなりの体力が求められます。
適切な対応を知る:レビー小体型認知症の介護のヒント
レビー小体型認知症の介護は困難であることは確かですが、以下の対応策を理解することで、患者へのケアの質を高め、介護者自身のストレスを軽減することが可能であると考えられます。
情報を集め、理解する
レビー小体型認知症についての知識を深めることは、適切な介護への第一歩です。
医師や専門家からの情報だけでなく、信頼性のあるインターネットサイトや認知症の支援団体からの情報も活用しましょう。
患者様の症状を理解することで、彼らの行動や反応に対する理解が深まりやすくなります。
専門家・専門機関に任せる
時には、専門的な介護者や療養施設が必要となることもあります。
患者様に合った介護士や施設を探し、適切なサポートを利用することが、長期的な介護においては重要となります。
健康管理を優先する
介護者自身が疲労やストレスで倒れてしまっては、患者にとっても悲しい結果となります。定期的な休憩を取る、趣味やリラクゼーション活動に時間を費やす、適切な食事と運動をするなど、自身の健康を維持することが大切です。
患者とのコミュニケーションを大切にする
レビー小体型認知症患者とのコミュニケーションは、彼らの症状や行動を理解するために重要です。
患者様の話を静かに聞くこと、分かりやすい言葉を使って話すこと、非言語的なコミュニケーション(ボディランゲージ、視覚的な手がかり)を活用することが効果的であるとされています。
まとめ
レビー小体型認知症の介護は決して簡単なものではありませんが、適切な知識と対策を身に付けることで、介護の質を向上させ、介護者自身の心とからだの健康を維持することが可能です。
しっかりと情報を集める・専門的なサービスを活用する・自己ケアに優先順位を置く・患者とのコミュニケーションを大切にすることが重要となります。
介護の過程は難しく、時には心が折れそうになるかもしれませんが、自身の健康を保ち、適切なサポートを求めることで、その負担を軽減することが可能です。