認知症は高齢者の間で年々増加している深刻な社会問題ともされる疾患です。
しかし、認知症の進行には個人差があり、年齢だけでは判断できません。
あるレポートによると、80代になると認知症の進行が急速に進行するとも言われています。
この記事では、認知症の80代以降の進行具合について詳しく解説します。
代表的な認知症の種類
認知症には様々な種類があり、それぞれ特徴的な症状や進行パターンがあります。
以下に、よく知られている認知症の主な種類を挙げます。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー病は最も一般的な認知症の形で、認知症患者の大部分を占めています。
この病気は脳の神経細胞を破壊し、主に記憶、思考能力、言語能力の低下を引き起こします。
初期症状としては、新しい情報の記憶困難が見られます。
進行すると、長期記憶も影響を受け、日常生活を送ることが困難になるとされています。
人格や行動の変化もしばしば見られます。
現在のところアルツハイマー病の根本的な治療法はありませんが、薬物療法やライフスタイルの変化が症状の進行を遅らせることが可能であるとされています。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、脳内に特定のタンパク質(α-シヌクレイン)が異常に蓄積し、レビー小体と呼ばれる異常な構造を形成することにより起こるとされています。
この認知症は、アルツハイマー病に次いで2番目に一般的な認知症といわれています。
主な症状としては、思考能力と注意力の低下、視覚幻覚、パーキンソン病と同様の運動障害などがあります。
また、睡眠障害や行動の変化も見られます。
現在のところ治療法は確立していませんが、症状の管理やサポートにより生活の質を向上させることが可能であるとされています。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉が主に影響を受ける認知症です。
これらの領域は個々の行動や性格、言語能力を制御しています。
病気が進行すると、社会的なルールを理解し守る能力が低下したり、言葉を見つけるのが難しくなったりすることがあります。
他の認知能力、如何に記憶や視空間スキルは初期段階では比較的保たれるとされています。
個々の行動の変化や家族間の問題を引き起こすことがあり、適切なサポートと理解が重要とされています。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、脳への血流の障害によって引き起こされます。
脳卒中後に起こりやすいとされていますが、脳への血流が長期的に低下している場合にも引き起こされやすいとされています。
血流が低下または遮断されると、脳細胞が酸欠になり、機能を失うか死んでしまいます。
これが思考や記憶の問題を引き起こします。
具体的な症状は、どの部分の血流が影響を受けているかによります。
脳卒中の原因となる高血圧、喫煙、糖尿病等の対策をすることが重要とされています。
日本における世代別認知症患者の割合
日本は世界で最も高齢化が進んだ国の一つです。
高齢化に伴って、認知症の患者数も年々増加しています。
では、日本における60代、70代、80代の認知症患者の割合はどのくらいでしょうか?
厚生労働省が2019年に発表した『認知症施策の総合的な推進について(参考資料)』によると、2020年には65歳以上の人口約3,500万人のうち、認知症の方は約602万人と推計されています。
厚生労働省によると、60代では認知症の発症率は3%程度であるが、70代の後半では男性12%・女性14%程度、80代後半になると男性35%・女性44%程度と大幅な増加が見られ、90代の後半ともなると、男性の51%・女性の84%程度の割合で認知症が発症するという結果が出ています。
認知症は80代になると一気に進行する?
認知症の進行は、年齢だけではなく、他の多くの要因によって影響をもたらすとされています。
個々の病状、現在の健康問題、ライフスタイル、遺伝的な要素、さらには認知症の種類(例えば、アルツハイマー病、血管性認知症など)も進行速度に影響を及ぼすとされています。
しかし、80代になると認知症の症状が一気に進行するとは必ずしも言えません。
年齢はあくまで認知症リスクの一因であり、年齢を重ねるにつれて認知症になる可能性は高まります。
一方で、それはあくまで統計的な話であり、必ずしも全ての人が80代になると認知症が一気に進行するわけではありません。
また、認知症の症状が顕著に進行しているように見える場合、その原因は認知症そのものだけでなく、他の健康問題(例えば、感染症や薬の副作用)や環境的な要因(例えば、ストレスや周囲のサポートの欠如)によるものかもしれません。そのため、急な症状の変化がある場合は、医療専門家に相談することが重要です。
一気に進行する前に早期発見と定期的な検査が重要
認知症は、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせられる可能性のある病気とされています。
そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。
MCI段階で発見すれば進行を抑制できる
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。
一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。