認知症にはさまざまな種類があり、発症の原因はまだ完全には解明されていないものもあります。
そのため、認知症を完全に予防することは難しいですが、日常生活や食事などに注意をして予防を目指すことは可能です。
認知症予防につながる方法の1つに、ゲームが挙げられます。
なぜゲームが認知症予防につながると言えるのか、また、どのようなゲームが予防に期待できるのかについて解説します。
認知症の予防にゲームが効果的と言われる理由
認知症の予防には、ゲームが効果的と言われています。その理由について探っていきましょう。
なお、ここでいう「ゲーム」とは、アプリやテレビゲームなどのオンラインで楽しめるものだけでなく、家族や友人、仲間と楽しめるレクリエーションも含みます。
脳の活性化が期待できる
ゲームには必ずルールが存在するため、まずはルールを理解する必要があります。
それに加えて手や身体全体を動かすわけですから、二つの意味で脳の活性化が期待できます。
また、将棋やトランプ、オセロなどの対戦相手がいるゲームなら、相手の手や数手先を読みながら進めていきます。
考える時間も長くなり、思考力や推理力も鍛えられるでしょう。
人とコミュニケーションを取れる
人との対話やつながりが減ると、生活範囲が狭くなり、社会的・身体的・精神的に虚弱な「フレイル」と呼ばれる状態になっていきます。
フレイルは健康な状態にも認知症や要介護状態にも移行する不安定な状態のため、フレイルを予防することが認知症予防にも重要だと考えられます。
2人以上で楽しむゲームなら、人とコミュニケーションを取る機会にもなります。
ゲームを通してコミュニケーションを取り、社会的に虚弱な状態を作らないようにしましょう。
身体機能を向上させられる
身体を動かすことは、認知機能の向上につながります。
例えば風船を使ったバレーボールやグラウンドゴルフなどのゲームをすれば、楽しみながら認知症予防につなげることができるでしょう。
また、普段から運動することは、転倒予防にもつながります。
日頃から体を鍛えていれば早い回復も期待できるので、万が一、ケガをした場合でも介護が必要な期間を短縮できます。
活力が生まれる
ゲームやレクリエーションは生活にメリハリを与え、日常生活では味わうことが難しい高揚感や達成感を得ることもできます。
「また、したい」「楽しかった」と次の機会を待つ気持ちが生まれるなら、生きがいにもつながるでしょう。
認知症の予防に効果的なゲームの特徴
ゲームなら何でも認知症の予防に効果を期待できるわけではありません。
以下のいずれかの要素を持っているか確認してから、認知症予防を目的としたゲームを選びましょう。
身体を動かすもの
身体を動かす習慣がないと、病気やケガをしやすいだけでなく、「外に出て楽しもう」という気力も生まれません。
身体を動かす要素のあるゲームを定期的に行うことで、身体的に強化するだけでなく、心理的・社会的にも鍛えていきましょう。
身体全体を動かすことが難しい場合でも、認知症予防につなげることは可能です。
例えばじゃんけんやあやとりなどの手遊びでも、脳を働かせつつ手先を動かすため認知機能の活性化を期待できます。
他人との交流を含むもの
コミュニケーションができるゲームも、認知症予防に取り入れたいです。
例えば棋譜を見ながら将棋を指すのも脳を刺激する良い楽しみの1つですが、実際に誰かと対戦するなら頭を使うだけでなくコミュニケーションも取れるため、さらに認知症予防効果を期待できます。
趣味を同じくする友人がいない場合は、サークルや教室などに入ってみてはいかがでしょうか。
地域の公民館やカルチャーセンターに問い合わせ、集団の中でゲームを楽しめる場所を探してみましょう。
新たな挑戦があるもの
お気に入りのゲームを楽しむことでも認知症予防効果を期待できますが、あまり経験したことがないものにチャレンジすれば、さらに脳を刺激することができるでしょう。
年齢を重ねると新しいことに挑戦するのは億劫になるものですが、認知症予防のためにも、ぜひ新しい事柄を試してみてください。
例えば、脳を働かせながら同時に身体を動かす「コグニサイズ」というトレーニングは、認知機能の低下を抑止する目的で開発されたプログラムです。
ゲーム要素もありつつ新たな動きにチャレンジでき、未経験者も楽しめます。
コグニサイズの1つ、「コグニウォーク」を紹介するので、ぜひチャレンジしてみましょう。
<コグニウォーク>
- 視線は遠方に、手足をしっかりと動かしてウォーキングをします
- ウォーキングをしながら、しりとりや計算、川柳をします
- 遊歩道などのできるだけ安全な道を選びましょう
継続しやすいもの
時折ゲームをするだけでは、認知機能の衰えを効果的に抑制することは期待しづらいものです。
継続しやすいゲームを選び、毎日あるいは週に何度か楽しめるようにしましょう。
ルールが簡単なゲームなら、負担にならずに楽しみやすいかもしれません。
しかし、あまりにも簡単だと飽きてしまい、続ける意欲を失う恐れがあります。
ゲームを選ぶときは、続けるのが嫌になるほど難しいものや、すぐに飽きてしまうほどの簡単すぎるものは避けるようにしましょう。
認知症予防に効果を期待できるゲームの例
どのようなゲームが認知症予防に活用できるのか、いくつか例を挙げて紹介します。
無料で楽しめるゲームも多いので、気軽に始めてみてください。
クイズ
クイズは、脳を刺激し、思考力や計算力、推理力なども高める効果を期待できます。
2人以上で楽しめば、コミュニケーションを深めることもできるでしょう。
書店でクイズ関連の本を購入することもできますが、クイズの無料アプリをインストールしてスマホで楽しむこともできます。
アプリなら外出先や移動中でもできるので、スキマ時間を認知症予防に充てられます。
パズル
パズルも、脳を刺激して空間把握力や推理力などを高められるゲームです。
オーソドックスなジグソーパズル以外にも、立体パズルやオンラインパズルなどを試してみましょう。
アクションゲーム
認知機能の衰えを回避するためには、思考力や判断力をつかさどる脳の前頭前野の機能を維持することが効果的だと考えられます。
前頭前野の機能維持には、「考えながら指を動かすこと」や「視線で何かを追いかけながら思考すること」が有効とされているので、テレビゲームなどの視覚的な情報をすぐに処理して手指を動かすアクションゲームを定期的に行い、認知症予防を目指していきましょう。
また、処理速度を鍛えるゲームも、認知症予防に効果があると言われています。
例えばルービックキューブで一面揃えることができたら、次は最初よりも短時間で揃えられるか挑戦しましょう。
同様に二面、三面と揃えられるようになったら、前回よりも短時間で揃えることを目指して挑戦してください。
スポーツゲーム・レクリエーション
テニスやバドミントン、グラウンドゴルフなどのゲーム要素が強いスポーツ・レクリエーションも、認知症予防に効果を期待できます。
身体を動かし、しかもコミュニケーションも取れるので、フレイル予防にもつながります。
認知症予防にゲームを取り入れる際の注意点
認知症予防の目的でゲームを実施するときは、以下の点に注意をしてください。
- ルールが複雑すぎず、初心者でもすぐに楽しめること
- 身体状況を把握し、無理なく参加できること
- 勝ち負けにはこだわりすぎないこと
誰もが楽しく参加できるようにシンプルなルールで、勝っても負けても充足感が得られるように配慮します。
ゲームを始める前は、参加者の体調やケガの有無を必ず確認します。
また、ゲーム中もこまめに顔色や様子をチェックして、無理なく楽しめるようにしましょう。
認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要
認知症は、早期に発見して適切な治療を施すことで、その進行を遅らせられる病気です。
そして、早期発見には定期的に認知機能をチェックすることが重要になります。
MCI段階で発見すれば進行を抑制できる
認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。
物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。
しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。
つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。
ゲームと定期的な認知機能測定で認知症予防に努めましょう
脳を活性化するゲームを定期的に行うことで、認知症や、認知症につながるフレイル、軽度認知障害の予防に努めていきましょう。
また、定期的に認知機能を測定し、衰えを早期に発見することも大切です。
※本記事で記載されている認知症に関する内容は、専門家によって見解が異なることがあります。