認知症症状の1つ「BPSD」とは。症状や対応方法を解説

唐突ですが読者の皆さんは、BPSDという言葉をご存じでしょうか?

 

BPSDとは、認知症の行動・心理症状」を表すもので、身体要因、心理要因などの相互作用によって引き起こる様々な精神症状や行動障害を意味します。

 

この記事では、BPSDについて、対処法を交えながら詳しく解説します。

 

 

 

BPSDとはどのような症状なのか

認知症を正しく理解するためには、BPSDについて知る必要があります。

 

BPSDは「Behavioral and phycological symptoms of dementia」という英語の略称で、日本語に訳すと「認知症の行動・心理症状」となります。

 

BPSDの位置付け

認知症症状は主に、中核症状周辺症状の2つに分類されます。

 

記憶力の低下、今まで出来ていたことが出来なくなる等、脳の神経細胞の障害によって起こる認知機能障害を中核症状と呼びます。

 

一方、周辺症状は環境・身体・心理などの相互作用の結果として生じる様々な精神症状や行動障害です。

 

つまり、中核症状に対する自分の心身状態や周辺環境によって、BPSDが引き起こるものとされています。認知症の治療等に用いる薬物の影響によってBPSDを発症する場合もあります。

 

BPSDの症状

BPSDには精神症状行動症状があり、具体的には以下のような症状が見られます。

 

精神症状

・不安感・うつ状態・妄想・幻覚 等

 

行動症状

・徘徊・モラルに反した行動・暴言・収集癖  等

 

BPSD対処のために介護者ができること

 

BPSDは認知症の方ご自身の生活の質を大きく低下させると同時に、介護者の負担も大きくします。

さらに、早期の入院が必要になる等介護費用の経済負担も増大することになります。

 

このような事態をなるべく避けるために、介護者による対処が必要です。具体的な対処方法は以下の通りです。

 

認知症の方の自尊心を傷つけない

認知機能が低下し、わからないことが増えたり、自身で出来ることが減ったりすることによって生じる不安自己喪失感が、BPSDを引き起こすと言われています。

 

そのため、認知症の方とコミュニケーションを図る際には、安心感を与え、自尊心を傷つけないような会話を意識しましょう。

生活に日課や役割を取り入れ、脳を活性化させるために、習慣的に仕事を手伝ってもらうことも有効であると言われています。

 

リラックスできる環境作り

認知症の方が生活する場所に、リラックス出来る環境を作ってあげることが重要です。

慣れ親しんだ家具を置いたり静かに眠れるような環境を整えてあげたりすることが有効であると言われています。

 

病院や介護施設での生活を余儀なくされる際にも、慣れ親しんだ家具などを持ち込むことで精神的な負担を軽減してあげることが可能です。

 

適切な介護

BPSDの発症や悪化を防ぐためには、適切な介護を行う必要があります。

認知症の方の介護は決して一律ではなく、1人1人の個性に合わせた介護を行うことが重要です。

 

認知症の方を1人の人間として尊重することを忘れず、性格や特性を考慮した上で、その人の立場に立ったケアを行うことを心がけましょう。

 

介護者の専門知識の習得や観察力向上も重要なポイントです。

 

BPSDの改善が生活の質を高める

BPSDは認知症の方ご自身と介護者の双方にとって大きな負担となりますが、介護者の対応次第で、症状を軽減させることが可能です。

 

認知症の方を尊重し、自尊心や笑顔がうまれる環境を醸成することでBPSDの症状が軽減、改善されていくことを繰り返し、好循環が生まれることが期待できます。

 

BPSDという症状を理解し、適切な対処に努めることは認知症の方と介護者の双方にとって、とても重要なことであるといえるでしょう。

 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせられる病気です。

 

そして、早期発見には定期的に認知機能をチェックすることが重要になります。

MCI段階で発見すれば進行を抑制できる

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

 

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

 

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

 

MCI(軽度認知障害)とは?定義や検査方法について紹介します

 

[出典]

『周辺症状(BPSD)について』 医療法人緑会 佐藤病院

『BPSD(Behavioral and psychological symptoms of dementia)』 認知症・老年心療内科専門 おいまつクリニック

『認知機能セルフチェッカー』は「自分ひとりで、早く、簡単に」をコンセプトに認知機能低下のリスク評価ができるヘルスケアサービスです。40代以上の健康な方たちを対象に、これまでにない新しい認知機能検査サービスを提供しています。お近くの医療機関でぜひご体験ください。

-認知症の症状

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