認知症予防にビタミンD?ビタミンと認知機能の関係、効果的な摂取方法について解説

 

現代社会で少子高齢化が進む中、高齢者に発症しやすい認知症は世界中で増加傾向にあります。

 

症状の進行を遅らせるための治療法や予防策の研究が進められていますが、完全な治療法はまだ見つかっていません。

 

このような状況の中で、日々の食生活が認知症の予防に果たす役割が注目されています。

 

特にビタミンの摂取は、認知機能の維持に重要と考えられており、その効果について科学的な研究も進められています。

 

この記事では、認知症の予防に効果的とされるビタミンについて、科学的根拠を基に詳しく解説します。

 

 

ビタミンとは

ビタミンは、生物が生きていく上で欠かせない有機化合物とされています。

 

そして、体内で十分に生成されないため、食事などを通して摂取する必要があると言われています。

 

ビタミンは水溶性のもの(ビタミンB群、ビタミンC)と脂溶性のもの(ビタミンA、D、E、K)に分かれ、それぞれ異なる機能や役割を持っています。

 

水溶性ビタミンは、体内で蓄積されにくく、尿として排出されるため、毎日の摂取が必要とされています。ビタミンB群はエネルギー代謝や赤血球の生成、神経機能の維持につながり、ビタミンCは免疫機能の強化や抗酸化作用に関係すると考えられています。

 

一方で、脂溶性ビタミンは脂肪組織に蓄積されやすいため、過剰摂取には注意が必要ですが、体内に長く滞在すると言われています。ビタミンAは視覚の機能維持に関与し、ビタミンDは骨の形成と健康を支えます。ビタミンEは抗酸化作用を持ち、細胞の保護に寄与するとされています。また、ビタミンKは血液凝固や骨の健康に関与する役割を持っているようです。

 

ビタミンが豊富に含まれる食品には、以下のようなものがあります。

 

ビタミンC

柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツなど)、キウイフルーツ 、ブロッコリー、ピーマン、イチゴ  

ビタミンD

サーモンやマグロなどの脂の多い魚、キノコ類(しいたけ、まいたけなど)、卵黄、強化牛乳  

ビタミンB群

豚肉(ビタミンB1が豊富)、レバー(ビタミンB2やビタミンB12が豊富) 、緑黄色野菜、全粒穀物、ナッツ類  

ビタミンE

アーモンドやヘーゼルナッツなどのナッツ類、ひまわり油、植物油(オリーブオイル、菜種油など)、ほうれん草、アボカド  

ビタミンK

緑黄色野菜(ほうれん草、ケールなど)、納豆、ブロッコリー、肉類、卵黄  

 

加えて、ビタミン不足は多くの健康問題を引き起こす可能性があります。

 

例えば、ビタミンDの不足は骨粗しょう症や免疫機能の低下を招くことがあり、ビタミンCの不足は免疫力の低下や皮膚の健康問題につながることが知られています。

 

このため、バランスの取れた食事が重要であり、特に日照時間が少ない冬季などはビタミンDの補給が推奨されることが多いです。

 

ビタミンは認知症の予防になる?

多くのビタミンの中でも、ビタミンDの摂取は認知症予防において特に注目されています。

 

ビタミンDは通常、骨の健康を支える栄養素として知られていますが、数々の研究で認知機能を保護する可能性が示唆されています。

 

2024年にイギリスで行われた研究によると、ビタミンDの低いレベルはアルツハイマー型認知症を含む認知症のリスク増加に関連しているとされています。

 

また、必要な血中ビタミンD濃度である50 nmol/L未満の人では、アルツハイマー型認知症のリスクが増加するというフランスの研究報告もあります。

 

さらに、2023年の大規模な研究では、70歳以上の認知症を発症していない12,000人以上を対象にした調査で、ビタミンDサプリメントを摂取した人々は、摂取しなかった人々と比較して認知症発症率が40%低かったと報告されています。

 

結果として、ビタミンDは脳の健康において重要な役割を果たす可能性があり、特に冬季にはサプリメントでの補給が推奨されています。

 

これらの研究結果は、ビタミンDが認知症の予防に有効である可能性を示唆していますが、この分野ではさらなる研究が必要とされています。

 

出典:The associations of serum vitamin D status and vitamin D supplements use with all-cause dementia, Alzheimer’s disease, and vascular dementia: a UK Biobank based prospective cohort study

出典:Effects of vitamin D supplementation on cognitive function and blood Aβ-related biomarkers in older adults with Alzheimer's disease: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial

出典:Vitamin D supplementation and incident dementia: Effects of sex, APOE, and baseline cognitive status

 

認知症を予防する可能性が低いビタミンとは

近年、ビタミンDが認知症予防に有効であるとする研究が進んでいる一方で、他のビタミンの摂取が認知機能の維持に効果をもたらさないとする報告もあります。

 

たとえば、ビタミンCとビタミンEの抗酸化作用は脳に有益と考えられているものの、認知機能への影響に関する研究結果はさまざまで、明確な効果を示すエビデンスは限られているようです。

 

具体的な例として、2018年に発表されたイギリスの報告では、ビタミンEのサプリメントが認知症予防に効果があるかを調査した結果、明確な証拠は見つからなかったと示唆されています。

 

同様に、ビタミンCも認知機能への影響は不明確であり、サプリメントの過剰摂取が直接的に認知症のリスクを減少させるという証拠は乏しいとされています。

 

そのため、ビタミンCやビタミンEの摂取が全く無意味であるわけではありませんが、認知症の予防に必須であるとする十分なデータはありません。

 

ビタミン摂取に焦点を置くよりも、バランスの良い食事や適度な運動、睡眠などの総合的な健康管理が認知症予防に重要であると考えられています。

 

出典:Vitamin E for Alzheimer's dementia and mild cognitive impairment

 

認知症に効果的なビタミンの摂取方法とは

ビタミンの摂取は、認知症リスクの低減に効果がある可能性が示唆されています。

 

特にビタミンDは、認知機能の保持と向上に役立つとされており、摂取の重要性が指摘されています。

 

しかし、ビタミンDだけに頼るのではなく、他のビタミンも含めて全体的なバランスを考慮することが大切です。

 

ビタミンを摂取するには、自然な食材から摂る方法サプリメントを利用する方法があります。

 

食材から摂取することは最も自然な形で、ビタミンDを含む食事(魚類、卵黄、牛乳、キノコ類)を通じて他の栄養素も一緒に摂取できるため推奨されます。

 

一方で、特定の状況やビタミンDの需要が高い場合、サプリメントの利用が効果的な場合もあります。特に冬場は日照時間が短く、太陽光によるビタミンD生成が不足しがちであるため、サプリメントを使用することで効率的にビタミンDを補うことが推奨されています。

 

ただし、サプリメントは栄養補助として役立つものの、適切な用量の判断や過剰摂取のリスクなどがあるため、できるだけ食材などから数値を高めることが推奨されています。ビタミンDの過剰摂取は、カルシウムの血中濃度を異常に高める高カルシウム血症を引き起こす可能性も指摘されています。

 

適切なビタミンの摂取を含め、全体的な栄養バランスを維持することが認知症のリスク軽減につながる可能性があると考えられています。

 

認知症に効果的な食事習慣

認知症の予防において、適切な食事習慣の維持が重要であると考えられています。

 

特に、地中海ダイエットのようなバランスの取れた食事は、様々な研究で認知機能の維持に有効と結論付けられています。

 

地中海ダイエットは、野菜、果物、全粒穀物、豆類、魚介類、オリーブオイルといった健康的な食材を豊富に含んでおり、これらは認知症リスクを低減する効果があるとされています。

 

また、毎日同じ時間に食事をとることも、体内時計を整え、認知機能をサポートすることにつながります。

 

重要なことは、無理な食事制限を避け、栄養バランスを考えた食生活を心掛けることです。

 

これにより、認知症を引き起こす可能性のある病気の予防にも寄与するといわれています。

 

他の認知症の予防対策

認知症予防においては、効果的な食事習慣だけでなく、他の生活習慣も重要な役割を果たしています。

 

以下に、認知症の予防に役立ついくつかの対策を挙げます。

 

定期的な運動:適度な身体活動が脳の健康維持に欠かせません。ウォーキングやヨガ、軽い筋力トレーニングなど、継続的に行える運動を日常に取り入れることが推奨されています。

 

良質な睡眠:睡眠中には脳がデトックスを行い、日中に蓄積された老廃物を排出します。これにより、脳の修復と再生が促進されるため、十分な睡眠を確保することが大切です。

 

禁煙と飲酒を控える:喫煙は脳血管に悪影響を与え、認知機能低下のリスクを高めるとされています。適度な飲酒に抑えることで、脳血管疾患やその他の認知障害のリスクを減らすことが期待されます。

 

持病の適切な管理:糖尿病や高血圧などの持病を適切に管理することは、認知症リスクの低減につながります。未管理のままだとリスクが高まるため、定期的な健康診断や治療が推奨されます。

 

脳を活性化する活動:パズルや読書、新しい言語の学習などは、脳の新しい神経結合の形成を助け、認知機能の低下を遅らせると考えられています。日常に取り入れることで、脳への刺激と活性化が期待できます。

 

これらの対策を日常生活に取り入れることで、認知症のリスクを低減し、脳の健康を維持することができる可能性があると考えられています。

 

健康的な習慣を意識し、継続的に行うことで、将来にわたって認知機能を保つための基盤を築くことができます。

 

まとめ

本記事では、ビタミンの摂取が認知症予防にどの程度効果的かについて解説しました。

 

研究によれば、特にビタミンDが認知機能の保持と認知症リスクの低減に寄与する可能性が示されています。

 

しかし、これらの効果は個人の生活習慣や遺伝的要因によっても左右されるため、ビタミンを摂取するだけで認知症が予防できるとは限りません。

 

認知症予防には、バランスの良い食事、定期的な運動、十分な睡眠、社会的な交流など、総合的な健康管理が推奨されています。

 

認知症の予防に関するさらなる情報や個別の相談については、医療専門家にご相談されることをお勧めします。

 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせる可能性がある病気とされています。

 

そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。

 

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MCI段階で発見すれば進行を抑制できることも

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

 

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割程度の方は1年以内に認知症へと進行すると言われています。

 

一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

 

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

 

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