皆さんは『レカネマブ』という薬をご存じでしょうか?
レカネマブは最近注目されている認知症の新しい治療薬です。
日本は高齢化が進行することで、今後、認知症患者の増加が予測されていますが、世界に目を向けると現在約5,500万人いるとされる認知症患者数は2050年には1億人を超えると予測されています。
このような状況において、レカネマブのような認知症治療薬の必要性は今後も高まっていくでしょう。
しかし、レカネマブについては、どのような効能・効果が見込める薬なのかをご存知のない方もおられるのではないでしょうか。
そこで、本記事では、「レカネマブ」についての解説をしていきます。
「レカネマブ」とは
レカネマブとは、日本の「エーザイ」とアメリカの「バイオジェン・インク」が共同開発したアルツハイマー病の治療薬です。
レカネマブはアルツハイマー病(AD)の進行を抑制し、認知機能の低下を遅らせることが確認されており、米食品医薬品局(FDA)からフル承認を取得した治療薬です。
「レカネマブ」の効果
レカネマブはアルツハイマー病の原因物質とされているアミロイドβの沈着を抑えることで、アルツハイマー病の進行を抑制するとされています。
アルツハイマー病患者の脳内では、アミロイドβというタンパク質が蓄積され、これが塊となって神経細胞内に蓄積することで、神経細胞が破壊され、認知機能が低下すると考えられています。
レカネマブは、かたまりになる前のアミロイドβにくっついて除去することで、認知機能の低下を抑制することが分かっています。
ただし、レカネマブは神経細胞が破壊される前に防ぐことはできますが、すでに破壊されている神経細胞を修復する効果はないため、認知症を発症する前の軽度認知障害(MCI)もしくは軽度の段階で投与をすることが重要であり、一定の効果を得られるとされています。
「レカネマブ」の副作用
レカネマブは、アルツハイマー病への有用性が認められた一方で、以下のような脳に関する脳に関する副作用についても注意喚起がされています。
・頭痛
・脳の腫れ
・脳の出血
臨床試験において、被験者約1800人の内、17%に脳の出血、12%に脳の腫れがみられたということです。
これらのほとんどのケースでは症状が無かったようですが、一部の被験者は副作用を理由に投与を中止する必要があったと報告されています。
今後、レカネマブが承認されて普及していくにあたって、医師とも相談の上、これらの副作用に注意しながら治療を進めていくことが重要になってくることが予測されます。
「レカネマブ」は日本で使える?
2023年7月時点において、レカネマブは日本で承認されていません。
現在承認審査中であり、2023年の秋頃には審査結果が出るとみられています。
米国において自費治療を受ける場合、「レカネマブ」は患者一人当たり年間300万円以上の負担が発生するとされています。
日本でも普及が進むと、高額な治療費が患者にとって大きな経済的負担になるだけでなく、日本の介護財政が圧迫されることも懸念されています。
「レカネマブ」と「アデュカヌマブ」の違い
『アデュカヌマブ』とは、エーザイとバイオジェン・インクが共同で開発した認知症治療薬です。
アデュカヌマブは、レカネマブと同様に、脳内のアミロイドβを取り除き、認知機能の低下を抑制するとして、2021年6月に米食品医薬品局(FDA)によって条件付き承認されました。
「レカネマブ」と「アデュカヌマブ」はどちらも認知症の原因物質とされているアミロイドβを減少させる効果が認められています。
しかし、「レカネマブ」と「アデュカヌマブ」では認知機能の改善効果に関して違いがあります。
「アデュカヌマブ」は承認プロセスにおける臨床試験やその効果が不明瞭で疑問視されていたようです。
その結果、FDAから承認を受けたにも関わらず、十分な改善効果が認められないとして高齢者向け保険が適用されないことが決定しました。
また、日本でも承認審査が実施されましたが、継続審議により承認見送りとなりました。
一方で、「レカネマブ」は、臨床試験において認知機能の低下が27%抑制されるという明瞭な改善効果が確認され、日本でも承認される可能性が高いといわれています。
日本においては、「レカネマブ」はまだ承認前ですが、今後は正式承認され、普及する期待が高まっています。
まとめ
「レカネマブ」は日本のエーザイとアメリカのバイオジェン・インクが開発したアルツハイマー病の新治療薬で、アミロイドβというアルツハイマー病の原因物質を除去し、認知機能の低下を抑制する効果があることを説明しました。
日本ではまだ承認されておらず、副作用や高額な治療費などの問題がありますが、もし「レカネマブ」が日本で承認された場合、これまで手段が限られていた認知症の治療において、新たな選択肢が加わることになります。
今後レカネマブによる治療を見据えて、高い効果を得るためにも、定期的な認知機能検査などを通じて認知症の早期発見に努めることが大切です。