音楽療法が認知症の症状を改善する?種類や効果などを解説

認知症の症状の改善には、薬物療法の他に薬に頼らない非薬物療法があります。

 

非薬物療法の中でも比較的安易に取り入れられるのが、音楽療法です。

 

音楽療法は、歌を聴く、歌うなど音楽に関わる活動を行うことを指し、認知症患者の記憶障害や気分の浮き沈みを改善することが期待できると言われています。

 

 

認知症の音楽療法とは

認知症の音楽療法とは、音楽が持つ力を利用した認知症の非薬物療法です。音楽を聴くとストレスが解消される、体が勝手にリズムを取るなどは多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。

 

音楽療法では、このように音楽が私たちに与える影響を症状の緩和として用いているのです。音楽療法が認知機能の改善に効果的であることは研究によって明らかになってきています。

 

特に、認知症の行動・心理症状(BPSD)に対して効果が高いといわれています。

 

出典:Music interventions in 132 healthy older adults enhance cerebellar grey matter and auditory working memory, despite general brain atrophy

 

認知症の改善効果が高いと言われている音楽療法の種類

音楽療法には、受動的音楽療法能動的音楽療法の2種類があります。この療法を受ける方の状態や目的によって使い分ける必要があるとされています。

 

種類① 受動的音楽療法

受動的音楽療法は、音楽を聴くことで症状を改善します。例として、スピーカーで聴きたい音楽を流したり、ライブ演奏を見に行くなどがあります。

 

認知症の症状によりうまく体を動かすことができない方でも簡単に取り組むことができます。

 

種類② 能動的音楽療法

能動的音楽療法は、歌を歌う、楽器を演奏するなど、自発的に音楽活動を行うことで症状を改善します。具体的には、カラオケで歌うことや色んな人と合唱することなどがあります。

 

認知症の改善効果が高いと言われている音楽療法の効果

音楽療法には、思い出の喚起、ストレス軽減、コミュニケーションの促進といった効果があるとされています。

 

記憶を呼び起こす

音楽療法は記憶と結びつきやすいという性質があり、記憶障害を発症している方でも、音楽を聴くことで過去の記憶を思い出す可能性が高まります。

 

音楽には思い出を連鎖的に呼び起こし、その効果が認知症の改善にも効果的である可能性が高いとされています。

 

ストレスを軽減する

音楽にはリラックス効果があり、幻覚など認知症の症状からくる不安や痛みを改善します。

 

音楽を聴くだけでなく、手拍子や楽器の演奏、歌で気持ちを表現することでさらなるストレス軽減が期待できます。

 

コミュニケーションの促進

認知症の症状により、うまくコミュニケーションを取ることができず心を閉ざしてしまうケースもありますが、音楽であれば言葉を使わずにコミュニケーションを取ることができます。

 

一緒に音楽を聴く、楽器を教えあう、など誰かと一緒に音楽療法を行うことで効果が高まるとされています。

 

認知症の改善効果が高いと言われている音楽療法の効果の持続性は?

音楽療法には認知症症状の改善効果がありますが、持続的な効果を求める場合は、音楽療法を日常的に行う必要があると推奨されています。

 

音楽を聴いてもその効果が、一生涯、何年も続くことは期待できません。定期的に似たような音楽を聴くだけでも、認知症の人々にとっては効果が継続すると言われています。

 

認知症の改善効果が高いと言われている音楽療法を行う際の注意点

音楽療法を行う際には、使用する音楽、音の大きさや長さに気をつけるようにしましょう。

 

使用する音楽

一部の人にはある曲にトラウマを抱えていたり、嫌いなジャンルの音楽があったりします。ネガティブな感情を抱いている音楽を聴くと、認知症の改善に逆効果になりえるため、選曲には注意が必要です。

 

本人に馴染みのある音楽を使用することで、たくさんの思い出を呼び起こす効果が期待できます。懐かしいと感じる歌も世代によって異なるので、その人に合った音楽を選択するようにしましょう。

 

また、特にジャズの特有のリズムやメロディにはリラックス効果があり、音楽療法に適していると言われています。

 

音の大きさ

認知症の有無に関わらず加齢による聴力の低下が考えられます。聴力の低下により、音が聞こえづらくなっていたり、正しい音が聞こえていなかったりすると効果が低くなってしまいます。

 

また、2022年の研究によると、大音量の音に長期的にさらされると認知症の発症をより進行させるというデータがあります。本人に合った音を意識し、音量の調節に気を付けましょう。

 

出典:A new dementia treatment with quieting focus, subtle sound vibration, and intentional shared silence: Introducing Resonant Silence Technique: Innovative practice

 

音楽療法の長さ

認知症の症状の一つに集中力の低下があげられます。長時間の音楽療法はストレスになってしまうことがあります。

 

2020年の研究では、認知症患者を対象にし、沈黙にもリラックス効果があると示されています。本人の様子を見て休憩を挟み、バランスをとることが大事です。

 

出典:Chronic Noise Exposure and Risk of Dementia: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis

 

どこで音楽療法を受けることができる?

音楽療法は、音楽療法士がいる病院や医療センター、老人ホームなどの施設で、入所者が集団で参加する形式で行われる場合が多いです。また、一部の施設では個別に提供しているところもあり、自宅で行うことも可能です。

 

集団の音楽療法であれば、参加者同時のコミュニケーションが期待できますし、個別であれば、好きな音楽を使って音楽療法を行うことができます。

 

音楽の力で生き生きした生活を続けましょう

音楽には認知症を改善する効果があるとされています。音楽療法であれば、音楽を通した自己表現や他者とのコミュニケーションを楽しみながら、認知症の進行を緩やかにすることが期待できます。

 

まとめ

  • 音楽療法は音楽が持つ力を利用した認知症の非薬物療法
  • 音楽療法には二つ種類がある
  • 受動的音楽療法は音楽を聴いたりする受け身的な療法
  • 能動的音楽療法は自分自身で音楽を演奏したりする行動的な療法
  • 音楽療法には、思い出の喚起、ストレス軽減、コミュニケーションの促進といった効果がある
  • 音楽療法の効果を持続させるためには、休憩と療法のバランスを考慮しながら継続的に行う
  • 行う際には、使用する音楽、音の大きさや長さに気をつける
  • 音楽療法は、集団か個別で行える

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