認知症予防に良いと言われるトレーニングや運動は数多く紹介されていますが、手遊びもその中のひとつです。
なぜ手遊びが認知症予防につながるのか、どんな手遊びが効果的なのか、手遊びの効果を高めるために知っておきたいことについて解説します。
認知症予防のために今すぐ始めたいことについても紹介するので、身近なことから認知症予防を始めていきたい方はぜひご覧ください。
認知症予防に手遊びは効果がある?
認知症の予防や改善に対する手遊びの効果については、さまざまな研究が実施されています。
例えば軽度および中程度の認知症患者を対象に実施された研究では、週に3回3ヶ月間、集中的にお手玉やけん玉、カルタなどの手遊びや童謡などの懐かしい遊びを実施したところ、認知機能が有意に改善されたという結果が報告されています。
また、認知機能が低下傾向にある高齢者を対象とした研究でも、お手玉やあやとりなどの昔遊んだ記憶のある玩具で記憶を刺激したり、懐かしいメロディーを演奏したりすることで、近時記憶能力と主観的な健康感が改善されたという結果が報告されました。
これらの結果からも、手遊びを用いることで認知機能の改善を期待できることが分かります。
おすすめの手遊び
手指を動かすことは脳を刺激し、高齢者の脳トレにもつながるため、認知症予防という観点からもぜひ手遊びを普段の生活に取り入れてみては如何でしょうか。今すぐ始めたいおすすめの手遊びをいくつか紹介します。
大勢でも楽しめる「あんたがたどこさ」
歌を歌いながら手遊びをすると、楽しさが増すだけでなく複雑さも増し、脳をより刺激することを期待できます。
何人かで円になり、椅子に腰かけて「あんたがたどこさ」の歌を歌いながら、曲のリズムに合わせて自分のひざを両手でたたきましょう。「さ」のときには両手を合わせます。慣れてきたら少し速いテンポで歌いましょう。
一人でも楽しめる指体操
一人でできる手遊びとして、指体操をしてみてはいかがでしょうか。例えば次の指体操なら計算力も鍛えられます。
- 左手を開き、右手を握って、右手で左手のひらをたたく
- 右手を開き、左手を握って、左手で右手のひらをたたく
- 足して7になる数字を左右の指で出す(例:左手は3本、右手は4本)
- 1~3をリズムよく繰り返す
さまざまな組み合わせで7を出しましょう。慣れてきたら4~8の数字でも指体操にチャレンジしてください。
懐かしの歌謡曲を使った手遊び
記憶力を刺激する懐メロを使って、手遊びをすることもできます。
昔の歌謡曲や童謡を歌いながら、リズムに合わせて左手をパー→グー→チョキの順に出していきます。右手は左手に勝つ手を出しましょう。
慣れてきたら、右手は左手に負ける手を出したり、パー→グー→チョキを出してから手をたたいて、また、パー→グー→チョキの順に出したりとアレンジしてください。
全身を使ったリズム運動を組み合わせた手遊び
手先だけでなく全身も使うと、運動不足の解消にもなります。まず、以下の順で足を動かして四拍子のリズムを取ってください。
- 両足をそろえて立ち、左足を右足の右斜め前に出して、左足に重心を移動させる
- 右足を右側に大きく踏み出して、右足に重心を移動させる
- 左足を右足の左横30㎝に動かし、左足に重心を移動させる
- 右足を左足にそろえる
足は四拍子のリズムを刻みながら、声に出して、1、2、3…と数字を数えます。3の倍数のときには手をたたき、5の倍数のときには腕を大きく上に伸ばしてください。
1人じゃんけん
自分の左手と右手を使っておこなう1人じゃんけんは、集中力・判断力・瞬発力を鍛える脳トレになります。
1.まず、右手でグー→チョキ→パーの順に出します。
2.左手はそれに対して、勝つようにパー→グー→チョキの順に出します。
3.この3つの順番を1セットとして、計10回行います。
4.次に、1~3を勝つ手を右と左で逆にしてもう1度行います。
手遊びをする際の注意点
手遊びは、特別な道具がなくても始められる気軽な認知症予防のトレーニングです。次の4つのポイントを意識すれば、さらに脳を刺激する効果を高められるでしょう。
毎日続ける
時折手遊びをするだけでは、脳のトレーニング効果はあまり期待できません。脳への刺激を続けるためにも、手遊びも毎日続けるようにしましょう。
少しずつ難易度を上げる
何も考えずに手指が動くような手遊びでは、脳に刺激を与えているとは考えられません。慣れてきたら少しずつ難易度を上げ、常に「少し難しい」と感じる程度の状態で遊びましょう。
楽しく続けられる工夫をする
同じ手遊びばかりでは、飽きてしまうかもしれません。あやとりやお手玉、けん玉、ヨーヨーなどの道具も取り入れながら、毎日楽しめるように工夫しましょう。
コミュニケーションを取る
一人でもできるのが手遊びの良いところですが、ぜひ2人以上でも楽しんでみましょう。コミュニケーションを取ることも脳の活性化に有用だと言われています。
認知機能を定期的に測定し認知機能の変化を早めに察知
先ほど紹介した幾つかの研究結果からも、手遊びが認知機能の改善に役立つことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
しかし、認知機能の変化に早く気付くことでも、認知機能改善を目指すことができます。その理由と、認知機能の変化に気付くための方法について見ていきましょう。
早期発見で認知機能の低下を遅らせることも可能
認知症の前段階として、認知機能の低下によって記憶障害等の様々な症状が現れる状態があります。これを「軽度認知障害(MCI)」と呼びますが、定期的なチェックを通じて軽度認知障害の時点で認知機能の低下を察知することが出来れば、適切な治療や予防行動等によっては健常な状態に戻れる可能性があることが分かっています。
軽度認知障害は健常な状態と認知症の中間状態を指しますが、日常生活に困難をきたすものではなく、疾患とは区別されません。そのため、本人は物忘れ程度に考えて見逃してしまい、そのまま認知症の発症へと進行してしまう可能性もあります。
軽度認知障害の時点で早期に気付くためにも、定期的に認知機能を測定する習慣をつけてみてはいかがでしょうか。
手遊びで手軽に認知症対策をしましょう
脳を刺激し認知症を予防するためにも、普段の生活に手遊びを取り入れてみましょう。全身の動きや歌、計算なども組み合わせると、さらに複雑になり、脳の活性化も期待できます。
定期的に認知機能を測定し、認知機能の衰えに早めに気付くことも認知症予防に有用だと考えられます。お近くの認知機能セルフチェッカー設置店で、ぜひご自身の認知機能を調べてみてください。
※本記事で記載されている認知症に関する内容は、専門家によって見解が異なることがあります。